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Aランク依頼達成と冒険者ランクの昇格

## 古代遺跡への到着


王城を出発してから2日が経った。「風味良好」一行は、北の国境近くにある古代遺跡『神域の間』にようやく到着していた。


「うわぁ...すごいなぁ」


花子は目の前に広がる光景に言葉を失った。


巨大な石造りの神殿が、深い森の中にそびえ立っている。高さは優に50メートルを超え、幅も100メートルはあるだろう。千年の時を経ているとは思えないほど、保存状態は良好だった。神殿全体が7つの層に分かれており、それぞれの層が異なる色の光で輝いている。


最下層は深い青、その上は緑、さらに黄色、オレンジ、赤、紫、そして最上層は純白の光に包まれていた。


「虹色の神殿や...」


花子が感嘆の声を上げる。


石柱には古代文字が刻まれ、よく見ると料理に関する絵文字のようなものも混じっている。包丁、鍋、火、水...そして神々しく光る料理を持つ人物の彫刻。


「これが千年前の神饌調理術の修行場...」


ライトも感嘆の声を上げていた。


「確かに普通の遺跡じゃありませんね」


ミラが魔法で遺跡を分析している。


「強力な魔法的結界が張られています。しかも、7層構造になっている。各層に異なる試練があるようです」


「それに、この気配...」


ケンが弓を構えた。


「確実に古代種の魔物がいます。しかも複数...いえ、かなりの数です」


『プルプル...』


プルちゃんも緊張しているようで、普段より小さくなって花子の肩にしがみついている。


「大丈夫やで、プルちゃん。みんなで一緒やから」


花子は神殿に近づくと、足元の地面に不思議な文様が刻まれているのに気づいた。円形の巨大な魔法陣のようで、神殿を中心に直径200メートルほどの範囲に広がっている。


「この魔法陣...」


花子が一歩足を踏み入れた途端、魔法陣全体が淡く光り始めた。


「花子さん!」


ライトが慌てて声をかけるが、光は害のないものだった。むしろ、花子の体が温かく包まれる感覚がある。


「なんか...懐かしい感じがする」


和包丁が温かく脈打っている。まるでこの場所を知っているかのように。


「アルバート教授の資料によれば、この神殿は7つの試練で構成されているはずです」


ライトが地図を確認している。


「最初の試練は『勇気の試練』、次が『知恵の試練』、『技の試練』、『心の試練』、『魂の試練』、『調和の試練』、そして最後が『真実の試練』」


「でも、古代種の魔物が各層の番人として配置されているとのことでした」


「花子さんの神饌調理術が鍵を握っているはず」


ミラが花子を見つめる。


「分かりました。できる限りのことはやってみます」


花子は決意を新たにした。


## 神殿への侵入と第一の扉


神殿の正面には、花子の背丈の3倍はある巨大な石の扉があった。扉の表面は美しく磨かれた黒い石でできており、複雑な古代文字と、料理をしている人物の浮き彫りが刻まれている。


