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驚愕される料理人スキル

# 第5話:驚愕される料理人スキル


## ギルドでの新たな日常


花子が冒険者として正式に活動を始めてから1週間が経った。ギルドの食堂での料理の仕事と、採取依頼を交互にこなす日々は、思った以上に充実していた。


「おはようございます〜」


いつものように朝早くギルドに向かう花子。肩の上ではプルちゃんが気持ちよさそうに丸くなっている。


『プルプル〜』


「プルちゃんも眠そうやね。でも今日も頑張ろうな」


ギルドの扉を開けると、もうすでに何人かの冒険者が朝食を取っていた。


「あ、花子さん!」


「おはよう!」


「今日の特別メニューは何?」


すっかり花子の存在は冒険者たちに浸透していた。特に、花子の作る「戦闘支援料理」は評判になっていて、朝の時間帯には多くの冒険者が訪れるようになっていた。


「今日は新作を考えてるんです」


花子は微笑みながら答えた。


「新作?どんな効果があるんだ?」


「まだ試作段階ですけど、魔法抵抗力を上げる料理を作ってみたくて」


「魔法抵抗力?」


冒険者たちの目が輝いた。魔法攻撃をしてくる魔物は手強く、多くの冒険者が苦戦していたからだ。


「本当にそんなことできるのか?」


「やってみないと分からんですけど...」


花子は昨夜から考えていたレシピを思い出していた。


## 新メニューの開発


厨房に入った花子は、早速新しい料理の試作に取りかかった。


「魔法抵抗力を上げるには...」


花子が持参している異世界の食材を見回す。紫の葉っぱ(ソルトリーフ)、黄色いハニーフラワー、赤いファイアベリー...


