第6話 ギルドにて
ルーカスさんと出会った次の日、私は言われた通り10時頃にギルドへ向かった。
『冒険者ギルド』と書かれた看板が見えた。この大きな建物が冒険者ギルドか。何階建てなんだろう。両開きのドアを開け、ギルドの中に入る。ルーカスさんの言う通り、中にいる人達は少なく、私の事は目に入っていないようだった。私は特に注目されることも無く、受付へ向かう。
「本日はどの様な用件でしょうか」
「あの、ギルドに登録したいんですけど」
「登録申込みですね。それでは、こちらの用紙に必要事項を書いてください」
そう言われて渡された用紙には、名前、生年月日など、個人情報を書く欄と、簡単な質問のようなことが書いてある欄に別れている。
私は個人情報を書く欄の最後で手が止まる。『属性』というものを書く欄っぽいけど、何を書くのか分からない。うん、こういう時はちゃんとした人に聞くのが一番だよね。
「すみません、この『属性』っていう欄って何を書いたらいいのか分からないんですけど」
「そちらの欄には、ご自分が使うことの出来る魔法の属性を書いてください」
「その、使える魔法の属性が分からないんですけど」
「そうでしたか。では、こちらの魔力感知器に手を触れてください」
私は言われた通り、カウンターに置かれた魔力感知器という名前がついた石板のようなものに右手を当てる。すると、その石板が6色に輝き出す。ってか眩しすぎない?石板の方に視線を移せないんだけど。私は石板に当てている右手の力を抜く。すると、光も落ち着いた感じになった。
「!?……ちょっと待っていてください」
受付の人は言い残すと、奥の方へ走っていった。私まだ何もしてないよー?
少しして、受付の人が戻ってきた。
「あの、奥の部屋に同行してもらってもいいですか?」
「はい、いいですけど」
「ありがとうございます。それでは、こちらの方へ」
私は受付の人についていきながら、考える。私、本っ当に何もしてないと思うんだけど。
「それでは、こちらの部屋の中へ入ってお待ちください」
心なしか受付の人の目が死んでいた気がした。私が中に入ると、部屋に向かい合うように置かれたソファーの片方に、一人の男性が座っていた。
「よく来たな。まず、そこに座ってくれ」
私はとりあえず言われた通りもう片方のソファーに座る。
「まず、自己紹介からだな。俺はグラン。ここのギルドマスターをしている。それで、モミジ、何でここに呼んだか分かるか?」
「いえ、全くもって心当たりがないです」
「そうか、だったら今から少し説明する。まず、なんでここに呼んだかだが、簡単に言えば、モミジ、お前さんが全属性使い、すなわち、火、水、風、氷、光、闇の全ての属性を持っているからだ。そして、俺の知る限り、全属性使いが出たのは、確か100年程前、この世界を救ったとされる勇者ただ一人だ」
えーと、つまり私はその勇者と同じ全属性使いってこと?神様、何異世界テンプレチート付けちゃってんの!?こんなのぜったい何かあるって…。
「その顔は驚いたって感じだな。ただ驚くのはこれだけじゃないぜ。お前さんにはこの街の領主、レワール・アクリス侯爵に会って貰う」
え、今なんていった?この街の領主に会って貰う?しかも侯爵?確か侯爵って公爵の次くらいに高い地位だったはず。会うときに何かやらかしたら終わるな。絶対。
「それで、都合の良い日を聞いておきたいんだが、いつがいい?」
「えーと、この街を色々見て回りたいので、2週間ぐらい後ならいつでも」
「分かった。その辺りで調整しておく。あと、そんなに身構えなくても良いと思うぞ。あのお方は多少何かしたって何も気にしてないからな。それじゃ、このくらいで俺の話は終わりだ。あと、何か聞きたいことはあるか?」
「あ、あの、私魔法使ったこと無くて使い方が分からないんですけど」
「それなら、俺の知り合いに腕の良い魔法使いがいるから、話を付けておくから。そうだな、明日の今日と同じ時間ぐらいにギルドに来てくれ」
「あ、ありがとうございます」
「おう、それじゃ、もう戻って良いぞ」
何だかめっちゃ疲れたな。えーと、今の時間は、11時半か。ちょうど良いな。それじゃ、午後からは薬草探しを頑張りますか。