「この浮き彫り...」


花子が近づくと、扉の文字が淡く金色に光り始めた。浮き彫りの人物は、まさに現在の花子と同じポーズで包丁を握っている。


「おお!反応してる」


ライトが驚く。


「やはり、花子さんと関係があるようですね」


その時、花子には古代文字の意味が頭の中に流れ込んできた。まるで母国語を読んでいるかのように。


「『心清らかなる料理の道を歩む者のみ、この聖域に足を踏み入れることを許される』」


「『ただし、真の継承者となるためには、七つの試練を乗り越えなければならない』」


「『覚悟はあるか、料理の道を歩む者よ』」


「読めるんですか?」


「はい...なぜか分かります。そして、この扉は私に問いかけてる」


花子は扉に向かって答えた。


「はい。私は覚悟を決めています。みんなの力になりたい。料理で人を幸せにしたいんです」


すると、扉の浮き彫りが動き出した。料理をしている人物がゆっくりと振り返り、花子を見つめる。


そして、優しく微笑んだ。


重い石の扉がゆっくりと開き始めた。扉の向こうからは、温かい光が差し込んでくる。


「すげぇ...」


ケンが感嘆する。


扉の向こうには、青い光に満ちた広い通路が続いていた。天井は高く、両壁には無数のランプが灯っている。


「行きましょう」


花子が先頭に立って神殿内部に足を踏み入れる。


## 第一層:勇気の試練


神殿の内部は、外観以上に神秘的だった。天井は20メートル以上もの高さがあり、壁面には千年前の神饌調理術の歴史が描かれた巨大な壁画が続いている。


「すごい壁画ですね」


ミラが魔法の光で壁面を照らす。


壁画には、様々な料理人たちが神饌調理術を修行している様子が描かれていた。食材を切る場面、火を扱う場面、そして完成した料理を神々に捧げる儀式の場面。


そして、その中の一人が花子の祖母によく似ていることに花子は気づいた。


「あれ?あの人...」


「どうしたの?」


「いえ...見覚えがあるような気がして」


通路を50メートルほど進むと、やがて第一の試練の間に到着した。円形の広い部屋で、直径は30メートルほど。部屋の中央には古い調理台があり、その周りには様々な調理器具が配置されている。


