戦闘開始、私のチュートリアル!
ツクヨミと共に、私はこの大地に降り立った。
眼の前には草原、少し遠くには街のようなものが確認できる。
辺り一面に広がった草たちに紛れて、ところどころにモンスターの姿もあるようだ。気をつけないとね。
美しい景色もあるし、遠くでプレイヤーが戦っているのまで見えた。
五感を完全再現したこのゲームらしく、私の鼻腔には青い草の匂いが届けられる。
いやー、実に良い!五感もさることながら、このツクヨミのモフモフ感も最高!
事前に下調べした情報によると、このマップの名は『初心の大草原』と言うらしく、弱いモンスターしか出てこないらしい。
出てくるモンスターは、『ホーンラビット』、『フットラット』、『ミニエアバード』などの基本的にレベルも低く、スキルもあまり強くないモンスターばかりのようだ。
チュートリアルにバッチリってことだね。
『チュートリアルを始めます』
システムウィンドウと機械音声が開始を告げる。
最初に学ぶのは、武器などの使い方だ。ゲームとして、成り立つために武器による攻撃はアシストが付き、いつでもオンオフを切り替えることができるということ。遠距離武器などは命中率に少し補正がかかるみたいだ。
次は戦闘訓練。眼の前には白い角の生えたウサギがいる。情報通りならこれがホーンラビットだろう。
なにこれ!?めっちゃ可愛いんだけど!こんなの倒せない!
心ではそう言いながら、私はアイテムボックスから初期武器を取り出す。
プレイヤーに備わっている特性の『解析鑑定』を発動する。
『解析鑑定』は基本的な事象を調べることができる優秀な特性だよ。
事前情報で一通りは知ってるけど、自分の目で確かめないとね!
△△△△△△△
【初心の剣】
推奨 Lv1以上
魔力密度 低
属性 無し
レベル 1/100
耐久値 100/100
性能 STR +20
スキル 無し
説明 異邦人に最初に与えられる剣。持ち主と共に成長する力を持つ。
△△△△△△△
【初心の盾】
推奨レベル Lv1以上
魔力密度 低
属性 無し
レベル 1/100
耐久値 170/170
性能 VIT +30
スキル 無し
説明 異邦人に与えられる盾。持ち主と共に成長する力を持つ。
△△△△△△△
【初心の杖】
推奨レベル Lv1以上
魔力密度 低
属性 無し
レベル 1/100
耐久値 70/70
性能 INT +15
スキル 無し
説明 異邦人に与えられる杖。持ち主と共に成長する力を持つ。
△△△△△△△
まぁ、悪くはないって感じだね。盾の+30が結構ありがたいけどね。私、紙装甲だし。
戦うならまず剣術からかな。ウサギを叩き切ってやるわぁ!!フハハハ!!
呆れたような雰囲気を出しながらツクヨミが話しかけてくる。
「その顔はどうにもならんのか?悪魔みたいな顔しているぞ、ミストよ。」
「おっと、本性が出てしまう。クールダウンしないとね。」
一度深呼吸をして、ウサギを見詰める。絶対に逃がすまいと強い感情を込めて見詰める。
心做しか、ウサギが後退りをしているようにも見えるね。私に恐れおののいているみたいだ。
だけど、逃がすわけ無いでしょ。緩やかな動きで剣と盾を構えて、ウサギに向かい走り出す。
狙いはもちろん、クリティカルヒット!
「死に晒せぇぇぇ!!!」
「キュイッ!?」
私の口から出たとてつもない罵倒に、ウサギの動きが止まった。
大きい隙を晒したウサギに向かって【初心の剣】を振る。
理想的な軌道を描き、ウサギの頭部に刃が命中した。腕にかかる強い衝撃と共に、ウサギが吹っ飛んでいく。このゲームの要素『クリティカル』が発動した証拠だ。
このゲームのクリティカルは、自身の思っていた軌道で攻撃が当たる。もしくは急所である『頭部』や『首』などにヒットすると発生する。効果はクリティカルが発生した攻撃の威力が1.6倍になる。
武術の達人からしたら夢みたいな要素だ、と話題になったりもした。
プレイヤースキルが高いとめっちゃ強いんだよね、このゲーム。
吹っ飛んだウサギが起き上がる瞬間に刃を突き刺す。
「キュイァァァ………」
弱点である首の部分に突き刺したことで、ウサギはポリゴンとなって消滅した。
同時に、私に対してインフォが鳴り響く。
『ホーンラビットを討伐しました。レベルがアップしました。SPを10、SUPを15取得しました。只今の戦闘経験により、スキル『威圧Lv1』を取得しました。更に、『剣術Lv1』が『剣術Lv2』に進化しました。』
そうして、私の初戦闘は勝利で終わった。