美人からのお願い
街に戻った後、私達はゲーム内の喫茶店で語り合っていた。
私を呼び止めたプレイヤーは『エルゼ』さんと言い、つい最近このゲームを始めたんだって。
「ほうほう、それで私に一体何をしてほしいのかね?」
「えっと、そのー……」
話の内容を問い詰めると、エルゼさんは気まずそうに下を向く。
そこで黙られると余計に気になっちゃうよ。
「私に、ゲームを教えてほしいの!」
意を決したように彼女は叫ぶ。
割と大きな声量だったので、周囲のプレイヤーの視線も同時に集めてしまった。
叫んでから、エルゼさんは気付いたのか顔を真っ赤にして震えている。
やっぱりかわいいなこの人。でも、ゲームを教えてほしいってどういう事?
「エルゼさん、私は何を教えればいい?魔導?それとも武術?」
言外に了承の意を示すと、彼女は満面の笑みで答えた。
更に問いかけに対する言葉は、『戦闘』らしい。技術に執着をみせずに、勝利だけを掴みたいと。
彼女の目はその心情を雄弁に語っていた。
「戦闘を教えるってなるとね、実践とか見て決めないといけないしなー。」
独り言を漏らし、彼女の方を見る。
戦闘を教えてほしい。簡単に言うものだが、ここはVR。現実世界でも体を動かせないと結構難しい。
しかもゲームの時間を合わせるのも格段に難しい。そして私はそれなりに配信者なのだ。
ライブ配信もある。そこで私は一つの案を思いつく。彼女を私の配信に引き込もう!
「エルゼさんはさ、配信とか見たりする?」
「………うーん、色んな人のをちまちま見るくらいね。」
まずは当たり障りのない質問。
ここから私の案をどう示すかだ。
喋ってみた感じ、人見知りの気質が少しあるみたいだね。
さっきの叫びとかを見ても反応とか、視聴者の視線は掴みやすい。おまけに美人。
なら配信者として一緒に出れば問題はない。
「エルゼさん。交換条件になっちゃうんだけどいい?」
「もちろん。お願いしたのはこっちだもの」
なんと交換条件は了承。良識のあるプレイヤーだったようだ。
お礼はする人でよかった。
「じゃあ私の配信に一緒に出てくれない?」
「え?」
条件を言った瞬間、彼女の口がポカンと開き、放心状態に陥った。
マズったかな?と思ったのも束の間、衝撃の答えが飛び出る。
「―――――そんなのでいいの?もっとリアルで会おうとか言われると思ったわ」
流石にそこまでクズちゃうわ!
謎に出た関西弁を口に出しかけたのを気合で抑え、私は彼女に手を差し出す。
「じゃあ、これから宜しく!エルゼさん!」
「こちらこそよろしくお願いするわ。」
固く手を取り合い、私達は店を出た。
この先にどんな苦難が待ち受けているかを、私はまだ知らない。




