第14話 Bランクの魔法使い
今回はリーナさん視点です!あと、いつもよりだいぶ長くなってます。
私は街から少し離れた場所にある自分の家で寝ていた。すると、
『緊急警報、スタンピードの兆候が見られました。予想開始時刻は2時半、2時半。冒険者の方々は直ちにギルドの方へ集合してください。繰り返します』
そんな放送がサイレンと共に聞こえてきた。私は急いでいつもの格好へ着替え、ギルドへ向かう。
それにしても、スタンピード、か。ここ最近兆候は無かったはずなんだけどな。そういえば、あいつと初めて会ったのもスタンピードの時だったけな。あいつもあの時はまだまだ子供だったな。今じゃ、立派に仕事をこなしてるし。本当、人って何が起こるか分からないもんだね。
私がギルドの中に入ると、もう結構な人数が集まっていた。中には、私に挨拶をしてくる冒険者もいた。私も有名になったな。その時、人垣を掻き分けてこっちへ来る人影が見えた。
「あ、リーナさん!もう来てたんですね!」
「ええ、私も丁度今来たところだけどね、モミジちゃん。ほら、ちゃんと話を聞いておきなさい。話を聞いていなくて死んだ人だっているんだから」
私がそういうと、モミジちゃんは素直に話している人の方向を向く。うん、素直なのは良いことだね。
「リーナさん、スタンピード、って何なんですか?」
受付の人の話が終わると、モミジちゃんがそんなことを聞いてきた。私はモミジちゃんがスタンピードを知らないことに驚いたが、
「えっとね、簡単に説明するとしたら魔物の大移動、ってところかしら」
「魔物の大移動、ですか?」
「ええ。今回はその進路にここがぶつかったって感じかな」
私が丁度話し終わると、また受付の人が説明し始めた。
「今回のスタンピードでは、2手に別れてもらい、交代しながら防衛していただくこととなります。ですので、今から配る紙に書かれている数字で、グループ1とグループ2に分かれてもらいます」
配られた紙には、『2』と書かれていた。どうやら、モミジちゃんもグループ2になったようだ。
「期待してるわね、モミジちゃん」
「は、はい!頑張ります!」
ギルドから東門へ移動し、始めに防衛する人達が準備をし始めたころ、私たちは門から少し離れた場所に用意された休憩部屋で各々休憩や準備をしていた。
そろそろ交代の時間になると思ったとき、門のほうから物凄い爆発音が聞こえた。
私は真っ先に門に向かおうとしたが、
「ちょっと待て」
関わりが疎遠になってから聞いてなかった、だけど最近はあの子のお陰でよく聞いている声がした。
「何よ、グラン」
「お前、今門の方に行こうとしてただろ」
「それがどうしたって言うのよ」
「ここからでもあの大きさの爆発音だ。門にいる奴らの生死は分かっているだろう?」
「でも、もしかしたら、」
「生き残っている奴がいるかもしれない、ってか。確かにいるかもしれない、けど、よく考えてくれ、あの爆発から仮に逃れたとしても、門は確実に壊れ、魔物が大量になだれ込んでくる。そんな状況で生き残れる奴はいる方が珍しい」
「……確かに、そうかもしれないわね」
「それで、だ。今から住人をここから反対側の街の方に避難させる。その護衛として残っている冒険者をつける。お前には、冒険者の統率をとってもらいたい」
「ええ、分かったわ」
「それじゃ、俺は今からこの建物にいる全員にこれからの事を伝える。お前は一足先に集合場所に向かってくれ」
私はグランの言う通り、冒険者達が集まる集合場所へ走った。
5分後、集まった冒険者達の前に立ち、グランに別れ際に言われた言葉を思いだしながら、言葉を紡いでいく。
「あなた達をここに集めたのは他でもない、アクリスの住民達を護るためです。あなた達も聞こえたと思いますが、門の方で大きな爆発が起きました。恐らく、門は大破し、魔物が大量に入り込んで来ているでしょう。そこで、あなた達には住民の隣街への避難の護衛をしてもらいます。住民達は今ごろ、ギルドマスターの指示で集まっていると思います。私はそこまで案内するので、一人5人程連れて隣街への避難の護衛をお願いします」
私はそう言い切ると、すぐ住民達を集めている場所へと向かう。
それからは順調に避難が進んでいた。ただ、私はここまで一切モミジちゃんの姿を見ていないことに気付かないほど鈍感では無かった。既に避難活動を初めてから30分が経過していた。もう私がいなくても避難活動に影響は無さそうだったので、私は門の方へ走っていった。