しかし、部屋に足を踏み入れた瞬間、入り口の扉が重い音を立てて閉まってしまった。


「あ、扉が!」


ライトが振り返る。


「出られませんね」


「試練をクリアするまでは出られないようです」


その時、部屋の奥から複数の足音が響いてきた。


「グルルルル...」


「ガウガウ!」


「キャンキャン!」


現れたのは、5匹の巨大なオオカミだった。しかし、普通のオオカミではない。体長2メートル、体は半透明で青い炎のようなオーラに包まれている。


「古代種のディアウルフの群れ...」


ケンが震え声で呟く。


「5匹も...しかも連携して攻撃してきます」


ミラも緊張している。


「みんな、作戦通りに」


ライトが指示を出す。


「花子さんは後方で支援を。僕たちが前衛を務めます」


「分かりました!」


## 第一戦:ディアウルフの群れ


花子は急いで戦闘支援料理の準備を始めた。王室から支給された神饌の調理具セットを使う。


「まずは基本の能力向上から」


手早くワイルドボア肉を切り分け、スピードクッキングで筋力向上のステーキを作る。オオカミ肉を使った俊敏性向上のソテー、そして新しく開発した古代種対策の神聖料理。


「みんな、これを食べて!」


3人が料理を口にすると、いつもより強い光に包まれた。


「うわ!いつもの倍以上のパワーが!」


ライトが剣を構える。普段の2倍の重さの剣が軽々と振り回せる。


「俊敏性も信じられないくらい上がってます!」


ケンの動きが風のように速くなった。


「魔力も大幅にアップです!」


ミラの周りに強力な魔力が渦巻いている。


「神饌の調理具セット、やっぱりすごいですね」


それでも、古代種ディアウルフは強敵だった。


「ファイアボール!」


ミラの炎魔法が1匹目のディアウルフに命中するが、魔物は炎を物ともせずに突進してくる。


「うわ!効かない!」


「任せて!」


ライトが剣でディアウルフの突進を受け止める。しかし、その衝撃で後方に押し戻されてしまう。


「力が強すぎる...」


「こっちは矢で牽制します!」


ケンが素早く連続で矢を放つ。2匹目、3匹目のディアウルフの注意を引きつけた。


しかし、残りの2匹が花子に向かって来る。


「あ、こっち来てる!」


「花子さん、危ない!」


その時、花子は咄嗟に和包丁を構えた。


「えい!」


和包丁が金色に輝き、突進してきたディアウルフの前脚を見事に切断した。


「きゃん!」


ディアウルフが痛みで後退する。


「花子さん、すごい!」


「包丁でもちゃんと戦えるんや!」


しかし、まだ4匹半が残っている。ディアウルフたちは包囲陣を取って、じりじりと間合いを詰めてきた。


「連携攻撃してきます!」


5匹のディアウルフが同時に跳びかかってきた。


「危ない!」


その時、花子が叫んだ。


「みんな、下湧くわ!ワイルドステーキで力の補充や!」


花子が投げた小さなステーキの塊を3人が口にした瞬間、再び強い光に包まれる。


「おおお!」


ライトの剣技が一段と鋭くなり、2匹のディアウルフを同時に斬り倒した。


「フリーズランス!」


ミラの氷魔法が1匹を氷漬けにする。


「エクスプロージョンアロー!」


ケンの爆発矢が氷漬けのディアウルフを粉々に砕いた。


残るは前脚を失った1匹。


「最後の1匹やね」


花子が和包丁を構えると、ディアウルフは恐れをなして後退した。


「料理の材料にしてあげるわ」


「待って、花子さん」


ライトが止める。


「とどめは僕が」


剣で最後のディアウルフを倒すと、5匹すべてが光の粒子となって消えていった。


「やったー!」


『プルプル♪』


プルちゃんも嬉しそうに鳴いている。


すると、部屋の中央の調理台から声が響いた。


『よくやった。第一の試練、勇気の試練をクリアした』


『次の試練への道を開こう』


部屋の奥の壁がゆっくりと開き、上に続く階段が現れた。


## 第二層:知恵の試練


階段を上ると、第二層の試練の間に到着した。ここは図書館のような部屋で、壁一面に古い書物が並んでいる。


