第二二話
第二二話 乙女三態 その二 可愛い妹 鮎帰あさ美
三人の女に、それぞれのアピールする場を設けるとの美幸の提案。二人目はあさ美。
休日、遊園地でとの申し出に、都子が異議を唱えた。それはデートで自分の良さを主張する場ではない、と。
中学生にそのくらいのハンデをくれてもいいじゃないか、私は二人ほど頭が良くないから言葉で説明できないとの、あさ美の主張を、多喜は容認した。大丈夫だから、と言われ、都子は黙った。
とまれ、あさ美と悠輔は郊外の遊園地へ。真面目一本の悠輔が遊び場で女の子をエスコートなどできない。あさ美が悠輔を引っ張り回すこととなった。まずはジェットコースターだ、次はゴーカートだと。
あさ美は元気いっぱいに楽しむ。続けざまに絶叫マシンに乗せられた悠輔は、乗り物酔いでへたり込む。カフェに座ると椅子に身体を投げ出した。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ちょっと休ませてくれ。おまえ、あれだけ激しく動いて、よく平気だな。」
「お兄ちゃんが弱いのよ。それに、楽しくて仕方がないから、全然平気。」
「やっぱり、遊ぶのが目的か。」
「雰囲気で押し流しちゃうのが目的。でも多喜姉ちゃんには見透かされてたみたい。お兄ちゃんの乗り物酔いがこんなに酷いとは知らなかったわ。失敗ね。これじゃ楽しくないわね。あたし、自分の都合でしか考えてなかった。あたしのこと、嫌いになった?」
「いや、楽しいよ。いま、ちょっと身体が付いていけないだけ。座ったら、だいぶ楽になった。お前が喜んでる姿を見ると、こっちも嬉しくなる。」
「良かった。」
あさ美は満面の笑顔を浮かべる。
「お兄ちゃんに嫌われたら、あたしはどうやって生きていけばいいのか分からなくなる。」
「大袈裟な。」
「ううん。私はどうしたらお兄ちゃんに気に入ってもらえるのかばかり考えてる。私は頭が悪いから、勉強しても多喜姉ちゃんや都子さんのように成績優秀にはなれない。でも、その分、お兄ちゃんに尽くすわ。
お料理を習ってるの。美幸おばちゃんにも美味しいって誉められたわ。掃除、洗濯も上手よ。あと、その……」
あさ美はもじもじして声が小さくなる。
「なに?」悠輔は顔を近づける。
「お兄ちゃんになら、エッチなことされていい。美幸おばちゃんには止められたけど、やっぱり、お兄ちゃんが喜んでくれるなら、何をされてもいい。」
意を決したあさ美は、真っ赤になりながら声のトーンが上がる。
「男の人って、大きなおっぱいが好きなんでしょ。あたし、すごく大きくなったの、お兄ちゃんも時々見てるから、知ってるわね。」
店中の視線が集まる。
「バカ、やめろ。こんな人の多いところで。」
悠輔の一方的な口調があさ美の勘に障る。
「人がいないところに行く?」
「やめろって。ガキのくせに何を言い出す。」
堰を切ってしまったあさ美は止まらない。
「そっやって子供扱いする。もう大人なんだから。」
あさ美は胸を突き出す。ぎょっとした悠輔は一瞬仰視して、あわてて目をそらす。
「分かった。俺が悪かった。謝るから、落ち着け。」
俺は悪くないよな、と思いながら、悠輔はお冷やのコップを押し出す。あさ美は水を一気に飲み干して、大きく息を吐く。
「ごめんなさい。日頃の不満が爆発して、つい興奮しちゃった。でも、このままじゃお兄ちゃんを取られちゃうと思うと、私も必死なの。」
大人になりかけの不安定な少女の感情の起伏に、悠輔は戸惑う。
「俺、おまえが言うほど立派な男じゃない。嫌な思いをいっぱいさせるかも。」
「かまわない。あたし、けっこうモテるのよ。でも、お兄ちゃん以外の男に引かれることはない。男の人に嫌らしい目つきで見られるのは嫌だけど、お兄ちゃんなら嬉しくなる。お兄ちゃんに邪険にされる以上に、辛い思いなんてない。
あたしは難しい言葉を操れない。ただ、お兄ちゃんが好き、大好き。お兄ちゃんのためなら、なんでもする。」