「…いない…」
待機場所になっていた建物の隅々まで探したが、モミジちゃんの姿は無かった。まさか、と思い、私は門の方へ向かう。
門があったであろう場所には、代わりに、魔物の影と、一人で戦う少女の影があった。
「モミジちゃん、何でここにいるの!?グランの話は聞いたでしょう!?ここから避難するって!モミジちゃん、早くここから逃げるわよ!」
私は急いで声をかけた。後ろ姿しか見えていない彼女から返ってきたのは、意外な声だった。
「リーナさん、ここに私たち以外に人はいますか?」
「ええ、いないけれど…」
「そうですか、分かりました」
私は今から彼女が何をしようとしているのか分からなかった。次の瞬間だった。魔物が一気に消えた。私は何が起きたのか分からなかった。私が今の現象を起こしたのがモミジちゃんだと認識したと同時に、辛うじて残っていた門の一部が崩れる音がした。
「オーク…キング…」
私は今モミジちゃんが呟いた言葉に、耳を疑った。オークキング、とは、オークの最上位種のことだ。そんな奴、この辺りの森では出てこないはずなのに、どうして。
「モミジちゃん、早く、逃げて!!」
私はありったけの声で叫んだ。叫ばずにはいられなかった。オークキングの強さはBランクパーティでようやく倒せると言われている。いくらモミジちゃんが全属性使いだとしても、まだ彼女は冒険者になって1か月しかたっていない。到底勝てる訳がない。
私の声を聞いたモミジちゃんは、こちらへ来ようとする。が、途中で足を止める。そして、何を思ったのか彼女は、
「リーナさん、私はここに残ります。なので、リーナさんは早く逃げて下さい。他の逃げた方も、貴女がいれば安心すると思うので」
そんなことを言った。何で、と口に出そうとしたが、彼女の顔を見て、気持ちが変わった。彼女は、覚悟を決めた顔をしていた。私は、この顔をしている人には何を言っても無駄だということを知っている。
「…っ、絶対に、生きて帰ってきてよ!」
「もちろんです。私もまだまだやりたいことがありますし。絶対に負けたりなんかしませんよ」
彼女との会話はこれが最後になるかもしれない、そう思ったが、彼女の思いを受け取り、私は避難所へと向かっていった。
私が住宅街を走り抜けていると、一軒の家が目に留まる。何よりもその家の玄関は、オークに囲まれていた。私はすぐさま攻撃の姿勢をとり、
「ヘルフレア!!」
上級火属性魔法を放つ。オーク達は一撃で倒れ、動かなくなる。私は更に炎魔法を使い、オークの死体を燃やす。ようやく見えた玄関の中には、一人の女の子が倒れていた。まだ傷は浅く、出血も少量だった。私はとりあえず、回復しておくことにした。
「オメガヒール」
私が中級光属性魔法の回復系魔法をかけると、傷はすぐに塞がった。後は目を覚ますのを待つだけだ。
少し経って、彼女が目を覚まし、私と目が合うと、
「…あなたは、誰?」
「私はリーナ。魔法使い。さっきここを通り掛かったから、貴女を襲ったオーク共は片付けておいたわ。それで、貴女の名前は?」
「わ、私は、カノン、です」
「じゃあ、カノンちゃん、起きたばっかりで申し訳ないけど、何で避難しないでここに残ってたか教えてくれる?」
「私の妹が、急に倒れて、一人じゃ運べなくて…」
「そういう事なら任せて。私が背負うから。それじゃ、私と一緒に避難所まで行こっか」
私はカノンちゃんの妹を背負い、避難所へカノンちゃんと向かう。
「あの、どうしてそこまでしてくれるんですか?」
もうすぐで着くというところでカノンちゃんが聞いてきた。
「んーと、私ってさ、困っている人とか、子供とかを放っておけない質でさ。それで、よく周りからお人好し、なんて言われるんだけどさ」
「私は、そうは思いません。だって、人のために動ける人って、すごいと思います」
「そう、ありがとう。あんまり褒められたことないから恥ずかしいな~。あ、あそこに見える建物が避難所だよ」
私はカノンちゃんと一緒に避難所に入ろうとした時、後ろの方で爆発音が聞こえた。急いで振り返ると、街の奥、つまり門の方が爆発しているのが見えた。
モミジちゃん、お願いだから、生きていて。
今の私には、そう祈る事しか出来なかった。
次回はモミジ視点になります。(多分)




