64 ずっと一緒にいよう
村中のみんなに祝福され、この日私達みんなの前では夫婦になった。
ユウのお父さんも来てくれていて、私はびっくりしてばかりの一日だ。
おばあちゃんは、めでたいめでたいと号泣しっぱなしだった。
加奈子ちゃんたちみんなから、大きな花束をもらって、私も涙が止まらなかった。
嬉しくて、こんなに泣けるなんて、なんて幸せなんだろう。
みんなが笑って、飲んで、すごく長いような、あっという間だったような。そんな一日だった。
子どもは寝る時間になるとめいめいに家に帰って行って、大人たちは夜まで飲んで、年を越した。
十二時になるとおめでとうおめでとうと言い合い、お酒を注ぎ合う。
ユウもお酒は強いんだけど、今夜は素面でいたいから、と注ぎ役に徹していた。
夕方から飲んでいるので、十二時を回った頃には、酔い潰れた人達がぐーぐーと
寝息を立てだして、 大広間の片隅に引かれた布団にどんどん運び込まれていく。
毎年こうやって何人かは泊まっていくらしい。
ユウのお父さんも寝入っている。
私達は先に失礼して家に帰ることになった。
おばあちゃんは、毎年三が日までここに泊めてもらうんだって。
ゆきちゃんのおばあちゃんとのんびりおしゃべりして過ごすんだそうだ。
新婚さんの邪魔はせんでのーと大笑いして、お見送りされた。
ゆきちゃんの家を出ると、雪がはらはらと振り出した。
大きな粒の牡丹雪だ。
借りた傘を一つ差して、ユウは私の肩を抱いて並んで歩く。
宴会の賑やかな騒ぎから一転して、静かな夜の道。
私の心臓はさっきからやけにドキドキと大きく鳴っている。
家に着くと、玄関のカギを掛けるなり、すぐにユウに抱き締められた。
唇が重なり、何度もユウと私の吐息と熱が交ざり合う。
心臓が破裂するんじゃないかってくらいドキドキドキドキ、打ち鳴らしている。
「マナ、顔が真っ赤だよ。緊張してるの?」
私を見てユウがぷっと吹き出した。
「こんなとこでごめんね。我慢できなくなっちゃった」
あははと笑って、ひょいと私を抱き上げる。
器用に靴を脱がせてポイポイと土間に投げて、座敷に上がる。
「ゆ、ユウ?」
「嬉しくて堪らないよ。僕のお嫁さんになったんだね、マナ」
いつもの寝室はもうお布団が引いてある。
その上にすとんと降ろされて、ユウも座る。向かい合って、じっと見つめ合った。
「マナ、愛してるよ」
「わ、私も、ユウ」
ユウはにこっと笑って、私を抱き寄せる。
ちゅっちゅと軽いキスをしながら、 耳元に口を寄せてくる。
「すごい、ドキドキしてるね。マナ」 甘い声に背中がぞくりと泡立つ。
「もう何度もこうしてるのに、ちっとも慣れないね。
そういうところも、可愛いな、 マナは」
私にふわりと毛布を被せてふたりで包まって抱き合う。
いつの間にか二人を隔てる物は何もなくて、触れ合う人肌が温かくて気持ち良い。
「ユウ、あったかい」
「マナもあったかいよ。すごい抱き心地イイ。このままもう離したくないなあ」
ユウが頬を擦り寄せて来る。猫のような仕草に笑ってしまう。
「ほんと、ずっとこうしていたいくらいね」
「マナもそう思う? じゃあそうしようか」
え?と思った瞬間、ユウはにっこりと満面の笑みになる。いつもと同じようで、同じじゃない。色っぽさが溢れ出てる。そんな笑み。
「今日も明日も明後日も、のんびりできるよ。マナ。お正月は働き者の田舎の人間も何にもしないんだ。家で正月休みを堪能する。
ずーっとこうしてくっついてよう」
「ずっと、ってユウ・・」
私の言葉はユウの唇に飲み込まれ、熱に翻弄されて行く。
抱き合うのは、何度目でも恥ずかしい。
それでも、ユウは身体だけじゃなくて、心も繋いでくれるから、
ひとつになることに喜びを感じる。
「愛してる、マナ。ずっと、一緒にいよう」
愛してるって言葉をたくさんくれて。
悩んでいると、大丈夫?って聞いてくれる。
たくさんの笑顔をくれて、安心をくれる。
優しいひと。
だから私もちゃんと「愛してる」って言葉を返したい。
恥ずかしいから小さい声になっちゃうけど。
きっと、あなたは目を細めて笑ってくれる。いつものように。
これで、完結です。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました(^▽^)