表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/78

10 おばあちゃんの住む田舎に

そしてお昼。

二人で駅前のファーストフードでハンバーガーを食べている。

昔・・保育園に行ってた頃に、食べたきりだって言ったら驚かれた。

久しぶりに食べたハンバーガーはあつあつで美味しかった。

でも大きな口で食べないとケチャップが飛び出てきて食べづらい。

新しい服に絶対こぼさないようにと慎重に食べていたら、ユウくんに笑われた。


「女の子って服で変わるね。なんか雰囲気も明るくなったよ」

「ごめんなさい、あの、たくさん・・」

「ごめんはもういいよ。それより、ありがとうがいいな」


ユウくんはポテトをつまんで口にいれてにっこりほほ笑む。


「どうもありがとう。

本当に・・・、全部夢だったとしてもしょうがないって思うくらい、夢みたいで、嬉しい。ほんとに、ほんとに、ありがとう、ユウくん」


ユウくんはちょっと照れ臭そうに頬を赤くして、

自分の髪をわしわしとかきまぜた。


「どういたしまして。そんな風に改めて言われると照れるけど。

うん。夢なんかじゃないからね」


がぶりがぶりと大きな口であっと言う間にユウくんのハンバーガーはなくなり、トレーはゴミだけになっていく。

味わって食べてた私はいつもより遅くてまだ半分くらいある。


「ごちそうさま。ね、この後はどこに行こうか。行きたいところ、ある?

あ、ゆっくり食べていいよ。別に急いでないからね」

「あ、う、うん。ごめんなさい」


もぐもぐ口を動かしながら、考える。

行きたいところ。

・・・行きたいところ、なんて特にない。

どこも思いつかない、というか、わからない。



どうしても現実的なことを考えてしまう。

・・・お母さんは、私がいないことに気づいて、どうしただろうか。

怒っているのはまず間違いないだろう。

探しているだろうか。

あの家に、 連れ戻すために。

見つかったら、私はどうなるんだろう。

ぶるっと体が震えた。背中の傷がいっそうズキリと痛んだ気がした。


「まなみちゃん、だいじょうぶ? 顔色が悪いよ」

ユウくんは立ち上がって私の隣の席に座った。


「・・・行きたいところは、お母さんが絶対に来ないところ。

絶対に気づかれずに済むところ。

お母さんに、見つかるのが怖い。

こんな風にずっと、逃げ回れないし・・、

でも、どうやって生活していけばいいのか、わからないし」


「うん。そうだね。これからの生活を、考えなきゃ、だね」

彼はうーん、と少し考え込んだようで、しばらく沈黙が流れた。


「・・・ね、まなみちゃん、僕のおばあちゃんの住む田舎に一緒に行こう」

「田舎?」

突然の彼の言葉に私は首を傾げて聞き返した。


「僕のおばあちゃん、山奥の小さな村で畑をやりながら一人で暮らしてるんだ。

そこに行こう。

すごく優しくていいおばあちゃんなんだ。絶対、味方になってくれるから」


ユウくんは私の両手をがっちり握って、自信ありげな顔でにっと笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