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女神の権能


夜の草原に閃光が走る。

金属音は常に鳴り止まず、時に罵声さえ聞こえてしまう。

恐ろしい夜には終わりは来ない。


「なんてな!!!夜は明けるもんだ!『断ち切れ』!『ウィンドエッジ』!」


暴れまくるヴァルラプスに向かって風の刃を放つ。

言霊で切断力を上昇させ、彼の右前足を両断する。

片足を失ったことでバランスが取れなくなったヴァルラプスは特殊ダウン。

そこにツクヨミとフルボッコタイムってワケ。


「ツクヨミ!全力で攻撃しろ!」

「心得た!『悪意なき暴虐、生命の大罪、月光の威を聖杯に捧げ給え』」


ツクヨミが距離を取って詠唱を開始する。

しかも超長いみたいで時間を稼げとアイコンタクトを受けた。


「『邪悪なる慈愛、死染の美徳、太陽の恵みを聖骸に埋めよ』」

「長すぎだろ!ダウン終わるって!?」


ヴァルラプスの方を見ると切り落とした足が修復し始めている。あと数秒もすれば立ち上がるだろう。

まだ掛かりそうなので、ここからはタイマンでバトルだ。やってやんよ。

魔術師の本領見せてやる。


「ベストなタイミングまで抑えててね!ツクヨミ!」

「『月光よ、陽光よ、交わらぬ光、聖戦の開幕を告げる標となるがいい』


合図を叫び、ツクヨミが頷いたのを見てからヴァルラプスに肉薄する。

【屍月】を抜き放ち、切り上げ、振り下ろし、袈裟斬り、回転斬りのコンボに繋げた後、居合の構えを取る。

ヴァルラプスが立ち上がり、天に向かって高らかに吠えた。

その瞬間に抜刀しスキルを使う。


「『抜刀・月虹流水』!!!」


魔力を持つもの、持たぬものも全て関係無しにパリィする抜刀術スキル。

本来できないはずの魔導や咆哮を無効化する事ができるので非常にすばらしい。マジで大好き。

だからこの子はお気に入りなんだよね。

その後もずっとパリィしては反撃するの繰り返しで、めっちゃ時間をかけて削ってる。

何度削ったかわからない頃、不意にチャンスは訪れた。

ヴァルラプスが疲労ダウンを起こし、その場に倒れ込む。

数秒の好機。最高のタイミングだ!


「撃つぞ!【処刑せよ(エクスキューション)月神の聖槍(ヘカーティア)】!!!」


ツクヨミが叫び、ヴァルラプスの頭上に超巨大な魔法陣が出現する。

超精密に編み込まれた魔法陣から白く、母のような安心感をもたらす槍と女性の手がゆっくりと姿を見せた。

まさしく【神】。人ならざるものがこの場に顕現する。

威圧感は『魔神』共と同格。もしくはそれ以上。

こんな隠し玉をもってたんだね、あいつ。ステータスとかしっかり見ときゃ良かった。

槍は至って穏やかにヴァルラプスの体に向かって進み、突き刺す。

しかし彼は苦しみの声を上げずに、眠るように死を迎えた。


「――――――――って、そんな甘くないよね。」

「馬鹿な!?女神の力を借りたんだぞ!?」

「はいはい。落ち着きなさいな、今焦っても意味ないでしょ」


ツクヨミがありえないといった表情で吠える。

結構真面目にあの力なら殺せたんだろうね。

でもさぁ、ボスだよ?即死対策なんてしてるでしょ。

眼の前には首に刺さっていた大剣を口に咥え、闘志を込めた視線を送るヴァルラプスが佇んでいた。


「は!やるじゃないの!『精霊の末裔、ミストの名において世界に求める。』」


こうなったら私も奥の手を使う。ツクヨミばっかにいいところを見せたくない。

ということで、『言霊支配』をフルに活用してバフを掛けながら攻撃します。


「『黎明を夜で閉ざし、星空を昼で塗り潰す、死流の女神よ。天を血肉で満たせ、地を汚濁で洗い流せ。死よ!愛しき楽園に絶望を!紛争と慟哭を求める断罪と節制の王よ!我らが世界を塗り替え!尊き神の汚れた楽園へと至らせよ!』」


詠唱完了後に祈るように手を叩く。根源から魔力を7割抽出し、全て術式と世界への干渉に充てる。

ツクヨミがやってみせたように、神を呼び出す。ただ私はそのやり方に検討もつかないので、擬似的に神を作る。

まず土台。この場に存在するアイテム素材を全て注ぎ込み素体を作る。

コンセプトは付喪神。武器を神に届かせる『神殺し』の剣。

次に術式の埋め込み。これは普通に世界に申請したワードから刻まれていってるから省略。

エルフの種族特性で精霊を媒介にすると魔力を使った申請が届きやすくなるんだよね。

最後に名をつけると完成だ。


「『死川よ永遠であれ(ブルートローネ)』」


名を告げた瞬間。エリアが塗り替わった。

水のせせらぎが聞こえ、周囲には彼岸花が狂い咲いている。

死者の国、黄泉を思わせるような世界にヴァルラプスと私も驚きを隠せない。

ツクヨミはドン引きでこっちを見てる。よせやい、照れるだろ。

そして手元には一振りの長刀。緋色を基調とし、黒い薔薇の紋章が描かれている。

存在してはならぬ禁忌の刃。死を呼び、生を与える冥界の神を想起させていた。


困惑しているヴァルラプスを無視し、私は刀身を握りしめ自分の手を引き裂く。

今からは所有者として私を認めさせる。なけなしの魔力を注ぎ込んで、この子の魂に持ち主として名を刻む。そこに言霊を使い定着させた。


「付喪神、ゲットだぜ!」


禁忌の夜はいまだ開けず、死を拒む者に過去はない。

過去の無き者に未来は訪れぬ。

勝者はどちらになるのだろうか。




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