殺戮壊僧
遅くなってすみませんでした。
あの生徒にとっては驚愕でしかない授業から2日後、生徒と雷光の姿は校門の前にあった。
「さ~て、全員そろったな? じゃ、校外学習の場所行くぞ~。」
そう言ってさっさと歩きだす雷光、生徒は行先も目的も分からないままについて行くしかなかった。
~30分後~
「あの、先生? いったいどこまで行くんですか・・・?」
いつまで経っても歩き続ける雷光に痺れを切らしたのは、先日の授業でも反論をしていた白州 次子だ。続いて、同じく反論していた月詠 命も声を荒らげる。
「そうです先生! 行先も告げず1人でサッサと歩かれて、その上30分経ってもまだ目的地に着かないなんて、一体どういう事ですか!?」
その言葉にやっと振り返る雷光。
しかし、次いだ彼の言葉は、文句を言った彼らどころか、ついて来ている生徒全員を呆れさせるものだった。
「・・・・アレ? 授業した時にお前らに行先言ってなかったっけ? そりゃ悪かったな。」
「先生、いい加減にしてください!!」
ついに、真面目生徒月詠君の堪忍袋の緒が切れた。雷光の前に立ち、顔を睨みながら凄い勢いで捲し立てる。
「つい2日前の事も覚えていられないなんて、貴方本当に25歳の若者ですか!? それに、こんな早くに校外学習が行えるなんて、一体校長先生にどうやって話を通したんですk・・・・・!!」
月詠は口を噤んだ。何も急に舌を噛んでしまったとかそう言う男の娘的理由じゃない。何故かと言うと・・・・。
雷光が腰の太刀に手を添え、殺気を放ちながら先方を見つめていたからである。
いつもの飄々とした雰囲気からは分からない。それどころか、以前学校に侵入してきた軍隊崩れの不審者と戦った時とも比べ物にならない程の殺気を放つ雷光。その姿は戦争を知らない生徒たちにとって怖すぎた。
「あ、あの・・・・先生・・・。ごめんなs「動くな!!」・・・・!!?」
顔を蒼褪めさせながら恐る恐るといった感じで謝罪を入れようとした月詠、だが彼の試みは鋭く入った雷光の声によって中断、彼は今度こそ真っ青になって腰を抜かしてしまった。
その様子を横目で見た雷光は、直ぐに前方に視線を戻し、言葉を返す。
「いや、すまん。お前は何も悪くねぇよ。だが、今は動くな・・・・・。動いたら死ぬ!」
そう言って生徒たちの前で殺気を放ちながら見つめるその先には・・・・。
背中に大鎌を背負った、1人の仏僧がいた。
「・・・・・お出迎えかよ・・・・。」
そう呟いた雷光の言葉に返事をするかのように、僧は背中の大鎌を抜き、次の瞬間には
ギィイィイイィィィ・・・・・・・ン!!!
という凄まじい金属摩擦音を響かせ雷光の太刀と鍔迫り合いをしていた。
それを見て驚愕する生徒たち。
あの先生が、拳銃を持った暴漢にも目にも止まらない速さで勝負をつけてしまうあの源 雷光が、鍔迫り合った!?
「せ、先生・・・・、その人は・・・・・・。」
慄きながらも、皆の模範でありたいと平常心を極力保ち、雷光に問いかける御前。
だが、その言葉が届かないかのように、雷光と謎の仏僧との戦闘が始まった。
地面を蹴る鈍い音と共に両者の姿が消え、須臾の後に響き渡る刃のぶつかる音、それと共に抉れる地面、両断される街路樹、スクラップになる車。
偶然か、それともそのくらいの配慮はしているのか、今のところ死人どころか怪我人すらいない。
だが、その場所に居た人は悲鳴を挙げて逃げ、今いるのは雷光と仏僧と生徒たちだけだ。
動くなと言っただけで逃げろとは言っていない。
その事と、彼が以前見せた実力が、彼らに不思議な安心感を齎していたのだ。
そして、戦闘は終わった。
仏僧の大鎌が雷光の首へ、雷光の太刀が仏僧の首へ当てられ、双方の動きが止まった。
流れる沈黙、最初に破ったのは謎の仏僧。
「やはり、以前と変わらない強さですね、雷光?」
そう言って微笑む仏僧に、同じく笑みを浮かべながら雷光は言葉を返した。
「ハッ、こんだけ戦った後でよくそんな笑顔と言葉が出るもんだな。『殺戮壊僧』、天山僧正よぉ!!」
因みに、校長の許可は喉元に太刀を突き付けて手に入れたそうです。