命名!我がパートナー!
心の中でツッコミを入れた後、深呼吸をして心を落ち着かせる。
ふぅ……。冷静になれ、私。こういうのは焦ったほうが損をするんだ。
三十秒ほど深呼吸をすると、次第に意識が冷静になってきた。
気を取り直して、デルタさんに話しかける。
「一旦、その『正義の大魔獣』さんと会わせてもらえませんかね?」
『構いませんよ。ではここに召喚します』
流石にキャラメイクでこれは厳しいかな?と思ったが意外になんとかなるようだ。
金髪の美女であるデルタさんが右手を振るうと、幾層にも重なる魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣が煌めき、徐々に何かが召喚され始めた。
光を飲み込むような漆黒の、それでいて艶のある毛皮を持った何かが魔法陣の上に立っていた。
同じく漆黒の爪を持つ四脚がしっかりと大地を踏みしめている。
ようやく見えた顔は凛々しく、勇ましさも併せ持つネコ科の顔だった。
爛々と輝く金の瞳は、獲物を今か今かと待ちわびているようにも見える。
現実に居るもので例えたら黒豹が一番近いかもしれない。黒豹と違う点は、はく吐息が真っ黒で、更に簡易的な刀を持ってることぐらいかな?
簡潔にまとめると、めっちゃかっこいい黒豹。
黒豹さんはゆっくりと私の前に立ち、口を開いた。
「君が、私のパートナーか?」
物凄いダンディな声で、黒豹さんは私に頭を寄せた。
可愛いんだけどさ、一回だけやらせて欲しい。
キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!
落ち着きました。もう大丈夫。
とにかく、会話を繋げるために私も口を開く。
「そうだよ。これからよろしくね」
頭を優しく撫でると、トロンとした目つきになって、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
ちょろいね、この子。私のテクニックに堕ちてしまったみたいだね。
お腹も見せてきたので、自前のテクニックで優しく撫でる。再びゴロゴロと喉を鳴らし、完全にこの子は私に堕ちた表情になる。
しばらく撫でた後、ハッとした表情で黒豹さんは立ち上がった。
「コホン。私のステータスを確認してくれ。」
そう言って、黒豹さんはウィンドウを開いて画面を見せてきた。
黒豹さん、ウィンドウ開けるんだ……
普通のモンスターは開けないから、パートナーが見るしかないんだけど。
細かいことは、いっか。
そんな黒豹さんのステータスがこちら。
『ステータス』
名 無し Lv17
二つ名 【儚き英傑】
種族 『正義の大魔獣』
HP 426/426
MP 350/350
STR 218 VIT 127 AGI 271
INT 173 DEX 128 MND 182
LUK 37 SUP 0 SP 17
種族スキル 『正義の恩寵』
ユニークスキル 『微睡みの霧Lv2』
パッシブスキル 『神聖の誓いLv1』『闇の誓いLv2』『剣術Lv1』『神聖の加護Lv1』『闇の加護Lv1』『月光の誓いLv1』『魔力耐性Lv1』『牙闘術Lv1』
アクティブスキル 『闇魔導Lv4』『神聖魔導Lv3』『月光魔導Lv2』『広域探知Lv1』『正義の剣Lv3』『魔獣の咆哮Lv6』『威圧Lv1』『吸命領域Lv2』『聖域構築Lv1』『噛み砕くLv2』『暗黒牙爪Lv2』『隠蔽Lv1』『気配遮断Lv1』
魔導 『闇魔導:ダーク』『闇魔導:シャドウアロー』『闇魔導:ポイズン』『闇魔導:パラライズ』『闇魔導:シャドーボール』『神聖魔導:ホーリー』『神聖魔導:ホーリアロー』『神聖魔導:ホーリーベル』
『月光魔導:ムーンフォース』『月光魔導:ムーンパワー』
強すぎない?
いくらプレイヤーよりもモンスターのほうが強い仕様だとしてもめっちゃ強いじゃん。
AGI200超えは運営の調整ミスでしょ。ほとんどのプレイヤー追い越せちゃうよ。
横を見ると、凄いでしょ、褒めて!と言わんばかりに目を輝かせた猫が一匹居ます。
頭を撫でて、褒めておくと、満面の笑みを浮かべて寝転んだ。可愛い。
その前に、私は重大なことをしておく。
「君に名前を上げなきゃね。」
「そうだな、我がパートナーよ。」
「取り繕っても無駄だからね」
威厳に満ちた声を出している黒豹さんだが、先程までを見ているので難なくスルーする。
この子の名前は会ったときから決めている。
夜空のような毛皮に、月のように美しい金の瞳だから、
「君の名前はツクヨミだ。よろしくね、ツクヨミ。」
「良き名をありがとう。ミストよ。」
「どういたしまして」
キャラメイクも終わり、私達は新たな世界に飛び出す。
次回から初期マップに行きます。