部屋の中央には巨大な石の机があり、その上に古代文字で書かれた問題が浮かび上がっている。


「これは...謎解きですね」


ミラが古代文字を解読しようとしている。


「私には読めません」


「花子さん、お願いします」


花子が机に近づくと、古代文字の意味が頭に流れ込んだ。


「『三つの食材を使い、一つの完璧な料理を作れ』」


「『火を使わず、水を使わず、しかし温かい料理を』」


「『答えは書物の中にあり』」


「火も水も使わんと、温かい料理?」


花子が首をひねる。


「図書館の本に答えがあるってことですか?」


「そういうことやね」


一行は手分けして書物を調べ始めた。しかし、ほとんどの本は古代文字で書かれており、読めるのは花子だけだった。


「この本は...『古代の調理法について』」


「こっちは『魔法を使った料理術』」


「あ、これは『火を使わない調理法の秘密』」


花子がその本を開くと、興味深い記述があった。


「『魔力を食材に込めることで、内側から加熱することができる』」


「『これを魔力加熱法と呼ぶ』」


「魔力で加熱?」


「でも私、魔法使えへんで?」


その時、和包丁が光った。


「あ、この包丁に魔力があるんや」


花子は机の上に用意されていた三つの食材を手に取った。古代小麦、魔法のキノコ、そして光る果実。


「よし、やってみよう」


和包丁を通じて魔力を食材に流し込む。すると、食材が内側から温かくなり始めた。


「おお!本当に温まってる!」


小麦を練り、キノコと果実を混ぜ合わせる。魔力で加熱しながら、丁寧にこねて形を整える。


やがて、美味しそうな匂いが部屋に広がった。


「できた!」


完成したのは、ふんわりとした温かいパンのような料理だった。


『正解だ。第二の試練、知恵の試練をクリアした』


『次の試練への道を開こう』


再び階段が現れた。


## 第三層:技の試練


第三層は武器庫のような部屋だった。壁には様々な古代の調理器具が飾られている。包丁、鍋、フライパン、そして見たことのない道具も多数。


部屋の中央には、5体の石像が立っていた。それぞれが異なる調理器具を持っている。


「これは...」


花子が近づくと、石像が動き出した。


「うわ!動いた!」


5体の石像は、それぞれが持つ調理器具を武器として構えた。


「古代の料理人の石像...」


「これは技術を試す試練のようですね」


『汝の包丁技を見せよ』


石像の一体が声を発した。


『我らの技に勝てれば、次に進むことを許そう』


「勝負や!」


花子が和包丁を構える。


最初の石像は巨大な包丁を振り下ろしてきた。花子はそれを和包丁で受け止める。


「重い!」


しかし、花子の技術は石像を上回っていた。素早い連続攻撃で石像の動きを封じ、見事に勝利した。


2体目は鍋を盾にして攻撃してくる。花子は和包丁の柄で鍋を叩き、隙を突いて勝利。


3体目はフライパンを投げつけてくる。花子は見事に包丁でフライパンを真っ二つに切断。


4体目は泡立て器で素早い攻撃を仕掛けてくる。花子は和包丁を回転させて攻撃を全て弾き、勝利。


最後の5体目は、見たことのない調理器具を持っていた。


「これは...」


『これが最後の試練だ』


石像が持っているのは、光る麺棒のような道具だった。


「なんや、それ?」


石像が麺棒を振ると、エネルギーの刃が飛んでくる。


「うわ!」


花子は咄嗟に身をかわす。


「これ、遠距離攻撃やん!」


何度もエネルギー刃が飛んでくる。花子は和包丁で一つ一つ切り払っていく。


「こんなん、らちがあかん」


花子は思い切って前に出た。


「接近戦に持ち込むで!」


素早く石像に接近し、和包丁で麺棒を真っ二つに切断した。


『見事だ。第三の試練、技の試練をクリアした』


石像たちが深く頭を下げる。


『次の試練への道を開こう』


## 第四層:心の試練


第四層は不思議な部屋だった。部屋の中には何もないが、壁面に大きな鏡が設置されている。


「鏡?」


花子が鏡に近づくと、そこに映っていたのは...