「この青い苔、前に見つけたやつ。なんか不思議な効果がありそうやったんよね」


森で採取した時に、触るとピリピリした感覚があった青い苔。これが魔法に関係ありそうだと花子は直感していた。


「プルちゃん、ちょっと味見してくれる?」


『プルプル』


プルちゃんが青い苔を小さく食べてみる。すると、プルちゃんの体が薄い青色に光った。


「おお!やっぱり何か効果があるんや」


花子は青い苔を細かく刻んで、ワイルドボア肉と一緒に炒めてみることにした。そこに塩味のソルトリーフと、甘みのハニーフラワーを加える。


ジュウジュウと音を立てて、肉が焼けていく。すると、厨房に今まで嗅いだことのない香りが漂った。


「なんか...オゾンみたいな匂い?」


雷の後のような、すっきりとした香りだった。


「できた!」


皿に盛りつけた肉料理は、薄い青色に光っている。見た目も神秘的だ。


「『魔法防御の青い肉炒め』...変な名前やけど」


まず花子が味見をしてみる。


「美味しい!そして...」


体の中に、今まで感じたことのない力が流れ込んできた。まるで体の周りに見えないバリアが張られたような感覚。


「これは...効果ありそう」


プルちゃんも試食する。すると、プルちゃんの体が青い光に包まれた。


『プルプル〜♪』


満足そうに鳴いている。


## 実験台志願者


「花子さん、新作できたって聞いたけど」


厨房に声をかけてきたのは、昨日も来店した戦士のライトだった。


「あ、ライトさん。はい、魔法抵抗の料理を作ってみました」


「魔法抵抗?本当に?」


ライトの目が輝いた。


「まだ試作ですけど、よろしければ...」


「ぜひ!僕、魔法攻撃苦手なんだよ」


花子は青い肉炒めを皿に盛って、ライトに渡した。


「うわ、青く光ってる...」


「大丈夫ですよ。変な味はしません」


ライトは恐る恐る一口食べてみた。


「あ、美味しい!そして...うわ!」


ライトの体が青い光に包まれる。


「すごい!体の周りに何かバリアが張られてる感じだ」


「本当ですか?」


「ああ、確実に魔法防御力が上がってる」


その時、ちょうど魔法使いのミラとアーチャーのケンもやってきた。


「ライト、なんで光ってるの?」


「花子さんの新作だよ。魔法抵抗力が上がる料理」


「え?そんなものまで作れるの?」


ミラが驚いている。


「試してみたいです」


ケンも興味津々だった。


「あ、でも効果を確認するために、誰か魔法を撃ってもらえませんか?」


花子の提案に、ミラが手を上げた。


「私が弱い攻撃魔法を撃ってみます」


## 効果の実証


ギルドの裏庭で、花子の新作料理の効果測定が始まった。


「じゃあ、ライトさん、普通の状態で魔法を受けてもらえますか?」


「分かった」


ミラが小さな火の玉魔法を撃つ。


「ファイアボール!」


ポンッという小さな爆発と共に、ライトが「うっ」と声を上げた。


「結構熱いな...」


「では今度は、料理を食べた状態で」


ライトが青い肉炒めを食べ直すと、再び体が青く光る。


「ファイアボール!」


今度は同じ魔法なのに、ライトはほとんど動じなかった。


「全然熱くない!」


「すごい!魔法のダメージが4分の1くらいになってる」


ミラも興奮している。


「本当に魔法抵抗力が上がってる」


「やったー!」


花子は嬉しくてぴょんぴょん跳ねた。


『プルプル♪』


プルちゃんも一緒に喜んでいる。


「花子さん、これは本当にすごいよ」


ケンが感心して言った。


「魔法抵抗の装備は高価だし、重いから動きが鈍くなるんだ」


「でも、料理なら身軽なまま防御力を上げられる」


「革命的だ」


## 噂の拡散


その日の午後、花子の「魔法防御料理」の噂はギルド中に広まった。


「本当に魔法を防げる料理があるらしい」


「しかも、魔法を使わずに作ってるって」


「あの新人の料理人、只者じゃないぞ」


ギルドの食堂は、いつもの倍の客で賑わっていた。


「すみません、『魔法防御の青い肉炒め』ください」


「私も!」


「僕にも!」


注文が殺到して、花子は大忙しだった。


「うれしい悲鳴やなぁ」


手際よく料理を作りながら、花子は充実感に満たされていた。


「でも、青い苔が足りなくなりそう...」


材料の確保が新たな課題になりそうだった。


## ギルド長の関心


夕方、一段落した頃にギルド長がやってきた。


「花子さん、お疲れさまです」


「あ、ギルド長。お疲れさまです」


「今日の騒ぎ、聞いてますよ」


ギルド長は苦笑いしている。


「すみません、食堂が混乱して...」


「いえいえ、良いことです。でも、また測定させていただけませんか?」


「測定?」


「あなたの能力値、また変化してるかもしれません」


再び水晶球での測定が行われた。


「やはり...」


ギルド長が唸る。


「料理技能が97、戦闘補助が52まで上がっています」


「しかも、『魔法付与』という新しい技能が現れました」


「魔法付与?」


「食材に魔法的効果を付与する能力です。通常の魔法料理師の専門技能ですが...」


「あなたの数値は78。これは上級魔法料理師レベルです」


花子は首を傾げた。


「でも、私は魔法を使ってないんですが...」


「それが不思議なんです。魔法を使わずに、これだけの効果を...」


ギルド長は考え込んだ。


「もしかすると、あなたの包丁が関係しているかもしれません」


## 和包丁の秘密


その夜、宿屋の部屋で花子は和包丁を見つめていた。


「おばあちゃん、この包丁にどんな秘密があるん?」


包丁は温かく光っている。まるで答えようとしているかのように。


その時、花子の頭の中に映像が浮かんだ。


祖母が若い頃、見知らぬ世界で料理をしている様子。そして、今と同じ和包丁を使って、光る料理を作っている姿。


「やっぱり、おばあちゃんも...」


映像の中の祖母は、花子と同じように魔法を使わずに特殊な効果のある料理を作っていた。


「この包丁は、異世界の包丁やったんやね」


プルちゃんが花子の膝の上で『プルプル』と鳴く。


「プルちゃんも知ってたん?」


『プルプル』


なんだか肯定しているように聞こえた。


「そうか...だから私の料理に、特別な効果があるんやね」


花子は包丁を大切に布で包んだ。


「おばあちゃん、ありがとう。大切に使わせてもらうわ」


## 新たな依頼


翌朝、花子がいつものようにギルドに向かうと、受付で待っていたのは見慣れない男性だった。


立派な服装に、品のある雰囲気。明らかに貴族か商人のような人物だ。


「あなたが鈴木花子さんですね」


「はい、そうですが...」


「私はマーカス・ウィンザー、この町の商工会の代表を務めております」


「商工会?」


「はい。実は、あなたにお願いがありまして」


マーカスは丁寧に頭を下げた。


「来週、隣国から外交使節団が到着します」


「はぁ...」


「その歓迎晩餐会で、あなたに料理を作っていただけないでしょうか」


「え?私が?」


「あなたの料理の噂は、もう貴族の間でも有名なんです」


花子は驚いた。


「そんな大それたこと、私には...」


「報酬は金貨10枚お支払いします」


「きん、金貨10枚?」


金貨1枚で銀貨100枚分。つまり金貨10枚は銀貨1000枚分だ。


「た、高すぎませんか?」


「いえ、それだけの価値があると確信しております」


マーカスは真剣な表情だった。


「ただし、条件があります」


「条件?」


「使節団の中に、魔法攻撃を得意とする護衛がいるのです」


「その方々の前で、あなたの魔法防御料理を披露していただきたい」


## 重要な使命


「魔法防御料理を披露?」


「はい。実は、隣国は魔法技術が発達していて、我が国は常に魔法攻撃への対策に悩んでいました」


「それが...」


「あなたの料理があれば、我が国の防衛力は飛躍的に向上します」


「そんな大それた話やったんですか...」


花子は困惑した。


(私の料理が、国の防衛に関わるなんて...)


