パスワード
大切なパスワードを、忘れてしまった。
メモを残しておかなかったのは、失敗だった。
どうせメモを取ったところで失くすのだと、変に妥協したのが間違いだった。
難しいパスワードにしてしまったのは、失敗だった。
簡単なものにして誰かにバレたらヤバいと、用心しすぎたのが間違いだった。
パスワードを、入力限度数の15桁で設定したことは覚えている。
数字のみで設定したことも覚えている。
同じ数字の連続が無いよう、設定したはずだと、思う。
自分の中にある記憶を頼りに、パスワードを入力し続けてきた。
ヒントぐらい出してくれてもいいのに、ログインシステムはシビアに『パスワードが違います』と返してくる。
惜しかったら教えてくれればいいのに、ログインシステムはいつも通りに『パスワードが違います』と表示をする。
いつまでたっても、ログインするためのパスワードが…見つからない。
もう、これで…、何回目のパスワード入力だろう。
24時間フル稼働で入力し続けているのに、一向にログインできないままだ。
何度も、何度も…パスワードを入力してきた。
1分に1回。
1時間に60回。
1日に1440回。
1週間に10080回。
1ヶ月に302400回。
1年に110376000回。
途方もなく長い間…、地道にパスワードを入力し続けてきた。
もう…、何年、経っただろう?
ただただ入力をしているだけで、信じられないくらい歴史が刻まれてしまった。
まさか、パスワード不明が原因で…700万年以上も過ぎてしまうとは思いもしなかった。
取り返しのつかない遺産まで出現してしまって、完全に手に負えなくなっている。
今さら…立て直すことは、できない。
もう何をしても…取り戻せない。
一刻も早く、自分の設定したパスワードに辿り着いて、リセットをしなければならないというのに。
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「パスワードが違います」
「ログインに成功しました」
ああ、…ああ。
…ようやく、だ。
こ れ で