表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/34

初パーティ結成と料理による能力向上の発見

# 第6話:初パーティ結成と料理による能力向上の発見


## 成功の後で


外交晩餐会から3日後、花子は久しぶりにゆっくりとした朝を迎えていた。


「はぁ〜、やっと一息つけるわ」


宿屋のベッドで伸びをしながら、花子は安堵のため息をついた。プルちゃんも花子の隣で気持ちよさそうに眠っている。


『プル...プルプル...』


寝言まで可愛い。


「プルちゃんもお疲れさまやったもんなぁ」


あの晩餐会では、プルちゃんも花子の料理の手伝いをしてくれていた。火力調整はもちろん、食材の鮮度チェックまで、まるで経験豊富な料理助手のように動いてくれた。


「でも、なんかすごいことになってもうたなぁ...」


外交晩餐会の成功で、花子の名前は一気に有名になった。昨日までに、貴族からの料理依頼が5件、商人からの取引申し込みが8件、そして冒険者パーティからの加入依頼が12件も届いていた。


「12件て...そんなにパーティーに入ってほしがってくれるんやなぁ」


(でも、どこのパーティーがええんやろう?知らん人ばっかりやし、不安やわ)


その時、宿屋の窓の下から声が聞こえてきた。


「花子さーん!起きてますかー?」


聞き覚えのある声だった。


「あ、ライトさんの声や」


窓を開けて下を見ると、ライト、ミラ、ケンの3人が手を振っていた。


「おはようございます!」


「おはよう、花子さん!」


「今日、時間ありますか?」


「あります、あります!ちょっと待ってください」


花子は慌てて身支度を整えた。この3人とは外交晩餐会の前から親しくしてもらっているし、一番話しやすい冒険者たちだった。


## 真剣な提案


宿屋の1階の食堂で、4人と1匹は向かい合って座っていた。


「実は、相談があるんです」


ライトが改まった表情で切り出した。


「僕たち、正式に花子さんをパーティーに誘いたいんです」


「え?」


「今まで3人でやってきたんですが、花子さんの料理の力を見て、これは本物だと確信しました」


ミラも頷く。


「あなたの料理があれば、今まで挑戦できなかった依頼にも挑戦できます」


「僕たちも、もっと上のランクを目指したいんです」


ケンも真剣な表情だった。


「でも...」


花子は困惑した。


「私なんかが入って、足手まといになりませんか?」


「とんでもない!」


ライトが首を振った。


「花子さんの戦闘センスも素晴らしいし、何より料理による支援は他に代えられません」


「そうです。私たち、花子さんの料理を食べた時の強さ、忘れられないんです」


ミラの言葉に、花子は照れくさくなった。


「そんなに言ってもらえると...」


(確かに、この3人とやったら楽しそうやなぁ)


