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54 指輪

その後、お洒落なイタリアンレストランでランチを食べた。

ピッツァてなんじゃ、ピザだろうが、と銀太くんが言ったら、

大声で田舎者丸だしな発言しないの! とゆきちゃんに激しく突っ込まれていた。

パスタもサラダもパンもどれもすごく美味しくて、家では作れない味だね、とユウに言ったら、こういうのはたまに食べるからいいんだよ、と笑った。


「毎日食べるならマナの手料理のが勝ちだよ」

ユウがそんなことを言ってくれるから嬉しいけど照れ臭い。

ゆきちゃんに「相変わらずお熱いバカップルねえ」とからかわれてしまった。


お昼ごはんの後は、東京タワーに上った。

私は東京生まれの東京育ちだけど上るのは初めてで、上からの景色が思ったよりすごくすごく高くて綺麗でびっくりした。

タワーの下ではお土産屋さんも並んでいて、村のみんなにはおまんじゅうがいいか、東京っぽいクッキーの方がいいか、クリームの入った小さな羽二重もいいかもしれない、とゆきちゃんも銀太くんもワイワイ楽しそうに選んでいた。



「疲れた?」

少し壁際によっ掛かっていたら、ユウがそばに来た。

「ううん、大丈夫。ゆきちゃん達も嬉しそうで、すごく楽しいよ」


通路でアクセサリーの出店が出ていて、ゆきちゃんが買って買ってと騒いでいる。

銀太くんが財布を見ながら首を振っていて、見ていて笑ってしまう。


「マナは僕におねだりしないの?」

ユウが私の肩を引き寄せる。 私は手を横に振った。

「・・欲しいものなんてないもの。こうしてみんなで来れただけで十分嬉しい」


「駄目駄目。そんな消極的なこと言ってたら。僕が買ってあげたいんだよ。

今日の記念に。ほら、選ぼう?」


ユウに背中を押されてゆきちゃん達に合流する。

「あ、まなみ! まなみも買ってもらうの? 

あたしはね、このリングにしよっかなって思ってるの。

銀太、エンゲージリングで三千円なら安いでしょ? ウン万円じゃないんだから!」


ゆきちゃんの指にはちょっと太めで模様が彫ってある素敵なデザインの指輪が嵌まっている。腕をガクガク揺すられて、銀太くんはうーんうーんと唸っている。


「はは、銀太はお土産買い過ぎなんだよ。村のみんなへのは僕も半分出すから、

買ってあげれば? あ、マナ、これはどう?」

ユウが私の左手を取って、薬指に細目の綺麗な指輪を通した。


「わ、思ったより指細いな。もう一つ、下のサイズかな。あ、こっちもいいなあ。

マナ、どれがいいか選んで?」

ずらりと並んだ指輪。キラキラ、キラキラ光って、どれも眩しい。

選んでと言われても困ってしまう。


「えっと、・・ど、どうしよう?」

しばらく眺めてても決められそうにない。

困り果ててユウを見ると、そうだなあ、と指輪を見渡して、ひょい、ひょいっと

三つ手に取った。


「僕のお勧めはこのあたりかなあ。マナは?」

三つ並んだユウの手のひらの指輪。

どれも綺麗だけど、右の指輪がとても素敵だ。


「ん? これにする? おじさん、これお願いします」

「はいよ。可愛い彼女だね、お兄さんやるねえ。色男」

「あはは。ありがとうございます」

お店のおじさんとのやりとりを聞いてたら恥ずかしくなってしまった。

ゆきちゃんはまだどれがいいか悩んでいるようだ。


ユウに手を引かれて、お土産屋さんの並びから少し離れた、大きな絵画の前に

やって来た。

大きな空に真っ白な 鳥が二羽、羽ばたいているとても素敵な絵だ。


「手を出して、マナ」


ドキドキしながら左手を差し出す。薬指にさっきの指輪がそっと嵌められ、そのままユウの両手が包んだ。


「今日はこれから色々あるから、お守りに。

ずっと、僕はそばにいて、マナを守るよ」


ちゅっと小さく指輪にキス。胸がぎゅうっと締め付けられる感覚。

嬉しくて、 涙が出そうになる。


「・・りがとう、ユウ」

ユウは優しく笑って、そっと抱き締めてくれた。

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