08
「あーもうっ、くみちゃんって難しい!」
「課題やるの疲れました……」
今日は夜にお祭りがあるのに二人はずっとこんな感じだった。
そして姉はともかく彼女の方は休みすぎていたせいだから正直、なんとも言えない気分になる。
「どういうところが難しいの?」
「それがさ、なにかを買ってあげようとしても申し訳ないとか言って受け入れてくれないんだよ」
「それなら半分こにできるアイスを買ってみるとかどう? こんなに多くは食べられないからくみちゃん食べてって言えば聞いてくれると思うよ」
「よし、早速いまからやってみるね」
行動力の塊だ。
こちらを見つめてきた彼女には首を振ってこちらは休むことにした。
今日の夜はいっぱい食べる、いっぱい買う、誘っても受け入れてくれなかったから母のためにお土産を持ち帰るんだ。
ちなみに先程の姉もちゃんとくみちゃんと約束はできていて一緒にいけることになっているから結局のところは楽しくやれることが確定していた。
「あ、そうだ、ゆき先輩も誘わないと」
「まだ言っていなかったんですか?」
「うん、ちょっとみこちゃんと夏休みを楽しみすぎちゃってね」
が、送ってみても『嫌よ』とメッセージが返ってきたので突撃して連れてきた。
「はあ~そこは二人きりでいくところでしょうが、あのまこだってくみと二人きりでいくつもりなのよ?」
「付き合ってくださいよ、付き合ってくれたら焼きそばの一つぐらいは買いますから」
これは別に仲間外れにしたくないとかじゃなかった、私達が先輩といたいだけでしかない。
とはいえ、言葉でぶつけられても信じられないだろうからこれからの行動を見て判断してもらうしかない。
「あんたまさか私が好きなの?」
「好きですよ?」
先輩が求めている類の答えではないけど気にする必要はなかった。
だってこの人は困っているときに助けてきてくれた人だ、好きにならないわけがないんだ。
お友達のお友達がいてもあまり気まずくならない私なものの、その場合は自分から誘ったりしないからこうしている時点で違うんだとわかってもらいたい。
「はぁ……大体みこはいいの? 邪魔なんじゃないの」
「全く邪魔ということはありませんよ? というか、私の方がゆき先輩とはずっと一緒にいるんですけどね」
「それとこれとは別じゃない」
今日はやたらと抵抗しようとする。
「「なにを気にしているんです?」」
「あーもう面倒くさいっ、なら私を飽きさせないようにしなさい」
「「わかりました」」
でも、見つめておけばなんとかなることがわかった。
いまから色々しようとしたらお祭りのときにちゃんとすればいいとのことだったから引き続き休むことにした。
みこちゃんだけが課題と戦ってうーんうーんと唸っていたけどそれも一時間ぐらい経過したらなくなった、彼女もやっとなんにも気にせずに休める立場の人間になったんだ。
「ただいま――あれ、なんか増えているね?」
「こいつらがどうしてもって言うから仕方がなくいるのよ、祭りもいくことになったわ」
誘わなかったらいっていなかったんだろうか? 自分が先輩ともいきたいから誘っただけでも動いてよかったと思える件だった。
「そっか、誘ってもらえてよかったね」
「いやあんたね、振った相手によくそんなことを言えるわよね」
「それとこれとは――」
「最強だから禁止」
最強だから禁止のカードを沢山使ってきたのが先輩だけど。
前と同じでお互いが片付けられているのか悪い雰囲気になることはなかった。
くみちゃんがいるから姉がみこちゃんや先輩にくっつくことはなくなった、でも、その代わりにと言わんばかりに先輩がよくくっつくようになった。
それでいてたまに見てくるのは私の中のなにかを煽りたいからだとわかっている、が、羨ましいとは思えない。
自分からするんじゃ価値はないんだ、彼女が一緒にいるときに甘えてきてくれる方がいい。
「強情ね、それならこうしたらどう?」
「なんでそれで私を抱きしめるんですか? あと、ちゃんと水分を摂っていますか? 体が熱いですよ」
先輩はスマホを弄っているかファッション雑誌を読んでいるところが想像しやすい。
お風呂なんかにも持ち込んで長時間のお風呂になっていそうだ、お母さんかお父さんのどちらかに早く出るようにと言われてから渋々出ていそう。
「飲んでいるわよ、しかもちゃんと水やお茶をね。あんまりコーヒーや紅茶、甘いジュースなんかに頼ったりする人間じゃないから」
「偉いですね、私はついつい甘い飲み物を求めてしまいます」
「別にそれで健康被害が出ているわけじゃないんだからいいのよ、人生は一度きりなんだから自分が最大限に楽しめるように行動しなさい」
「ならゆき先輩を誘った私を褒めてあげたいですね」
「はは、そうよ、褒めてあげなさい」
特に意味はないけど黙っている彼女の方を見てみたら真顔でじっと見てきていた。
これは私の特権なのに、というそれからきているんだろうか?
「なに? まちはゆきに変えたの?」
「はは、あんたどうなのよ?」
「あ、別にそういうわけじゃ――あいた……」
「可愛げがない、みこに返すわ」
返されてしまった。
これについてもなにも言わなかったからいまだけは誰にも求められていない時間となった。