「え?」


鏡の中の花子は、疲れ果てて泣いている姿だった。


『これは汝の心の奥底だ』


声が響く。


『自分の弱さと向き合え』


鏡の中の花子が話しかけてきた。


「私、もう疲れた...」


「異世界なんて来とうなかった」


「みんなに迷惑かけて、危険に巻き込んで」


「普通の主婦に戻りたいよ...」


「そんなことない!」


花子が鏡に向かって叫ぶ。


「確かに最初は戸惑ったけど、今は違う」


「みんなと出会えて、料理で人を幸せにできて」


「こんな素晴らしいことはない」


「私は私の道を歩むんや」


鏡の中の花子が微笑んだ。


「そうよね。ありがとう」


鏡の映像が消え、代わりに金色の光が満ちた。


『よくやった。第四の試練、心の試練をクリアした』


『次の試練への道を開こう』


## 第五層:魂の試練


第五層に到着すると、そこは巨大な厨房だった。今まで見たことのないほど立派な設備が整っている。


部屋の奥から、威厳のある声が響いた。


『ここからが真の試練だ』


現れたのは、3メートルを超える巨大なオオカミのような魔物だった。しかし、普通のオオカミとは明らかに違う。体は半透明で、青い炎のようなオーラに包まれている。


「古代種のフェンリル...」


ケンが震え声で呟く。


「この魔物、通常の攻撃では倒せません」


ミラも緊張している。


『我は千年間、この地を守り続けてきた』


フェンリルが威厳ある声で語りかけてくる。


『汝が真の神饌調理術の継承者かどうか、この身で確かめさせてもらう』


## フェンリルとの本格戦闘


「みんな、これまでで一番の強敵です」


ライトが剣を構える。


「花子さんは後方で支援を。僕たちが前衛を務めます」


「分かりました!」


花子は急いで最強の戦闘支援料理の準備を始めた。今度は手を抜かない。


「龍の肉のステーキで筋力を最大に」


「鳳凰の羽根のスープで魔力を限界まで」


「そして特製の神聖料理で古代種に対抗を」


3人が料理を口にすると、これまでにない強い光に包まれた。


「うおおお!力が湧いてくる!」


ライトの剣が聖なる光を放っている。


「魔力が桁違いです!」


ミラの周りに強力な魔力の渦が巻いている。


「これなら勝てる!」


ケンの弓も聖なる光に包まれた。


しかし、フェンリルも本気を出した。


「グオオオオン!」


巨大な咆哮が神殿全体を震わせる。


フェンリルが巨大な爪で攻撃を仕掛けてくる。ライトが剣で受け止めるが、あまりの力に膝をついてしまう。


「くっ...強い!」


「ブリザード!」


ミラが氷の魔法で攻撃するが、フェンリルの炎のオーラに溶かされてしまう。


「魔法が効かない!」


「エクスプロージョンアロー連射!」


ケンが矢を連続で放つが、フェンリルの素早い動きについていけない。


「速すぎる!」


3人の連携攻撃も、フェンリルには通用しなかった。


「このままじゃ...」


その時、フェンリルが花子に向かって突進してきた。


「花子さん、危ない!」


「大丈夫や!」


花子が和包丁を構える。しかし、フェンリルの攻撃は本気だった。巨大な爪が花子に迫る。


「やばい...」


その時、和包丁が今まで見たことのない強い光を放った。


「え?」


和包丁から光の刃が伸び、フェンリルの爪と激突する。


「何これ?」


光の刃はフェンリルの攻撃を完全に受け止めていた。


『その包丁...まさか』


フェンリルの動きが止まった。


『かつての師の包丁か』


「師?」


『千年前、この地で修行した料理人...汝の血縁であろう』


花子は驚いた。やはり祖母がここで修行していたのだ。


『ならば、最後の試練を与えよう』


フェンリルの敵意が消えた。


『神饌調理術の奥義...『魂の料理』を作るのだ』


## 魂の料理への挑戦


フェンリルが指差したのは、部屋の中央にある古い調理台だった。千年前から使われ続けてきた神聖な調理台。


「『魂の料理』って...どうやって作ったらいいんですか?」


『食べる者の魂に直接働きかける料理だ』


『技術だけでは作れない。真の愛情と、揺るぎない信念が必要だ』


花子は古い調理台の前に立った。周りには千年前の調理器具が並んでいる。


「どうやって作ったらいいんやろ?」


その時、和包丁が強く光り、花子の頭の中に映像が流れ込んできた。


祖母が若い頃、この同じ場所で修行している様子。そして、『魂の料理』を作り上げる技法。


「そうか...心を込めるだけやなくて、魂を込めるんやね」


花子は深呼吸をして、集中し始めた。


材料は、神殿に保存されていた特別な食材を使う。千年の時を経ても腐らない、神聖な力を宿した食材たち。


「『生命の果実』と『清浄な水』、そして『光の塩』...」


これらを使って、シンプルなスープを作ることにした。


しかし、ただ調理するのではない。花子は自分の心、そして魂のすべてを料理に込めた。


家族への愛、仲間への思い、料理を通じて人を幸せにしたいという願い...