「あの、条件があるんですが」


「条件?」


「私、まだギルドの食堂でも働きたいんです」


「もちろん!」


ライトが即答した。


「僕たちだって毎日依頼をこなしてるわけじゃないし、花子さんのペースに合わせますよ」


「そうそう、無理強いはしません」


ケンも優しく微笑んだ。


「それに、ギルドの食堂で花子さんの料理が食べられるのは僕たちにとってもメリットです」


ミラが付け加える。


『プルプル♪』


プルちゃんも賛成しているように鳴いた。


「分かりました。よろしくお願いします」


花子は深く頭を下げた。


「こちらこそ!よろしくお願いします!」


こうして、花子の初パーティが結成された。


## パーティ名の決定


「そうそう、パーティ名を決めないといけませんね」


ミラが言った。


「パーティ名?」


「ギルドに正式登録するには、パーティ名が必要なんです」


「そうなんですか」


「何かいい名前ありますか?」


4人で考え込んだ。


「『美味しいパーティ』とか?」


花子の提案に、みんなが苦笑いした。


「ちょっと直接的すぎるかも...」


「『料理戦士団』は?」


ライトの案。


「うーん、ちょっと硬いかな」


「『プルプル組』は?」


ケンがプルちゃんを指差した。


『プルプル?』


プルちゃんが首を傾げる。


「可愛いけど、強そうじゃないですね」


ミラが笑った。


その時、花子にひらめきが訪れた。


「『風味良好』はどうでしょう?」


「風味良好?」


「はい。料理の風味も良くて、パーティの雰囲気も良好って意味で」


「おお、それいいですね!」


「語呂もいいし」


「決まり!『風味良好』で行きましょう」


新しいパーティ「風味良好」が誕生した瞬間だった。


## 初めての正式依頼


パーティ登録を済ませた「風味良好」の面々は、さっそく初依頼を選ぶことになった。


「Dランクの依頼から選びましょう」


ライトが依頼ボードを見上げる。


「あ、これなんかどうでしょう?」


ミラが指差したのは——


【討伐依頼】森の主・ベアロード討伐

推奨ランク:Dランク

報酬:金貨2枚

期限:1週間以内


「ベアロード?」


「巨大な熊のような魔物です」


ケンが説明してくれた。


「普通のクマより3倍くらい大きくて、すごく凶暴なんです」


「こ、怖そう...」


「でも、4人なら大丈夫だと思います」


「それに、花子さんの料理があれば」


ライトが自信満々に言った。


「分かりました。やってみましょう」


花子も決意を固めた。


(でも、ベアロードって...クマの肉かぁ。どんな味なんやろう?)


早速、料理人の発想になっている花子だった。


## 戦闘前の準備


森に向かう前に、花子は戦闘用の料理を準備することにした。


「今回は4人分作らないといけませんね」


ギルドの厨房を借りて、花子は腕を振るった。


まずは基本の「パワーアップ肉料理」。ワイルドボア肉を使って、筋力と体力を向上させる。


次に「疾風のオオカミステーキ」。素早さを大幅に向上させる。


そして「魔法防御の青い肉炒め」。魔法攻撃への備え。


最後に新作の「集中力向上のハーブティー」。判断力と反射神経を高める効果がある。


「うわぁ、すごい品揃えですね」


ミラが感心している。


「どれも美味しそうな匂いです」


ケンも期待で目を輝かせていた。


「でも、全部食べて大丈夫なんですか?」


ライトが心配そうに尋ねた。


「あ、それは私も気になってたんです」


花子も実は気になっていた。複数の効果のある料理を同時に食べて、副作用はないのだろうか?


「とりあえず、私が試してみますね」


「危険ですよ!」


「大丈夫です。プルちゃんも一緒やし」


『プルプル』


プルちゃんも心配そうに鳴いた。


花子は恐る恐る、4種類の料理を少しずつ口にしてみた。


すると——


「うわぁ!」


花子の体が虹色に光った。


「すごい!体が軽いし、力も湧いてくるし、頭もすっきりしてる!」


「本当ですか?」


「はい!全然副作用ないです」


「それじゃあ、僕たちも」


3人も恐る恐る料理を食べてみた。


すると、全員の体が様々な色に光り始めた。


「うおお!これはすごい!」


「体がまるで別人みたい!」


「魔力もパンパンです!」


みんな興奮していた。


(よかった〜。これで安心して戦えるわ)


## 森の主との遭遇


町から北に2時間歩いた深い森で、ついにベアロードと遭遇した。


「うわぁ...でかい」


花子が思わず呟いた。


確かに普通のクマの3倍はある。身長は4メートルを超え、筋肉質の体は圧倒的な迫力を放っていた。


「グオオオオオ!」


ベアロードの咆哮が森に響く。


「作戦通りに行きましょう」


ライトが剣を抜いた。


「僕が正面から、ケンが後方支援、ミラが魔法攻撃」


「花子さんは安全な場所から料理による支援をお願いします」


「分かりました」


花子は少し離れた岩の陰に隠れた。プルちゃんも一緒だ。


『プルプル』


「プルちゃんも心配やけど、みんなを信じよう」


## 戦闘開始


「行くぞ!」


ライトがベアロードに向かって突進した。


花子の料理効果で能力が向上した3人の動きは、今まで見たことがないほど俊敏だった。


「こんなに速く動けるなんて!」


ライトの剣技が冴える。普段なら避けきれないベアロードの爪攻撃を、紙一重で避けていく。


「ファイアボール!」


ミラの魔法も威力が段違いだった。普段の2倍以上の火力で、ベアロードの毛を焦がす。


「急所を狙う!」


ケンの矢が正確にベアロードの急所を捉える。集中力向上の効果で、命中率が格段に上がっていた。


「すごい...」


花子は感動していた。


(私の料理で、こんなに強くなるんや...)


