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トイレの隣に誰か来ると出なくなるアレについて

作者: 3太郎
掲載日:2026/02/22

同時に仕切り一枚隔てた隣に並ぶ、この気まずい瞬間をなんと呼ぶ──

空間が「ピキンッ」と一瞬に凍りつき、お互いの意識が沈黙して交錯する。

私はこれを「過剰意識からの排尿頓挫」と呼ぶ。


 相手もそういう仕草であるようだ、同じタイプで安心したら共感が満ちた。

 私はベルトの金具を手早く外し戻ってこないように、

ベルトの先端部分をベルトループに折り返すようにして差し込む、

こうすると用を足す(小便)時に便利なのだ、最近の男なら皆そうするものだと思っていたのだが…… 

隣の共感者は社会の窓から直接タイプのようで動作が少ない(直接タイプは私から見れば上級者)

おもむろになれた手付きで、ガクっと腰を引く……そう男なら一度は経験のある動作"それを"意味するのだ。


 互いに用意は済んだはずなのに、無音のまま沈黙だけが乾いたように過ぎていく、相手の眼球だけは忙しくこちらを伺っているだろう、無論、私も伺い構えている。


 手に取るように読める感情が言い知れぬ現実受容を突きつける。

さあ、どちらから動くのかは分からぬ状況から、脳の緊張が解けたのか、場の空気に馴染んだのか分からないまま、ほぼ同時に緊張と緩和解かれ"それは"発射される。


この安堵はいつもながら至極の瞬間なのだ、あとは只、満水に満たされた入れ物が空になれば終了である。互いに凝縮された息が鼻口部から押し出された。


 脊髄反射が起こり霧散が鼻についた、横目で一瞥を向けながら、仕舞いの反対動作を手早く行う。無論、動作の手数が多い私が遅れを取ってしまう。


私はポケットから綺麗に折りたたんだハンカチを咥え、手を洗う──


「ええ…」


隣の男は手を洗わず出て行った。ハンカチを忘れても、洗うことは出来るはずなのに……


それとも私が几帳面すぎるのか……


私はそのモヤモヤがまだ収まらないなか、喧騒でごった返す席に戻りハンドルを握るり、銀色に輝く玉を打ち込んだ。


おわり


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