世界と終わりのその先は
実は遙か遠く昔に予言されていたのかも知れない。
20××年。化石燃料や原子力に変わるエネルギーも発見され、地球温暖化という一番の環境問題も解決に向かい始めていた。
だからだろうか。人類皆等しく油断していたのは。
その存在が世界各国の国民たちに知らされたときには既に手を打つ時間は一切なかった。
「突然ですが、此処で臨時ニュースをお伝えします。先程新垣首相が緊急会見を開き、地球に隕石が迫って来ていると発表されました。規模と進路的に直撃は免れなく、時間の問題で回避や爆破も無理だとのことです。地球に直撃する時間は推定で遅くても明後日の午前0時過ぎとのことで――」
隕石衝突。それも突然のニュースに全国民、否、全世界の人類は驚かざるを得なかった。
何とかして生き残る道はないかと画策する者、既に諦めている者、行き場のない気持ちをぶつける為に犯罪に走る者、その行動は様々だった。
「あーあー、ばっかみてえなの。良い大人たちがんな慌てふためいて」
「……まあ仕方ないと思うよ、やっと安泰な未来を掴んだと思った矢先の出来事だったし」
「つーか、それは俺らだって一緒だろーがよ」
市街を少し外れた廃れた町のその辺り一帯では一番高い廃ビルの屋上に、人影が二つ。一人は座ってパソコンを弄っており、もう一人はフェンスによじ登り双眼鏡で近隣の町の様子を眺めているようだった。
二人とも同じマークの入った半袖のワイシャツに同じ柄のズボンを履いており、鞄を所持していることから学生なのは確実であるが、今現在の時刻は午前十一時。普通ならば学校で授業を受けている筈である。
では何故二人は此処にいるのだろうか。それはとても簡単な事、二人して学校をエスケープしていたからである。
「アキ、でたよ。やっぱり新垣首相とかその辺りのお偉いさんは既にシャトルで脱出してる」
「んだよ、やっぱりじゃねえか畜生め。俺たち一般民を避難させるだけのシャトルがねーってんで、逃げ出せない時期に教えやがったな」
アキ、と呼ばれた少年はもう一人の少年が調べ上げたであろうパソコン画面に映る真実を見て、眉間に思い切り皺を寄せ、酷く不愉快そうに言葉を吐き捨てた。
冷静そうに見えてもまだ十七、八の少年だ。後二日程度で自分の未来が、生きてきた星がなくなるという真実は受け入れがたい事なのだ。
そして、彼らにとってはあまりにも非現実過ぎる。
突きつけられる現実に戸惑いつつも受け入れるとしかない、と既に諦めている気なのだろうが、大人でも無理なのだ、まだ子供である二人にそう簡単に割り切れる訳もなく、複雑そうな表情を浮かべていた。
「理不尽だよね、本当。僕らみたいな力を持たない一般民は、こうして死が訪れるのを待つしかない。でも、あいつらが生きてこれたのは僕ら一般民のお陰なのに、こういうときは真っ先に切り捨てるんだ」
「お、おお、どうしたよリン、お前らしくもねえ」
「何でもないよ、何でも。……ただ、僕は次にまた人に生まれることがあるなら、絶対、誰にも負けない、誰にも屈しない力を手にしようと思っただけだよ」
「はは、いいじゃねえのそれ! お前なら出来るよ絶対。俺、人に生まれようが生まれなかろうが、お前のその夢をずっと応援してるぜ」
「有難う。なんだかアキに言われると出来る気がするよ、すっごくね」
互いに心を許した仲だからだろう会話に、険しかった二人の顔も段々と緩み、次第には世界の雰囲気に似つかわしくないくらい二人は笑顔になっていた。
アキ、と呼ばれてている少年は言葉を交わしながら、きっともっと時間があればリンであれば今のままでも世界を救えただろう、という何の根拠もない、しかし絶対であると自信を持っていえるだろう事を心の中で思ったのである。
地球に隕石が衝突するまで、正確に表すと後一日と十一時間と四十二分と二十八秒。
普段ならば長く感じる一秒、一分、一時間、一日。彼らは短いその時間を如何使ったのかは彼らにしか分かり得ない。
隕石が地球に衝突してから二時間と十二分と五十八秒後。
跡形もなく消し去られるかと思われていた地球は、日本列島の一部と何十という国の一部と幾つかの原形を留めたままの国を残し、現存していた。
それはほぼ奇跡に近いことだった。しかし惑星としての機能を果たすかどうか、彼らが生き残ったかどうか、それは定かではない。




