S・O・S ~僻地からの救難信号~ Part.5
「ちぃっ……、一発撃たせちまったね」
遙か上空を飛んでいる飛翔体を睨みながらスカーレットは溢したが、平原へと出た彼女は足を止めることなく疾駆していた。止める術のない攻撃を気にするより、二発目を撃たせないことが大切。そうして丘を登った彼女が発見したのは、まさに次弾の発射準備を行っている『星渡りの蝗』の兵器である。
「見つけた……!」
まだ距離はあったが、獲物を捉えたスカーレットの突進は巨体に似合わぬ電光石火で、数秒足らずで間合いに詰める。『星渡りの蝗』は装填作業を続けているが、みすみすそんな真似をさせる訳がない。
「あたいを無視しようなんて良い度胸だ、目が合ったらば勝負、勝負!」
接近した勢いそのままに飛び上がったスカーレットは、六つ足の兵器が背負っていた飛翔体のランチャーを叩き斬る。中身がなにかは知らないが、これでとりあえず二発目はなくなった。
と、ここでようやく六つ足が動く。カニのような六本足で横に飛ぶと、その図体をスライドさせてスカーレットを正面に捉える。
それと同時に顔らしき部分にあった機銃が吼えるも、スカーレットは斧を使って大地をめくる事で遮蔽物を作り、これを凌いだ。
弾雨にされされても、流石スカーレットは冷静である。
「なんだかねぇ……」
機銃弾の連射が遮蔽物を削るのを感じながらも、彼女に焦った気配はない。むしろその嘆息に滲むのは、期待外れの呆れ加減。ひとまず銃声が止むのを待ったスカーレットは、立ちこめる硝煙の嗅ぎ慣れない臭いに鼻をひくつかせながら、斧を担いで姿を晒す。
キチンとおっぱじめる前に相手の姿を見ておきたい。理由としてはそれだけだ。
節足動物に似た六本足で支えた角張った頭部は、さながらハサミのないカニといったところ。武器にしたって正面にある弾を飛ばす筒くらいで、なんというか面白みがなかった。強敵と聞いていただけに、スカーレットの落胆は大きい。
「はぁ~……、いきなり襲うわ、遠くから攻めるわ、名乗りはしないわ。これが『星渡りの蝗』の戦いなのかい? 楽しみにしてたのが馬鹿みたいじゃないか……。って言っても、通じやしないか」
見るからにガッカリしているスカーレットに対する『星渡りの蝗』の返事は、鉛弾の雨。やはり前触れ無く発射された百を超える弾丸は、だが彼女にとってまさしく雨粒に等しいもので、魔力の通った彼女の毛皮に弾かれるばかり。
機銃射を受けながら歩み寄ってくるスカーレットの姿には、きっと六つ足のパイロットも恐怖を覚えたことだろう。しかし戦意は残っているらしく、無力な機銃を撃ちやめると、今度は兵器の脚部でもって殴打しにかかった。
重量を考えれば威力は絶大だろう。ただし、当たればの話だが……
「図体の割には早いけどねぇ――」
変わらず歩み寄るスカーレットは、六つ足の打撃を軽く躱す。機械制御が入る六つ足の格闘など彼女にしてみれば単調にすぎたし、試しに一発もらってやっても、立っていられる程度の威力しか無い。
「……もういいか」
あまりにも静かすぎる死刑宣告。
果たして『星渡りの蝗』がその意味を解したかは不明だが、スカーレットはそう呟くや戦斧を振り抜き、六つ足を下から二つに割った。
程なくして、六つ足は爆発。
他愛なさ過ぎる敵を背にして城を臨むスカーレットは、すでに次の行動を考えていた。
「城下町も騒がしいし、いったん戻った方がよさそうだね。……坊やは、まぁ大丈夫か」
そうしてスカーレットは、軽い足取りで城下町へと引き返していく。
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