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蟻が如く  作者: 海星
3/8

救世主

 チャボゲレロ村に入る。

 浮いている斬馬刀に乗る僕は奇異の目に晒されている。

 「何だ、アレ?」

 「わからん、鳥車の一種か?」

 「それにしては鳥が引っ張っていないようだが?」

 何か遠巻きに言われてるぞ?

 コレが何か?

 僕も知らん。

 今は乗り物で間違いないんだろうが、元々は『持ち上げられない重い武器』だった。

 斬馬刀(コレ)を持ち運ぶためにはどうしたら良いか?

 そこから発展して乗り物になっちゃった。

 そしてこの異世界にはどうも『馬車』という存在がないらしい。

 馬という動物が存在しないんだろうか?

 そして『鳥車』というよくわからない何かがあるらしい。

 デカい鳥が車を引っ張るのか?

 見た目はダチョウみたいなモンか?

 チョコボみたいなモンか?

 シカトして村の目抜き通りっぽい、噴水がある所にたどり着く。

 噴水を中央にして、似たような建物が立ち並んでいる。

 その建物には看板がある。

 看板には日本語で『冒険者ギルド』や『商人ギルド』などと書かれている。

 元々は異世界の言葉で書かれているんだろうがきっと『翻訳魔法』が僕のわかる言語に変えてくれているんだろう。

 ここはきっと日本でいう『官庁街』、日本だったら色々な役所がかたまって配置されている場所で、異世界だから色んなギルドがかたまって配置されている区画なんだろう。

 ひときわ大きな建物があるが、きっと村役場なんだろう。


 村の入口にいた見張りは『ギルドで身分証を再発行してくれる』とか言ってたけど・・・さあ困った。

 どのギルドに行けば良いんだろうか?

 見た感じ、ギルドは両手で足りない数ある。

 裏道に小さなギルドもあるだろうし、きっとお決まりの『闇ギルド』もあるだろう。

 どこのギルドを選べば良いかわからない。

 だったら『興味がある順』に入って聞いて見よう。


 どのギルドに一番興味あるって?

 言わせるなよ、恥ずかしい。

 『冒険者ギルド』に決まってるじゃんか。

 僕は『冒険者ギルド』という看板が出ている建物に入った。

 斬馬刀に乗ったまま、スイーっと。

 持ち上げられないんだから、乗ったまま移動するしかないじゃん。

 忘れていた。

 斬馬刀にブレーキはついていないんだ。

 広い場所なら徐々に減速していって止まるタイミングで降りれば良い。

 狭い室内に勢いをつけて入ってしまった場合は?

 モノにぶつかって止まるしかない。

 何にぶつかったか?

 何かよくわかんないけど、モヒカンのならず者っぽいヤツに激突して斬馬刀は止まった。

 モヒカンは泡を吹きながら、白目を剥いて倒れている。

 良かった、死んでないみたいだ。

 不幸な事故だったね、多分、誰が悪い訳でもない。

 「アニキー!」

 「アニキー!」

 「アニキー!」

 「アニキー!」

 何かモヒカンの手下っぽい連中が、モヒカンを取り囲んでいる。

 やべー。

 何か言わないと僕がこの場を切り抜けられそうにない。

 「僕の・・・勝ちだ!」

 僕はガッツポーズを決めた。

 「何だ、テメー!

 アニキの何なんだ!?」

 どうも僕のとった行動は間違いだったらしい。

 バカになんてとんでもない。

 だって僕は何かのびてるモヒカンなんてバカっぽい見てくれしかわからないもん。


 しかしコイツら、うるせーな。

 シカトしとく訳にもいかない。

 ・・・まぁ、悪いのは冒険者ギルドに入ってすぐに、モヒカンの間抜けそうなオヤジを跳ねとばした僕なんだけど。

 でも仕方なくない?

 斬馬刀は急には止まれそうにない。

 取り敢えず『モヒカンのアホっぽい戦士風のオヤジ』か『ちょっぴりエッチな格好の魔法使い風の綺麗なお姉さん』のどちらかを轢かないと止まれないっぽい。

 だったらモヒカン轢くでしょ?

 誰も僕を責められないでしょ?

 しかし何か言わないと。

 頭の中に選択肢が浮かんでくる。

 ①『この世はでっかい宝島、そうさ今こそアドベンチャー』

 ②『今から一緒に、これから一緒に、殴りに行こうか?』

 ③『真実はいつも一つ!』◀


 ロクな選択肢がねえ!

 どれを選んでも頭おかしいじゃねーか!

 もうこうなりゃヤケだ。

 「真実はいつも一つ!」

 意味がない行動をさも意味があるように、見せる。

 それで『ただのバカ』を『思慮深い天才』に見せる・・・カルト宗教なんかが、アホな教祖を『聖人』に見せるパターンでいくしかない!


 「何だコイツー!」

 『聖人』というか『ジョイマン』みたいに避けられた。

 でもトラブルの方から逃げて行ってくれたんで、結果オーライ。

 やはり正義は勝つ。


 受付のテーブル前に立つ。

 受付嬢が声をかけてくる。

 「貴女、狙って『豪腕のバルゴ』を倒したんでしょ?」

 『豪腕のバルゴ』?

 初耳だ。

 僕はコミュ障独特の『はい』とも『いいえ』ともとれる『愛想笑い』でこの場を乗り越えようとした。

 しかし『愛想笑い』は諸刃の剣。

 知らない間にとんでもない方向へ話が進んでいたりする。

 そうなった場合、その時に『違う』とも言えない。

 最初から説明しなおさなきゃいけないからだ。

 そんな事が出来るなら『コミュ障』なんてやってない。

 その時もならず者に支配され荒れ始めた『救世主』という事になった。


 「上級冒険者達は西の港街『ドスカラス』から皇帝の命令で北西の火山地帯に長期間クエストに出ているのよ。

 ギルドマスターも上級冒険者達に付き添ってクエストに参加してるからね」

 そんなギルドマスターが長期間、ギルドを留守にしても大丈夫なのか?という話だが、火山地帯での緊急クエストがギルドマスターも参加しないといけないくらい大変らしい。

 しかし受付嬢は火山地帯での緊急クエストについて『詳しい事は全く知らない。箝口令が敷かれていて、自分は知る立場にない』と。

 そのタイミングでならず者冒険者達が『冒険者ギルド』内で幅をきかせ出した、と。


 そこに現れたのが僕らしい。

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