「みんなを守りたい。みんなに喜んでもらいたい」


「この世界で出会った全ての人を幸せにしたい」


和包丁を通じて、花子の想いが食材に流れ込んでいく。


やがて、鍋の中のスープが金色に光り始めた。


「あ...」


スープから立ち上る湯気が、まるで生きているかのように美しい形を作り出している。


「できた...」


## 奥義の完成と番人の承認


完成したスープは、見た目は質素だったが、神々しいオーラに包まれていた。スープの表面に小さな光の粒子が踊っている。


『素晴らしい...』


フェンリルが感嘆の声を上げる。


『確かに魂の料理だ。汝の魂が込められている』


「本当ですか?」


『試しに、そのスープを飲んでみよ』


花子は恐る恐るスープを一口飲んだ。


その瞬間、体の奥底から温かい力が湧き上がってきた。心が浄化され、魂が清められる感覚。


「すごい...」


他の3人も驚いている。


「花子さんから、すごいオーラが...」


「まるで聖女様みたい」


『汝を真の神饌調理術継承者と認めよう』


フェンリルが花子の前で頭を下げる。


『そして、最後の秘密を教えよう』


フェンリルが部屋の奥を指差すと、隠されていた扉が現れた。


『そこに、神饌調理術の真の奥義が記された書物がある』


「真の奥義?」


『汝が今作った魂の料理は、まだ初歩にすぎぬ』


『書物を読めば、さらなる力を得られるであろう』


花子は隠し部屋に向かった。


## 第六層:調和の試練


隠し部屋の奥には、さらに上に続く階段があった。


「まだ上があるんですね」


『第六の試練だ。調和の試練』


階段を上ると、そこは美しい庭園のような部屋だった。様々な魔法植物が植えられ、中央には清らかな泉が湧いている。


しかし、庭園は荒れ果てていた。植物は枯れかけ、泉の水も濁っている。


『この庭園を元の美しさに戻すのだ』


『ただし、魔法は使えない。料理の力でのみ回復せよ』


「料理の力で庭園を?」


花子は考えた。


「そうか。栄養のある料理を植物にあげれば」


花子は持参していた食材を使い、植物用の栄養満点のスープを作った。神饌調理術の力を込めて。


そのスープを植物にかけると、みるみるうちに元気を取り戻していく。


「おお!」


枯れていた花が美しく咲き、緑の葉が青々と茂る。


泉にも特別な清浄料理を流し込むと、水が透明になった。


やがて、庭園は千年前の美しさを取り戻した。


『見事だ。第六の試練、調和の試練をクリアした』


## 第七層:真実の試練と神饌調理術の真実


最後の階段を上ると、そこは神殿の最上層だった。純白の光に満ちた神聖な部屋。


部屋の中央には、古い書物が大切に保管されていた。表紙には「神饌調理術大全」と書かれている。


しかし、本に近づこうとすると、最後の試練が待っていた。


部屋の四隅から、4体の強力な古代種が現れた。ドラゴン、フェニックス、ユニコーン、そして巨大な精霊。


『これが最後の試練だ』


『我ら四大精霊を同時に相手にできるか』


4体の精霊が同時に攻撃を仕掛けてくる。炎、氷、雷、そして風の魔法が一行を襲う。


「うわあああ!」


4人は必死に攻撃を避ける。


「これは勝てない!」


その時、花子は気づいた。


「みんな、攻撃したらあかん!」


「え?」


「この子らも番人や。敵やない」


花子は和包丁を置き、四大精霊に向かって話しかけた。


「私たちは戦いに来たんやない。学びに来たんです」


『...』


四大精霊の攻撃が止まった。


「料理で人を幸せにしたい。その技を学ばせてください」


『...真の心を見せよ』


花子は最後の『魂の料理』を四大精霊に差し出した。


精霊たちがそれを口にすると、その場で光に包まれた。


『素晴らしい...これが真の神饌調理術』


『汝を認めよう』


四大精霊が深く頭を下げる。


そして、ついに花子は神饌調理術大全を手に取ることができた。


花子が本を開くと、古代文字で書かれた内容が日本語として理解できた。


「『神饌調理術とは、料理を通じて神々の力を借り、食べる者に加護を与える技術なり』」


「『修行を積みし者は、やがて料理を通じて運命すら変えることができるようになる』」


「運命を変える...」


さらにページをめくると、様々な奥義の説明があった。


「『癒しの神饌』『力の神饌』『知恵の神饌』...そして『奇跡の神饌』」


最後のページには、驚くべき記述があった。


「『究極の神饌調理術を極めし者は、生と死の境すら超越できる』」


「そんなことまで...」


花子は本を大切に胸に抱いた。


## 遺跡からの帰還


全ての試練を終え、一行は神殿から出た。夕日が森を赤く染めていた。


フェンリルと四大精霊が見送りに来てくれている。


『これでお別れだ』


『いつでも戻ってくるがよい。この神殿は汝のものだ』


「ありがとうございました」


花子が深く頭を下げる。


「お疲れさまでした、花子さん」


ライトが労いの言葉をかけてくれる。


「すごかったです。7つの試練を全てクリアするなんて」


ミラも感心している。


「しかも、古代種の魔物たちと仲良くなっちゃうなんて」


ケンも驚いていた。


「みんなのおかげです。一人やったら、絶対できませんでした」


『プルプル♪』


プルちゃんも嬉しそうに鳴いている。


「それにしても、すごい発見でしたね」


「神饌調理術の奥義書なんて、歴史的大発見ですよ」


「これで依頼も完了ですね」


