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36 銀太の怒り

「まなみちゃん、まなみちゃん!」


ユウくんに呼ばれてハッとする。起き上がると頭がズキっと痛んだ。

何人もの大人が私を囲んでいる。


「は、ハナちゃん? ハナちゃんは・・」

「落ち着け、大丈夫じゃ。お前さんの方がケガしとるくらいじゃ。

ハナは草のクッションの上に上手いこと落ちたようでな、大きなケガはない」


ずいっと目の前に山城先生が現れる。

ハナちゃん、大きなケガはないんだ、よかった。

ほっと胸をなでおろし、少し体を起こす。

すこし離れたところに銀太くんの姿が見える。ハナちゃんに、謝らないと。

立ち上がると足がフラつき、ユウくんが支えてくれた。


「ハナちゃん。ごめんね、ケガさせて・・」


おじさんに抱かれたハナちゃんは寝てしまったのか目を瞑っている。

私はユウくんの腕をそっと外して、その場に膝をついて頭を下げた。


「ハナちゃん、おじさん、おばさん、銀太くん、本当にごめんなさい。

大事なハナちゃんを預かっておきながら、こんなことになってしまって・・」


「だから、東京モンなんかあてにならんのじゃ!」


後ろから聞こえた、おじいさんの冷たい一言。周りもザワつく。

「・・そうね、まなみちゃんはこの辺の道は知らないものね。ごめんなさいね」

「まったくだ、お前が預けたりするから・・」


おじさん達の顔が見れなくて、私はさらに深く頭を下げた。

「ごめんなさい。本当に・・」

「何でまなみが謝るんじゃ!」

ハナちゃんの横で屈んでいた銀太くんが、すごい勢いで怒鳴って立ち上がった。


「まなみはハナを助けてくれた。こんな傷だらけになって山ん中を探し回って。

父ちゃんも母ちゃんも源さんもみんな、おかしいじゃろ!

東京もんとか何が関係あるか!

まずはまなみにお礼を言うのが先じゃろうが!」


銀太くんはギラギラ光る目で周りのみんなを睨みつけた。

その大声でハナちゃんは目を覚まし、うわーんと泣き出した。

私は慌ててハナちゃんの手を握る。

「ハナちゃん、どこか痛いの?」

「まなみぃ、まなみぃ、ごめんねー。ごめんねー。

はなぁが、おはなとろうとしたから・・。まなみー」

ひっくひっくと嗚咽を繰り返しながら、ハナちゃんは私にぎゅうっとしがみついた。


その横で銀太くんは私に頭を下げた。

「まなみ、本当にありがとうな」

「あ、そ、そんな」

「ごめんなさいね、ありがとう、まなみちゃん。

ハナ、駄目でしょ、危ないことしちゃ。 いつも言ってるのに、もう!」

「・・すまない。ありがとう」

おばさんもおじさんも深々と頭を下げるので、私は焦ってしまった。


「あ、や、やめてください。そんな・・」

「まにゃみー!」

「まなみ姉ちゃん!」

勇次郎くんと一平くんがすごい勢いで抱きついてきて、その勢いで私はぐらりとバランスを崩した。


「こら。お前ら、ケガ人に全力でぶつかるなよ」

がしっと力強くユウくんの腕に抱きとめられる。

一平くんは慌てて飛びのいて、勇次郎くんはそのまま擦り寄ってきた。


「まにゃみー、まにゃみー。いたいいたいなの?」

ぽろぽろ泣きながら心配そうに私を見つめる勇次郎くんの頭をそっと撫でた。


「だいじょうぶよ。勇次郎くん、みんなを呼んできてくれてどうもありがとう。

すごい、 頑張ったのね。一平くん、もう起きていいの?」

「まなみ姉ちゃん達がお手紙くれたから、治ったんじゃ」

「まなみ、大丈夫? 勇次郎、乗っちゃ駄目よ。ケガしてるのに」

「まなみ姉ちゃん」

「だいじょうぶ? まなみ姉ちゃん」

「崖から落ちよったって、まなみ、無事かの!」


ゆきちゃんも、学校のみんなも息を切らしてやって来た。

どんどん人が集まって来て、村中のみんなが来たんじゃないかと思えるくらいだ。

おばあちゃんもゼイゼイと肩で息をしながらやって来て、私の姿を見るや否や、ぎゅうっと抱き締めてきた。



「ちょいと皆の衆、静まれい。崖から落ちたが、幸い二人とも大きなケガはない。

擦り傷と切り傷くらいじゃ。

家に戻って風呂で泥を流して消毒して薬を塗っておけば治る。心配ご無用じゃ。

ささ、みんなも戻れ、戻れ!」


山城先生の大声で、みんなもぞろぞろと帰って行った。


帰り際、「お大事にね」「すごいわね」「えらいわ」「早く治してな」と

何人もの人が私に声を掛けてくれた。

正直驚いている。

最初はあんなに冷たい空気だったのに、銀太くんの一言で、みんなの私を見る目が変わったようだ。


「さ、僕らも帰ろうか」

ひょいっと抱き上げれて、私はユウくんの腕の中にすっぽり収まってしまった。


「ユウ、消毒と塗り薬じゃ。わしゃハナんとこに行くから、まなみはお前が

やってやれ。 あと足の傷はちょっと深いからの、包帯巻いておけ」

「うん、ありがと、山じい」


おばあちゃんは畑の手伝いが途中だし、傷の消毒は痛そうで見ていられないから、と戻って行った。



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