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蟻が如く  作者: 海星
8/8

広場

 「じゃ、アリエルは『魔法使い見習い』ね」と受付嬢が身分証に書き込む。

 『アリエル

  性別 女

  年齢 15歳

  ジョブ 魔法使い見習い』

 何もかもが違う。

 アリエルって誰やねん。

 ここは文句言わせてもらおう。

 「僕、15歳じゃないんだけど」と。

 「わかってる」

 『みなまで言うな』と受付嬢。

 「ジョブにつけるのは15歳からなのよ。

 成人してからね。

 だから『魔法使い』になれるようにちょっと細工しといたわ。

 きっと12歳ぐらいだと思うけど、15歳で登録しといたわよ。

 年齢サバ読んでるのがバレても『見習い』って事で、年齢を訂正すればそれで良いわ」と受付嬢。

 『戦士見習い』も『狩人見習い』も15歳に達している必要はない。

 だが、いくら優れていても『戦士』『狩人』『魔法使い』には15歳にならないとなれない。

 だから『冒険者ギルド』では年齢のサバを読む事が珍しくなかった。

 特に『盗賊』には「お前、明らかにガキだろ?」という人物が多かった。

 受付嬢も慣れたもので、僕の登録年齢を細工して15歳にした。

 受付嬢としてはサービスのつもりだ。

 だが、僕は訳がわからない。

 だって僕、本当の年齢は18歳なんだもん。

 昔の日本の女性は十代で結婚、出産するのが一般的で寿命も40代後半だったらしい。

 だから、現代と比べて大人になるのが早かった。

 十代で大人として扱われて、四十代後半で老人として扱われるのだから当然と言えば当然か。

 異世界でもその傾向があったとしたら、現代からの転移者の十七歳が子供に見えても仕方ないのかも知れない。

 まして僕は有り得ないぐらい小柄だ。


 異世界の戸籍制度は自治体毎に制定されている。

 だが村が制定している戸籍は大雑把だ。

 戸籍のデータは個人の身分証を元としているが、その身分証のデータはどうとでも書き換える事が可能だった。

 だから多くの十五歳に達していない子供が、身分証のデータを書き換えて働きに出る、などというのは珍しい事ではなかった。


 だから受付嬢が気をきかせて僕の年齢を十五歳にしたのだ。

 「本当はもっと下の年齢だろう」と思って。

 十七歳なのに。

 当の受付嬢も一歳年齢をサバ読んでいる。

 十四歳の時に十五歳で登録したから、現在の身分証の年齢『十七歳』はウソで、本当は十六歳なのだ。

 つまり受付嬢は僕より一歳下、という事だ。


 と、言う訳で何もかも間違ってる、身分証が出来た。

 でもしょうがない。

 「身分証がないと村には滞在出来ない」と言うのだから。

 この後、どうするかは全く決めていない。

 この村に長期滞在するかも知れない。

 だって『何かをしようとして異世界に転移した』訳じゃないのだから。


 身分証が出来た。

 出来るのをウズウズしながら待ってた女の子らがいる。

 『冒険者ギルド』のギルド職員だ。

 この娘らは僕らが行く公衆浴場について来るつもりなんだろう。

 『冒険者ギルド』の職員っていっても『若い女の子』ばっかりな訳がない。

 ならず者が入って来た時に閉じ込められていた、潜んでいたのが『若い女の子』ばかりなんだろう。

 僕が驚いたのは職員の多さだ。


 しかし銭湯とか公衆浴場に行く時に、タオルと石鹸とシャンプー、着替えと洗面器ぐらいは持参すると思っていたが。

 持って行くモノは着替えと『タオルとは呼べないお粗末な布切れ』だ。

 石鹸はあるようだが、高価だし肌には刺激が強いらしい。

 シャンプーなんてモノは影も形もない。

 不衛生かと思いきや、生活魔法に肌の汚れを消す魔法があるらしい。

 ただその魔法は魔法使いの腕に左右される。

 公衆浴場にいる、生活魔法を取り敢えず使えるだけのおばあちゃんが使う魔法の効果は低い。

 つまりあんまり身体の汚れは落ちない。

 女の子達がゾロゾロとついて来たのには公衆浴場に行くメンバーに一級冒険者の『魔術師』がいるからだ。

 公衆浴場にいるおばあちゃんにすら、魔法で身体を綺麗にしてもらったら、銅貨3枚支払わなくてはいけない。

 腕ききの『魔術師』に身体を綺麗にしてもらって、しかもタダかも知れない!

 年頃の女の子らにとってついてこない手はない。

 事情を知らない僕はただ「公衆浴場、大人気だな!」と感心していた。

 手桶は公衆浴場備え付けの物を使えば良いし、着替えも布切れも『冒険者ギルド』で貸してくれるらしい。

 だったら手ぶらで公衆浴場へ行こう。


 斬馬刀は・・・冒険者ギルドに置いてこうか。

 上手く扱えるようになる前は人ごみでは使わないようにしよう。

 スプラッターな光景を作りあげないために。


 村の中央広場を取り囲むように各ギルドがある。

 広場を東に出ると『商業区』がある。

 広場と『商業区』との間に『商人ギルド』がある。

 『商業区』の中には市場などがある。

 『商業区』の北側の端には『武器屋』『防具屋』『道具屋』などが並んでいる。

 そこをさらに北側に行くと『工業区』に行く。

 工業区には『鍛冶工房』『製薬所』など物作りの『工房』『工場』『研究所』などが並ぶ。

 『工業区』と『中央広場』の境目には『クラフトギルド』『大工ギルド』『錬金術ギルド』などが並ぶ。

 『商業区』の南端は『生鮮市場』になっており、そこと中央広場の境目には『農業ギルド』『漁業ギルド』などがある。

 そして一番南寄りの『商業区所属』のギルドが『林業ギルド』だ。

 そして『林業ギルド』と村の入り口の間にあるのが『冒険者ギルド』だ。

 隣同士のギルドは大体の場合、関連が非常に高い。

 では『冒険者ギルド』と『林業ギルド』はどんな関連があるのか?

 『狩人』のジョブについた者は『冒険者ギルド』と『林業ギルド』の掛け持ちの場合が多い。

 林業を行う者が森や林を開拓する場合、モンスターと遭遇する可能性が非常に高いのだ。


 このように村の入り口から東側のギルドを『花形のギルド』と呼ぶ事がある。

 だが村の入り口から西側のギルドを誰が呼んだか『闇のギルド』と呼ぶ事がある。


 今回は中央広場の真西にある『公衆浴場』へ行った時のエピソードだ。

 

 


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