苦痛と月光
「かかってきなよ!ヴァルラプス!」
大声で煽り散らかしながら私は地面を駆け抜ける。
そうそう!長らく感じていなかったこのスリルがたまらない。
現在はツクヨミがメインアタッカーをしてくれているので、私は時々攻撃しながらバフをかけるくらいしかやることがないんだよね。
「『風よ、刃となりて敵を裂け』!『エアブレイド』!」
大鎌を振り抜き、風で構成された刃を射出する。
MPを200込めたので、暴風とも言い換えれるほどの風刃がヴァルラプスの頭部に直撃した。
烈風魔導を使いすぎてスキルがどんどん更新されていくね。コレだからボス戦は(褒め言葉)
魔導による大ダメージで、ヴァルラプスは大きく怯んでしまった。
その隙を見逃すほどツクヨミは甘くなく、『月光魔導』を込めた爪を振り下ろす。
「ナイスヒット!まだまだ行くよ!『其は暴虐なる真言。万象の摂理を喚び起こし、彼の者に聖なる祝福を』!『強化魔導:オールアシスト』!」
攻撃後にバフが切れたツクヨミに対して再びバフを掛け直す。
『厄災の根源』は最高だね、MP消費だけなら何も気にしなくていい。
ヴァルラプスが思ったより硬いので、あいつにデバフを掛ける準備をする。
アイテムボックスから青色の宝石を取り出して、『言霊』を使う。
「『汝、美しき者。汝、醜き者。相反する摂理のもとに、汚れた世を書き換えよ』」
唱え終わると同時に宝石を砕く。
あーあ、使っちゃった。これ高かったんだよ?
アイテム名『死人の涙』。アンデッド系モンスターから極稀にドロップする青色の宝石。
霊魂が封じ込められており、迂闊に触れると呪い殺されるだろう。っていうアイテム。
本来なら合成素材なんだけど、『言霊』を使って中の霊魂の力を拝借。
呪いの対象をヴァルラプスにして、砕いた『死人の涙』から飛び出した霊魂を向かわせる。
眼にも止まらぬスピードで飛翔した魂が彼の体内へと侵入した。
途端にヴァルラプスは絶叫して大ダウンが起きる。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
「ハッハッハ!!ねぇ今どんな気持ち!?ねぇ!!ふひゃひゃひゃひゃ」
「鬼か?貴様は」
悪魔のような笑い声を出しながら大鎌で狼を切り続ける美少女は誰か。そう私です。
ツクヨミから呆れたような、諦めたような目を向けられているが気にしない。
大鎌を二度、三度と振り下ろすごとに目に見えてヴァルラプスの表情が歪んでいく。
【偽苦の鳥籠】はただ鎧にするだけの魔術じゃない。私の趣味嗜好を大量に込めた嫌がらせの魔術だ。
私に攻撃を当てれば私自身のMPを消費して自動で魔力によるカウンター。
私が攻撃すれば相手に【激痛】の状態異常と相手に有効な状態異常をランダムで2つ与える。
つまりダメージを与えるごとに苦痛と状態異常が蓄積される。見事に嫌がらせのセットだ。
相手がダメージを与えてもカウンターによる強制蓄積が待っている。
我ながらすばらしい。
この魔術の効果をツクヨミに教えたらドン引きされたよ!なんでや!!
「別の武器も出すか。【屍月】」
【偽苦の鳥籠】の大鎌を鎧に再構成し、そこから更に軽装へと変化させる。
こいつもお気に入りの一つなんだよねー。使いやすいし何よりコスパがいい。
毒々しい紫色の刀身と、同じカラーの帯がついたシンプルなデザインの日本刀を取り出す。
制作に丸3日かけた傑作だよ。コスパがいいのはスキルのほうね。こいつは魔術持ってないから。
実験台になってくれよ?ヴァルラプス助手。まだまだ試したいのはいっぱいあるんだ。
にっこり笑いながらヴァルラプスに向かって連撃を叩き込む。
止め処無い狂気がヴァルラプスに迫る。夜はまだ、終わらない。