でも、ベアロードも森の主だけあって手強かった。


「グオオオ!」


巨大な爪で、ライトを薙ぎ払おうとする。


「あぶない!」


## 追加支援


「みんな、体力回復料理です!」


花子は急いで保温していた回復スープを取り出した。


「ありがとう!」


ライトが戦闘中にスープを飲む。すると、疲労していた体力が瞬時に回復した。


「うわ!元気になった!」


ミラとケンも回復料理を摂取して、再び万全の状態に。


「今度こそ決めよう!」


3人の連携が完璧になった。ライトが正面から注意を引き、ケンが脚を狙って動きを封じ、最後にミラの強力な魔法で決着をつける。


「サンダーボルト!」


ミラの雷魔法がベアロードを直撃した。


「グオオ...」


ベアロードがゆっくりと倒れる。


「やったぁ!」


「勝った!」


みんなで歓声を上げた。


「花子さんのおかげです!」


「料理の効果がなかったら、絶対勝てませんでした」


花子も嬉しくて涙が出そうだった。


(みんなの役に立てたんや...)


『プルプル♪』


プルちゃんも嬉しそうに鳴いている。


## 能力向上の詳細分析


戦闘後、4人は森の中で休憩しながら、今回の戦闘を振り返っていた。


「今回の料理効果、詳しく検証してみませんか?」


ミラが提案した。


「検証?」


「はい。どの料理がどの程度効果があったのか、きちんと調べてみましょう」


「それはええアイデアやね」


花子も興味を持った。


「じゃあ、一つずつ試してみましょう」


まず、ライトが「パワーアップ肉料理」だけを食べてみた。


「筋力が...だいたい1.5倍くらいになった感じです」


次にミラが「集中力向上のハーブティー」を飲んだ。


「魔法の集中力が格段に上がりました。普段より複雑な魔法も使えそうです」


ケンは「疾風のオオカミステーキ」を試食。


「素早さが2倍近くになってます。矢を放つ速度も上がってる」


最後に全員で「魔法防御の青い肉炒め」を食べた。


「確実に魔法抵抗力が上がってますね」


「数値化すると、だいたい60%くらい魔法ダメージが軽減されそうです」


ミラが専門的な分析をしてくれた。


## 新発見


「でも、一番すごいのは...」


ライトが言いかけた時、花子も同じことを考えていた。


「複数の料理を同時に食べた時の相乗効果ですよね」


「そうです!」


「単体で食べた時より、複数食べた時の方が効果が高くなってる」


ケンも気づいていた。


「普通、複数の薬を同時に飲むと効果が薄くなるものなんですが...」


ミラが首を傾げる。


「花子さんの料理は逆に、相乗効果で強くなってる」


「そうなんですか?」


花子は驚いた。


(料理って、組み合わせによって効果が変わるんやなぁ)


「これは大発見です」


「戦術の幅が大きく広がりますね」


3人とも興奮していた。


「でも、なんで相乗効果があるんやろ?」


花子は自分の料理について考えていた。


(もしかして、おばあちゃんの包丁の力?それとも、私の料理への想い?)


