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ゾンビとネコと成れの果て

「ねえお姉さん俺とお茶しない?」


 今日もあの男は動く雌にそう声をかけている。まったくよく懲りずに続けられるものだと呆れる。ほら雌は男の事を無視して歩き去った。


「おっ!お姉さん美人だね、俺とお茶なんてどう?」


 また雌は無視して去って行く、それは日が暮れるまで続けられたが全く成果はなかったようだ。


男は吾輩の所まで来ると「たまー、今日も駄目だったよ、帰ろっか」と話しかけてくる。


 吾輩は一声「にゃー」と鳴くと男の足に頬ずりをし男の前を歩き出す。


 吾輩が何者かはもうおわかりだろう、ここは我ら猫界隈の伝統的な名乗りをさせて貰う。


 吾輩は猫である名前はたま、10年生きた白い毛皮の雄である。



 男が言うには世界が滅び、人という物がいなくなって100年は経つらしい。

 であれば我輩の目の前にいる男は何なのか、男が言うにはゾンビのその先の存在だといっている、いい表現が思いつかないから成れの果てという事にしたのだと。


 猫の我輩にはよくわからぬが、世界はゾンビで溢れているらしいのだ。

 男が言うにはゾンビは2種類いて絶えず動き続ける物と全く動かない物の2種類があると言っておる。


 男は動かないゾンビをゾンニートと呼ぶ事にしたらしいが猫である我輩には意味がわからぬ。

 そして男が毎日声をかけるのは動くゾンビだという、男が言うには動くゾンビはゾンビのその先の、男と同じ存在になる可能性があると言っておる。


 猫である我輩にその様なことを語りかけても、我輩は「にゃー」としか返せぬのだが困った物である。



 我輩がこの男と共にいるのは、この男がいつまでも狩りのやり方がわからぬようで、何も食べていないのを見かねた我輩が、男が寝ているうちにネズミやスズメを男の枕元に置いて置いたというのに、餌を見つけたこの男は「うひゃー」と叫ぶだけで食べようとせず結局土に埋めよった。

 仕方がないので何度も何度もやっておるうちに、我輩は見つかり捕まってしまった、鈍そうに見えて存外早かったのは我輩の誤算であった。


「僕はねもう何も食べなくても生きていけるんだよ、だから君のご飯を分けてもらわなくても大丈夫なんだよ」


 なんとこの男は餌を食べなくても良いというのか、それはなんとも寂しい事だと思うたわ、我輩は自らの手で狩りそして食すこの時間が寝る事の次に楽しき事だというのに、それを味わえないなど哀れだと思うてしまった。


それから何かとこの男が気になり、狩りのついでに様子を見に来ることが続き、気づけばこの男と寝床を共にするようになったわけだ。



「たま、今はキャットフードを探しに行こう」


 突然男がそのような事を我輩に言うてきおった。キャットフードなるものが何かわからぬが、我輩の体が勝手にがそわそわとしだす、なんと恐ろしきことか。


 男と共に訪れた場所は、ボロボロでほとんど崩れておるが、昔はスーパーと呼ばれていた建物だと語っておる。


「あーこれはネズミにやられたかな」


 なんとあのチョロチョロと動く我輩の餌の分際で我輩の物を奪うとは、次捕らえる時はもっといたぶってやろうぞ。


「おっ、缶詰は無事なようだな、賞味期限は消えて見れないが大丈夫だろうか……流石に駄目だな腐ってるみたいだ、ゴメンなたま無駄足だったみたいだ」


 なんとなんと我輩の心を揺さぶるキャットフードなるものは食べられないのか、我輩の心は絶望で打ち震えておるぞ、こうなればねずみ共を全滅させてやるわ。



 目を開くとそこには見知らぬ雌のゾンビがおった、周りを見回すとあの男もおるようだ。


「たま、やっとやっと僕と同じ成れの果てを見つけることだできたよ」


 ほう、それはよかったの、だが我輩はお主の見ている方にはおらぬのだが。


「たま、さん、はじめ、まして」


 雌の方はまだうまく喋れないようだが、他のゾンビと違ってちゃんと知性はあるようだ、だか雌よ我輩はお主の見ておる方にはおらぬのだが。


「大丈夫だよ今はうまく喋れないだろうけど、そのうち僕と同じ様に喋れるようになるよ、僕がそうだったからね」


 男は雌に寄り添うように語りかけておる。

 もうこの男には我輩は必要ないだろう、我輩は「にゃー」と一声男と男に寄り添う雌に向けて鳴いた。

 男と雌はそれが聞こえたのかキョロキョロと周りを見回しておる。

 男と出会ってから100年は過ぎただろうか、我輩はとっくに死んでいる。


 我輩の意識は自然と空へ昇っていく、もう我輩がここにいる理由が無くなった……。

 この後は宇宙とやらへ行ってみるのも良いかもしれぬな、さながら宇宙猫とでも名乗ろうか。


 もう一度「にゃー」と鳴く、我輩は空へ空へ宇宙へ駆け上がっていく。

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