救済と黒夜
「行くぞ!」
大地を割るほどの勢いで私はヴァルラプスに突撃する。
付喪神を手にした私はサイキョームテキ!何でもできると思う!
戦闘中の高揚感も相まって、若干ハイってやつだぁ!
接近してきた私に気づいたヴァルラプスが叫ぶ。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
「威勢がいいねぇ!!フハハハ!!」
ヴァルラプスが咥えている大剣を振り回し、接近させまいと暴れ出す。
私のHPは一割以下。攻撃を喰らえば一撃で死ぬ。
それをわかっているからこその大暴れ、冷静さを保ってやがる。
やっぱりボスレベルになるとAIが桁違いだねぇ。
「距離を取らせないなら、魔導を使えばいいじゃない」
『略式詠唱』を使用し、瞬時に魔導を発動する。
使いすぎて『烈風魔導』のレベルがマックスだからね、高火力の魔導を叩き込んでやるぜ
大振りの攻撃を回避し、その瞬間に魔導を打ち込む。
「ハッ!大振りなんだよ!『トルネードランス』!」
突き出した右腕に魔力が収束し、竜巻を引き起こす。
暴風の大槍がヴァルラプスに向かって直進し、彼の体をえぐり取りながら飛翔した。
苦しそうにうめき声を上げるヴァルラプスを尻目に、『魔力支配』を起動する。
飛んでいった『トルネードランス』を引き寄せ、再び彼の巨躯に突き刺す。
二度の刺突はヴァルラプスの体制を崩すのに十分だった。
崩すのと同時に踏み込み、付喪神の力を使う。
MPの関係上、使えるのはカスみたいな1%にも満たない能力。
「『炎蛇の黒剣』』!!」
付喪神に一時的な名を与えることで能力の方向性を指定する。
私がこの娘に与えた初期能力は『変容』と『死』。死はそのまま武器としての強度、能力の規模上昇をメインとした補助用につけている。『変容』こそが付喪神としての本質。
あらゆる物を模倣し、力に変えて殺す。私の知的探求心を満たしながら、攻撃もできる。
なんと素晴らしい。大好きよ!
黄泉を思わせる大太刀は、炎でその身を隠して揺らめく。
「『大いなる風、断罪の標、英雄の礎となりて大地を駆けよ』!『ソニックブースト』!」
足元に敏捷強化の魔導を仕込み、追加でスキルによるバフ、ツクヨミからの援護バフも合わせてヴァルラプスに刃を向ける。
ヴァルラプスも大剣に魔力を集め、独自の魔術を使い黒炎を纏っていた。
互いに最高火力をぶつけ合う。残りのMPも少なく、私達の勝機はコレしかない。
『炎蛇の黒剣』の炎を切先に集中させ、攻撃力を極端に上昇させる。
「ヴァルラプス!」
私は魔力を収束させながら彼に呼びかける。
戦いの最中、呼ばれるとは思っていなかったのか驚愕の瞳でこちらを覗く。
最後の一撃の前にどうしても言いたかったこと。
「楽しもう!」
俺も同じ気持ちだ、と言わんばかりに彼の近くの大気が震える。
溢れ出る笑みを抑えきれず、喉から笑い声が漏れた。
――――――――じゃあやるか。ヴァルラプス。
勝負は一瞬。
集中力が極限に至った刹那、私は轟音を響かせて前進。
ヴァルラプスも同じく迎え撃つために前進した。
彼も、私も互いに全力を出した殺し合い。
私にとって得たものは大きかった。
なんて思いを馳せながら、私は腹から溢れ出る内臓を見つめる。
モロに食らったなぁ。痛すぎ……
痛覚制限アラートが爆音を鳴らして警告する。
リアル世界の私に影響が出るほどの激痛らしいね。
無粋なアラートを無視して、ヴァルラプスの方を向く。
そして、語りかける。
「なぁ……ゲホッ……ヴァルラプス。最期に楽しめたか?」
首を刎ねられ、今は動かないヴァルラプスが笑っていた。
私も、最高に楽しかったぞ!
「じゃあね………英雄!」
その言葉を最後に、私は警告による強制ログアウトを食らった。
過去は晴らされ、死を拒む獣は朽ち果てた。
彼が望んだのは決闘であり、死であり、友人であった。
禁忌の夜よ、今はまだ眠るがよい。