答えは分からないが、確実に言えることがあった。


「みんなで一緒に食べると、より美味しく感じるからかもしれませんね」


「あ、それはありそう」


「確かに、みんなで食べる料理は特別ですもんね」


花子の言葉に、みんなが頷いた。


## 新たな課題


森から町に帰る道すがら、花子は新たな課題に気づいていた。


「材料の確保が大変になりそうやなぁ」


「材料?」


「はい。今回みたいに4人分の料理を作ると、特殊な食材がすぐになくなってしまって」


確かに、青い苔やオオカミ肉など、レアな食材は簡単には手に入らない。


「それなら、僕たちが採取を手伝いますよ」


ライトが提案した。


「採取依頼も積極的に受けて、花子さんの料理材料を集めましょう」


「でも、申し訳ないです」


「何言ってるんですか」


ミラが笑った。


「花子さんの料理があるから、僕たちは強くなれるんです」


「材料集めも、立派なパーティ活動ですよ」


ケンも賛成してくれた。


『プルプル♪』


プルちゃんも嬉しそうだ。


「ありがとうございます。みんながいてくれて、本当に心強いです」


花子は胸が熱くなった。


(一人やったら絶対できひんかったことが、みんなとやったらできるんやなぁ)


## ギルドでの報告


町に戻った「風味良好」の面々は、ギルドで戦果を報告した。


「ベアロード討伐、お疲れさまでした」


受付嬢が笑顔で迎えてくれる。


「こちらが証拠の牙と毛皮ですね。確認いたします」


「はい」


「問題ありません。報酬の金貨2枚です」


「ありがとうございます」


ライトが代表して受け取った。


「それにしても、初回依頼でベアロード討伐とは、素晴らしい戦果ですね」


「花子さんの料理のおかげです」


「料理?」


受付嬢が首を傾げる。


「花子さんの作る戦闘支援料理が、本当にすごいんです」


ミラが説明すると、受付嬢の目が丸くなった。


「それは...ぜひギルド長にも報告させていただきます」


「また測定をお願いするかもしれません」


(また測定かぁ...数値、また上がってるんかな?)


## パーティとしての初回報酬分配


ギルドの一角で、「風味良好」の4人は報酬の分配について話し合っていた。


「えっと、金貨2枚を4人で分けると...」


ライトが計算し始めた時、花子が口を開いた。


「あの、私は1割でいいです」


「え?」


「だって、私はほとんど戦ってないし...」


「何言ってるんですか!」


ケンが驚いた。


「花子さんの支援がなかったら、絶対に勝てませんでしたよ」


「そうです。花子さんの貢献度が一番高いくらいです」


ミラも同意見だった。


「でも...」


「平等に4等分しましょう」


ライトが決断した。


「それがパーティってものです」


「分かりました」


花子は素直に受け入れた。


「金貨2枚を4等分すると...銀貨50枚ずつですね」


一人銀貨50枚。花子にとっては大金だった。


(すごいなぁ...これだけあれば、しばらく生活に困らへん)


『プルプル♪』


プルちゃんも嬉しそうだ。


## 食堂での祝勝会


その夜、ギルドの食堂で「風味良好」の初依頼成功を祝う会が開かれた。


「乾杯!」


「乾杯!」


4人でジョッキを合わせる。


(お酒はあんまり強くないんやけど...でも今日は特別やね)


花子も普段より多めにエールを飲んだ。


「今日の戦闘、本当にすごかったですね」


ミラが興奮気味に振り返る。


「僕も、あんなに魔法が強力になるなんて思いませんでした」


「僕の矢も、普段の倍は飛んでました」


ケンも満足そうだった。


「でも、一番すごかったのは花子さんですよ」


ライトが花子を見つめる。


「戦闘中の判断も的確でしたし、回復のタイミングも完璧でした」


「そんな...私はただ料理作っただけですよ」


「それが素晴らしいんです」


3人とも本当に感謝していた。


「あの、これからもよろしくお願いします」


花子が改めて頭を下げる。


「こちらこそ!」


「ずっと一緒にやっていきましょう」


「「風味良好」、最高のパーティ名でしたね」


みんなで笑い合った。


## 新たな料理への挑戦


翌日、花子は新しい料理の開発に取り組んでいた。


「昨日の戦闘で分かったこと...」


ベアロードの肉を見つめながら、花子は考えていた。


「クマの肉って、どう調理したらええんやろ?」


クマ肉は臭みが強いことで有名だが、栄養価は非常に高い。うまく調理すれば、強力な効果が期待できそうだった。


「まずは下処理から」


花子は丁寧にベアロード肉の血抜きを行った。和包丁の切れ味は相変わらず素晴らしく、肉の繊維を傷つけることなく処理できる。


「次に臭み取り」


森で採取したハーブを使って、じっくりとマリネする。


「そして...」


花子は新しいアイデアを試してみることにした。


複数の効果を一つの料理に込められないだろうか?


