勇者アレンはクズだった~悪役勇者の戦い
「ライト、追放だ。これから先はお前では力不足だ」
「アレン、そ、そんな」
俺は幼なじみを追放した。俺は勇者だ。幼なじみのよしみでライトを入れてやったのだ。
何故、追放したかって、それは俺がクズだからだ。
性格は変えられない。
「おい、ライト、装備は置いてけよ。お前ごときが絶対に冒険者を続けられなくしてやる」
「・・・そこまでするか?」
それからも、ライトの邪魔をし続けた。
「ライトを使うなよ。あいつは役に立たない」
と冒険者仲間に吹聴し。嫌がらせも続けた。
「おい、お前の作った保存食は不味かった。返すぜ!持っていけ」
しかし、可愛い彼女が出来て、ボチボチ活躍し始めた。
「フン、まだ、冒険者をやっているか?里へ帰れよ!」
「アレンに言われる筋合いはない!」
オラオラとライトを蹴り飛ばした。
彼女さんは俺を睨み付ける。
「ラ、ライトさんは優しい方です。ポーターで一番になります。ご存じですか?地図作成のギフトがあります。すごいのですよ」
「フン、間抜けライトの作った地図なんて使わないぜ。ア~ハハハハハハ!」
【ア~ハハハハハハ!】
「アレン、ダメだ。やはり食料が足りない」
「やはり、ライトの作った保存食がないと・・・」
「ライトの作った保存食は治癒効果があるわ」
「ライトの地図がないと・・魔王城にたどり着けないよ」
「うるせー、魔王城は見えている。まっすぐ進めばいいじゃないか?」
「ライトを呼び戻そうよ」
【馬鹿野郎!ライトに頼るんじゃねえ!他のポーターを雇え。栄光ある『漆黒の翼』だ。入りたい奴は腐るほどいるだろう】
「しかし、常人だよ。死んでばかりだ」
「うるせー」
魔王軍はポーターを狙う。
一番弱い奴から狙う本能か。
補給を削るのか。
もう、ライト以降3人死んだ。
野原を彷徨い。泥水をすすり。何日風呂に入っていないか分からない。
「ヒィ・・・・」
聖女の足跡に血がしたたる。月のものか・・・
誰も何も言わない。だから俺が言う。クズだからだ。
「うわ。聖女!月の物か?お前の血で敵に見つかる。追放だ!」
「おい、剣聖、折れた剣を持った剣聖は役立たずだ。帰れ!」
「盾の壊れたタンクなんて用済みだ。帰れ!報酬は俺の物だ」
「はあ?魔道師が魔力切れ?俺1人だ十分だ。ポーションを寄越せ!」
仲間達を全て追放して俺1人だ。魔王軍と戦う。
【ア~ハハハハハハハ、死ね!ザコども!死んでしまえ!】
「「「「ギィ」」」
・・・戦いは過酷だ。多くの者が精神を病む。
罪悪感にさいなまれる。
または自己の殺戮を正当化するために狂信者になる。
だが、アレンは精神を病まなかった。
狂信者にもならなかった。
ただ、クズだった。
☆☆☆
「ギルマス!魔王軍が来ます!持ちこたえられません」
「やはり、やはり・・・時間稼ぎにしかならなかったか」
量産型勇者では無理だったか。アレンは村の青年、惜しくはないが・・・非常な命令を下さなければならない。
「後方に新たな防衛線が築かれている。転移勇者様がいらっしゃる。街を放棄!」
アレンを見捨てるのだ。
「ギルマス・・・涙が出ていますよ・・・」
ワシは何故泣いているのだ・・・
☆☆☆
聖剣は折れ、白い甲冑は薄汚れ原型が分からないアレンは倒れていた。
魔王軍に取り囲まれていた。
「魔王様!こいつが勇者アレンです」
「そうか・・・」
大軍が別れ。そこからわん曲した角二本の魔王が現れた。褐色の肌の女魔王だ。
「これ、アレンを治療してやれ」
「治療・・・何故、大勢殺した」
「死ね」
ビュン!と疑問を呈した魔族の首が飛んだ。
「アレンは、魔族を同胞として扱った・・・」
通常の勇者は、我らを物として扱う。
人ではないから平常心で殺す。
涼しい顔で殺す。
まるで今まで食べたパンの数のように頓着しない。
しかし、アレンはどうだ。まるで同族に相対するようにクズを披露した。
「村を襲わなかった。まっすぐ魔王城に進もうとした。あちらに、地図作成のギフトを授かったポーターがおったな。
そやつの作った地図を使えば、魔族の村を襲いながら食料や魔石を補給を出来たのに・・・名はライトじゃったかのう・・・そやつを打ち損じたのは痛かった」
「魔王様・・・」
「故に助ける。四天王も戦死した。次期四天王候補にするのじゃ!」
「「「「御意!」」」」
「分かったら、進軍じゃ!我らの地を汚す人族を殲滅じゃ!」
もう、数千年続いた人魔大戦、第何次かの呼称も意味をなさなくなっていた。
時々、魔王軍に人族出身の幹部が現れるが、理由は定かではない。
女神教では背信者扱い。勇者ならクズとだけ呼ばれ名は公式記録から消されると云う。
最後までお読み頂き有難うございました。




