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41 恋愛のお勉強

お布団に座って、本を開く。本と言っても漫画だけど。


「最近熱心に読んでるね。どんな漫画?」

ユウくんが隣から首を伸ばす。

「うん。恋愛ものだよ。ゆきちゃんが貸してくれたの」


昨日はファンタジーな恋愛物の小説を読んだ。

今日は少女漫画。学園ラブものですごく素敵なんだそうだ。


「あー、ゆっこは漫画とかけっこう持ってるもんな」

「ゆきちゃんがね、これで恋愛を勉強しなさいって」


ユウくんは横に積んである一巻をペラペラめくりながら、あははっと楽しそうに笑った。


「もう、笑い事じゃないの。本当に真剣なんだから。

読み終わった後にはゆきちゃんからテストもあるし」

「テスト?」

「うん。ここの主人公の気持ちを答えなさいとか、なぜ彼はフラれてしまったんでしょうとか。難しくてちっとも当たらないの。

もう、ユウくん。笑わないでってば!

いつもゆきちゃんに駄目駄目だってお説教されちゃうの」


ユウくんはお腹を抱えて笑ってる。

「はは。ゆっこはそうゆうの大好きだからね。相手するの大変そうだなあ。

よーし、じゃあ僕が特訓してあげようか」


一巻をもう一度手に取りパラパラっとめくって、ふむふむと頷いた後、ユウくんは私にページを広げて、主人公の女の子を指さす。


「問題。どうして夏美は泣いているんでしょうか」

「え、えっと・・、翔太くんが好きだから」

「正解。では、どうして告白しないんでしょうか」

「え? こ、こくはく?」

「好きです、付き合ってくださいって。夏美は言うのを躊躇っているよね。

どうしてでしょう?」


わからない。どうしてだろう。

沈黙が続く私の頭をそっと撫でて、ユウくんは笑う。


「すごい真剣だね。じゃあ、・・ヒント。言いたいけど、言えない、みたいな。

怖いんだね、フラれたらって考えると」


そう言われてもますますよく分からない。

付き合えなくなるのが悲しいって事だよね。


「えっと、フラれるのがいやだから」

「うん。フラれたら、今までどおりの友達にも戻れなくなってしまうんじゃないかって。

もし上手く行ったとしても、付き合うようになったら今と違ってぎこちなくなってしまうかもって、心配してるんだね、夏美は」

「すごい。ユウくん、先生みたい」


それも今パラパラっと読んだだけでどうしてこんなに理解できるのか。


「まあ、どの少女漫画もこんなような感じだよね。恋愛と友情との兼ね合いをどうするか、みたいなさ」

「私には難しすぎる。だってよくわかんない。

まず、好きだから付き合いたい っていうのがもう分からない。

どうしてみんな、付き合いたいって思うのかな」


ユウくんは、そうだなあ、と呟きながら漫画を脇に置いて、私との距離を縮めて座った。


「好きだから、相手のことをもっと知りたいし、そばにいたい。

もっともっと 愛したいし、愛されたい。そう思うのは自然のことなんじゃないのかな。自分だけを見てほしいって他の人に嫉妬したり、独占欲を持ったりすることもね」

「そばにいて、どうするの?」

「好きな人が困っていたら助けたいし、護ってあげたいって思うよ。

困ってる時とか苦しんでる時には一番近くで支えてあげたいって」

「ふうん。でも、一対一よりみんなでいた方が助け合ったりできるのに」


私の言葉に、ユウくんはあははと苦笑いする。


「・・まいったね。これはなかなか大変そうだな。まあ、そんな焦らずにゆっくり行こうか」

「?うん」


やっぱり恋愛ってよくわからない。

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