「ただし、失敗は許されません」


マーカスの表情が厳しくなった。


「外交問題に発展する可能性もあります」


「プレッシャーが...」


その時、プルちゃんが花子の肩で『プルプル』と鳴いた。まるで「大丈夫」と言っているかのように。


「分かりました」


花子は決意を固めた。


「お受けします」


「本当ですか?」


「はい。でも、準備に1週間いただけますか?」


「もちろんです」


## 特訓の開始


依頼を受けた花子は、さっそく準備に取りかかった。


「まず、材料の確保や」


青い苔はもちろん、他の特殊な食材も大量に必要だった。


「プルちゃん、森に採集に行こう」


『プルプル!』


花子とプルちゃんは、いつもより深い森に向かった。


「あ、あれも使えそう」


「これも面白い効果がありそうやね」


様々な食材を採集しながら、花子は新しいレシピを考えていた。


「魔法防御だけじゃなくて、他の効果もある料理を作りたいなぁ」


森の奥で、今まで見たことのない銀色の果実を発見した。


「これ、なんやろ?」


恐る恐る味見してみると、口の中に清涼感が広がった。


「すごい!頭がすっきりする」


プルちゃんも試してみると、目がキラキラと輝いた。


『プルプル♪』


「これは知力向上の効果がありそうやね」


「『頭脳明晰の銀果実ソテー』...どうかな?」


花子の料理のレパートリーが、どんどん増えていく。


## 練習と改良


ギルドに戻った花子は、連日料理の練習に明け暮れた。


「今度は素早さを上げる料理を作ってみよう」


オオカミの肉に、森で見つけた風の香りがする緑の葉っぱを合わせる。


「できた!『疾風のオオカミステーキ』」


試食したライトが目を丸くした。


「うわ!体が軽い!まるで風になったみたい」


「本当ですか?」


「ああ、移動速度が2倍くらいになってる」


どんどん効果が実証されていく花子の料理。


でも、花子にはまだ不安があった。


「本当に外交晩餐会で通用するんかなぁ」


「大丈夫やよ」


声をかけてきたのは、食堂の店長だった。


「君の料理は本物だ。自信を持ちなさい」


「でも、緊張します」


「それなら、事前に練習をしてみたらどうかな」


「練習?」


「明日の夜、ギルドで模擬晩餐会をやってみよう」


店長の提案で、急遽模擬晩餐会が開催されることになった。


## 模擬晩餐会


翌日の夜、ギルドの食堂が特別に飾り付けられた。


参加者は花子と親しい冒険者たち、ギルドの職員、そして町の有力者数名。


「緊張するなぁ...」


花子は厨房で最終準備をしていた。


「大丈夫、花子さん。僕たちがついてる」


ライトが励ましてくれる。


「みんな、ありがとう」


花子は深呼吸をして、和包丁を握った。


「おばあちゃん、力を貸して」


包丁が温かく光る。


「よし、やるで!」


花子の本格的な料理の披露が始まった。


まずは前菜として、「知力向上の銀果実サラダ」。


続いて、「魔法防御の青い肉炒め」。


そして「疾風のオオカミステーキ」。


最後に新作の「体力回復のハーブスープ」。


どの料理も、参加者たちを感嘆させた。


「すごい...」


「こんな料理、初めて食べた」


「体の調子が今までで一番良い」


模擬晩餐会は大成功だった。


「花子さん、あなたなら絶対大丈夫です」


ギルド長が太鼓判を押してくれた。


「本番も頑張ります」


花子の自信も、少しずつ戻ってきた。


## いよいよ本番


そして1週間後、ついに外交使節団が到着した。


「花子さん、準備はいかがですか?」


マーカスが心配そうに声をかけてくる。


「はい、大丈夫です」


花子は会場の厨房で最終チェックをしていた。


プルちゃんも一張羅の小さなリボンをつけて、気合いが入っている。


『プルプル!』


「プルちゃんも頑張ろうな」


会場には、豪華な装いの貴族たちと、隣国の使節団が集まっていた。


「それでは、お料理をお楽しみください」


マーカスの合図で、花子の晩餐会料理の提供が始まった。


最初の一品を口にした使節団の人々。


その瞬間、会場が静まり返った。


(あ、あかん?失敗した?)


花子の心臓が早鐘を打つ。


しかし次の瞬間——


「これは...」


「信じられない」


「素晴らしい!」


使節団から感嘆の声が上がった。


「魔法を使わずに、これほどの効果を...」


「我が国の宮廷料理師でも不可能です」


使節団の団長が立ち上がった。


「鈴木花子さん、あなたは天才です」


(やった...成功した!)


花子は安堵の涙を流していた。


こうして花子の料理人としての評判は、国境を越えて広まることになった。


異世界に来てから2週間。


平凡な主婦だった花子は、今や各国から注目される料理人になっていた。


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