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勇者アレンはクズだった~悪役勇者の戦い

作者: 山田 勝
掲載日:2026/03/10

「ライト、追放だ。これから先はお前では力不足だ」


「アレン、そ、そんな」



 俺は幼なじみを追放した。俺は勇者だ。幼なじみのよしみでライトを入れてやったのだ。


 何故、追放したかって、それは俺がクズだからだ。

 性格は変えられない。


「おい、ライト、装備は置いてけよ。お前ごときが絶対に冒険者を続けられなくしてやる」


「・・・そこまでするか?」




 それからも、ライトの邪魔をし続けた。


「ライトを使うなよ。あいつは役に立たない」


と冒険者仲間に吹聴し。嫌がらせも続けた。


「おい、お前の作った保存食は不味かった。返すぜ!持っていけ」




 しかし、可愛い彼女が出来て、ボチボチ活躍し始めた。



「フン、まだ、冒険者をやっているか?里へ帰れよ!」

「アレンに言われる筋合いはない!」


 オラオラとライトを蹴り飛ばした。

 彼女さんは俺を睨み付ける。


「ラ、ライトさんは優しい方です。ポーターで一番になります。ご存じですか?地図作成のギフトがあります。すごいのですよ」

「フン、間抜けライトの作った地図なんて使わないぜ。ア~ハハハハハハ!」



【ア~ハハハハハハ!】



「アレン、ダメだ。やはり食料が足りない」

「やはり、ライトの作った保存食がないと・・・」

「ライトの作った保存食は治癒効果があるわ」

「ライトの地図がないと・・魔王城にたどり着けないよ」


「うるせー、魔王城は見えている。まっすぐ進めばいいじゃないか?」


「ライトを呼び戻そうよ」



【馬鹿野郎!ライトに頼るんじゃねえ!他のポーターを雇え。栄光ある『漆黒の翼』だ。入りたい奴は腐るほどいるだろう】


「しかし、常人だよ。死んでばかりだ」

「うるせー」


 魔王軍はポーターを狙う。

 一番弱い奴から狙う本能か。

 補給を削るのか。


 もう、ライト以降3人死んだ。


 野原を彷徨い。泥水をすすり。何日風呂に入っていないか分からない。


「ヒィ・・・・」


 聖女の足跡に血がしたたる。月のものか・・・

 誰も何も言わない。だから俺が言う。クズだからだ。


「うわ。聖女!月の物か?お前の血で敵に見つかる。追放だ!」


「おい、剣聖、折れた剣を持った剣聖は役立たずだ。帰れ!」


「盾の壊れたタンクなんて用済みだ。帰れ!報酬は俺の物だ」


「はあ?魔道師が魔力切れ?俺1人だ十分だ。ポーションを寄越せ!」



 仲間達を全て追放して俺1人だ。魔王軍と戦う。



【ア~ハハハハハハハ、死ね!ザコども!死んでしまえ!】


「「「「ギィ」」」


 ・・・戦いは過酷だ。多くの者が精神を病む。

 罪悪感にさいなまれる。

 または自己の殺戮を正当化するために狂信者になる。


 だが、アレンは精神を病まなかった。

 狂信者にもならなかった。


 ただ、クズだった。




 ☆☆☆



「ギルマス!魔王軍が来ます!持ちこたえられません」


「やはり、やはり・・・時間稼ぎにしかならなかったか」


 量産型勇者では無理だったか。アレンは村の青年、惜しくはないが・・・非常な命令を下さなければならない。


「後方に新たな防衛線が築かれている。転移勇者様がいらっしゃる。街を放棄!」


 アレンを見捨てるのだ。


「ギルマス・・・涙が出ていますよ・・・」

 ワシは何故泣いているのだ・・・




 ☆☆☆


 聖剣は折れ、白い甲冑は薄汚れ原型が分からないアレンは倒れていた。

 魔王軍に取り囲まれていた。



「魔王様!こいつが勇者アレンです」

「そうか・・・」


 大軍が別れ。そこからわん曲した角二本の魔王が現れた。褐色の肌の女魔王だ。



「これ、アレンを治療してやれ」

「治療・・・何故、大勢殺した」

「死ね」


 ビュン!と疑問を呈した魔族の首が飛んだ。



「アレンは、魔族を同胞として扱った・・・」


 通常の勇者は、我らを物として扱う。

 人ではないから平常心で殺す。

 涼しい顔で殺す。

 まるで今まで食べたパンの数のように頓着しない。


 しかし、アレンはどうだ。まるで同族に相対するようにクズを披露した。



「村を襲わなかった。まっすぐ魔王城に進もうとした。あちらに、地図作成のギフトを授かったポーターがおったな。

 そやつの作った地図を使えば、魔族の村を襲いながら食料や魔石を補給を出来たのに・・・名はライトじゃったかのう・・・そやつを打ち損じたのは痛かった」


「魔王様・・・」


「故に助ける。四天王も戦死した。次期四天王候補にするのじゃ!」


「「「「御意!」」」」


「分かったら、進軍じゃ!我らの地を汚す人族を殲滅じゃ!」



 もう、数千年続いた人魔大戦、第何次かの呼称も意味をなさなくなっていた。


 時々、魔王軍に人族出身の幹部が現れるが、理由は定かではない。

 女神教では背信者扱い。勇者ならクズとだけ呼ばれ名は公式記録から消されると云う。



最後までお読み頂き有難うございました。

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