一行は王城への帰路についた。


## 王城での報告


3日後、一行は王城に戻った。


「お帰りなさい!」


国王アルフレッドが自ら出迎えてくれる。


「ご無事で何よりです」


「陛下、依頼を完了いたしました」


ライトが報告書を提出する。


「素晴らしい!詳しく聞かせてください」


花子が遺跡での出来事を詳しく説明すると、国王の目が輝いた。


「神饌調理術の奥義書まで発見されたとは...」


「これは我が国にとって、いえ、世界にとって大きな発見です」


アルバート教授も興奮していた。


「千年前の技術が現代に蘇るとは...」


「花子さん、あなたは歴史を変えましたね」


花子は照れくさそうに答えた。


「私は、ただ料理が好きなだけですから」


「その謙虚さも、あなたの魅力ですね」


国王が微笑む。


## 特別昇格の発表


「さて、今回のAランク依頼の成功を受けて」


国王が改まった表情になった。


「『風味良好』の皆さんに、特別昇格を授与いたします」


「特別昇格?」


「はい。通常ならCランクまでの昇格ですが、今回の功績を考慮して」


「全員をBランクに昇格させていただきます」


「B、Bランク?」


花子が驚く。


「そんな一気に上がっても大丈夫なんですか?」


「あなた方の実力なら十分です」


ギルド長も同席していた。


「特に花子さんの神饌調理術は、もはやSランク相当の技術です」


「そんな大げさな...」


「いえ、事実です」


「これからも、我が国の力になってください」


国王が花子の手を取る。


「はい、精一杯頑張らせていただきます」


## 昇格の儀式


その日の夕方、王城の大広間で昇格の儀式が行われた。


「『風味良好』リーダー、ライト・セイバー」


「はい」


「あなたをBランク冒険者に認定します」


国王がライトに新しい冒険者証を手渡す。


「魔法使いミラ・ウィズダム」


「Bランク冒険者に認定します」


「弓術家ケン・アロー」


「Bランク冒険者に認定します」


そして最後に。


「特殊技能者、鈴木花子」


「はい」


「あなたをBランク冒険者に認定すると共に」


国王が特別な証書を取り出した。


「『神饌調理術師』の称号を授与いたします」


「称号?」


「はい。新しい職業分類として、正式に認定されました」


会場からも拍手が上がる。


「ありがとうございます」


花子は深く頭を下げた。


## 新たな始まり


儀式の後、4人は王城の庭園で語り合っていた。


「ついにBランクですね」


ライトが新しい冒険者証を眺めている。


「これで、もっと難しい依頼も受けられます」


「楽しみですね」


ミラも嬉しそうだ。


「でも、責任も重くなりますね」


ケンが少し緊張している。


「大丈夫です。みんなで力を合わせれば、どんな依頼もクリアできますよ」


花子が励ます。


『プルプル♪』


プルちゃんも同意するように鳴いた。


「そうですね。『風味良好』なら、きっと大丈夫です」


夕日が王城を美しく照らしている。


「さて、明日からまた新しい冒険の始まりですね」


「はい、頑張りましょう」


4人は手を重ね合わせた。


## 町での歓迎


翌日、一行が町に戻ると、大勢の人々が出迎えてくれた。


「お帰りなさい!」


「Bランク昇格、おめでとうございます!」


「さすが『風味良好』!」


町の人々の温かい歓迎に、花子は胸が熱くなった。


「みなさん、ありがとうございます」


ギルドでも、盛大な祝賀会が開かれた。


「乾杯!」


「風味良好に乾杯!」


みんなでジョッキを合わせる。


「花子さん、今度はどんな料理を作ってくれるんですか?」


「神饌調理術の奥義、楽しみです」


たくさんの期待の声に、花子は改めて責任の重さを感じた。


「頑張ります。みんなに喜んでもらえる料理を作り続けますから」


## 新しい目標


その夜、宿屋の部屋で花子は神饌調理術大全を読み返していた。


「まだまだ知らないことがいっぱいやなぁ」


奥義書には、想像を超える技術が記されている。


「でも、一歩ずつ学んでいこう」


プルちゃんが花子の膝の上で丸くなっている。


『プルプル』


「プルちゃんも一緒に成長しような」


窓の外を見ると、異世界の星空が美しく輝いている。


「おばあちゃん、見てる?私、また一歩成長したで」


和包丁が温かく光った。まるで答えるように。


「これからも、この包丁と一緒に頑張るからね」


花子は決意を新たにした。


Bランク冒険者として、神饌調理術師として、さらに大きな冒険が待っている。


「明日からも頑張ろう」


## エピローグ


翌朝、花子はいつものようにギルドの食堂に向かった。


「おはようございます、神饌調理術師さん!」


「今日の特別メニューは何ですか?」


冒険者たちが口々に声をかけてくる。


「今日は新作を試してみようと思います」


花子は神饌調理術大全で学んだ技術を応用して、新しい料理に挑戦することにした。


「『希望の光スープ』...どうやろうかな」


手に取った和包丁が、いつもより強く光っている。


「よし、やってみよう」


花子の新しい挑戦が始まった。


異世界に来てから1ヶ月。平凡な主婦だった鈴木花子は、今や各国から注目される神饌調理術師となっていた。


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