「筋力向上と体力回復を同時に...」


ベアロード肉に、回復効果のあるヒーリングハーブと、筋力向上効果のあるファイアベリーを組み合わせる。


「どうかな?」


新作料理が完成した。


「『森の主のパワーシチュー』...ちょっと長いかな?」


プルちゃんに味見してもらうと——


『プルプル〜♪』


プルちゃんの体が赤と緑の光に包まれた。


「おお!2つの効果が同時に!」


大成功だった。


## パーティの成長


その後数日間、「風味良好」は順調に依頼をこなしていった。


採取依頼、討伐依頼、護衛依頼...様々な依頼を通して、パーティとしての結束も深まっていった。


「花子さんの料理、毎回進化してますね」


ライトが感心していた。


「今日の『俊敏強化の風味煮込み』も素晴らしかったです」


「ありがとうございます」


花子も手応えを感じていた。


(みんなと一緒にいると、どんどん新しいアイデアが浮かんでくる)


「でも、まだまだです」


「まだまだって...十分すごいですよ」


ミラが苦笑いした。


「そういえば、来週は大きな依頼がありましたよね」


ケンが思い出したように言った。


「大きな依頼?」


「隣町への商品護衛依頼です」


「3日間の長期依頼で、報酬も金貨5枚と高額です」


ライトが説明してくれた。


「でも、盗賊が出るかもしれない危険な依頼でもあります」


「盗賊...」


花子は少し不安になった。


(人間相手の戦闘って、魔物とは違うよね...)


「大丈夫ですよ」


ミラが察したように言った。


「花子さんの料理があれば、盗賊くらい怖くありません」


「そうそう、僕たちを信じてください」


ケンも励ましてくれた。


「分かりました。頑張ります」


花子は決意を新たにした。


(みんなを支えられるように、もっと美味しい料理を作らないと)


## 新たな発見の記録


その夜、花子は日記をつけていた。異世界に来てから始めた習慣だった。


「今日の発見:複数効果料理の成功」


「ベアロード肉を使った『森の主のパワーシチュー』は、筋力向上と体力回復の両方の効果を持つ」


「従来の料理と組み合わせることで、さらに複雑な効果も期待できそう」


「課題:材料の安定確保、保存方法の改善、新レシピの開発」


プルちゃんが花子の膝の上で丸くなっている。


『プルプル』


「プルちゃんも今日はお疲れさまやったね」


窓の外を見ると、ギルドの灯りがまだ点いている。夜遅くまで活動している冒険者たちがいるのだろう。


「私も、ちゃんとした冒険者になれてるんかな?」


異世界に来てから3週間。確実に成長している実感があった。


「でも、まだまだや。もっともっと、みんなの役に立てるようになりたい」


花子は和包丁を見つめた。今日も包丁は温かく光っている。


「おばあちゃん、私、頑張ってるでしょ?」


包丁の光が一段と強くなったような気がした。


まるで、「よく頑張ってるよ」と言っているかのように。


## 明日への準備


翌朝の準備をしながら、花子は今後の目標を考えていた。


「まずは来週の護衛依頼を成功させること」


「それから、もっと多様な効果の料理を開発すること」


「そして...」


花子は少し恥ずかしそうに微笑んだ。


「みんなともっと仲良くなること」


パーティを組んでから、毎日が本当に楽しかった。一人で異世界に放り出された時の不安は、もうほとんど感じなくなっていた。


「よし、明日も頑張ろう」


『プルプル♪』


プルちゃんも同意するように鳴いた。


「風味良好」の冒険は、まだ始まったばかりだった。


でも、花子には確信があった。


このパーティなら、どんな困難も乗り越えられる。


そして、自分の料理で、みんなを支えていけるということを。


平凡な主婦だった鈴木花子は、今や立派な冒険者パーティの一員として、新しい世界で新しい人生を歩んでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