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魔王女さまのレコンキスタ 〜勇者と魔王は並び立ち〜  作者: 空戸之間
第二話 魔王女さまと緋色戦姫
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PREPARE ~備える者達~ Part.9


「――それでグリム君、成果はあがっているかい?」


 ある日、城下町の見回り中の事である。路地の見回りをしていたグッドサンが、相方になっているグリムに尋ねた。私語に厳しい衛兵と異なり、見回り班は普段から市民との交流を大事にするようにとのお達しが出ているため、任務中の会話も結構緩かったりする。

 流石におおっぴらに談笑する訳にはいかないが、こういう路地に入ると口が軽くなるものだ。


「副長と戦うって目的は果したんだ、手応えを教えておくれよ」

「手応えはありありッスよ、この顔見りゃあ分かるでしょ?」


 意地の悪い質問だと、グリムはふて腐れた。なにしろ彼の顔には……、いや、前腕など肌が見えている部分の殆どに生々しい青あざが残っているのだから。


「アッハハハ、やっぱり副長は強かったか~。相談受けた次の日は、皆もビックリしてたよ。朝稽古に出てきたグリムくん、痣だらけだったもんね」

「しこたまやられたんスよ。どっちの稽古にするか交代しながら進めてるんスけど、代わるたびに熱上げるから気を抜く暇がねえ。ぶっちゃけると、『授かりし物(ギフト)』なしじゃあ、いまの俺だと手も足も出ねえッス」


 グッドサンは唸っていた。フェリシアが兵士達の訓練相手をすることもあるが、その中でも本気の彼女を見たことはなかったのだ。


「……そんなに強いんだ、副長は」

「魔力による肉体強化とか、戦技抜きで考えたら、今まであった中でも五指に入るかも」

「…………。――で、グリムくんは副長相手に一本とれたのかい?」


 素朴な問いに、グリムは答えなかった。返事をするまいと固く結んだ唇に顔のパーツが寄ってしまうくらいの渋面のまま、彼はそっぽを向いていた。


「あぁ……」

「いや、いいトコまでいってるんスよ⁈ 昨日だって惜しい一撃あったし! でも届くと思うと新しい技で返してくるんスよ、あの女はァ~ッ!」


 なんと実感のこもった悔しがりであろうか。事実として夜間稽古が始まってから、生のままの勝負において、グリムは未だに一本も取れていなかったから、歯ぎしりするのも無理はないが、グッドサンはそんな彼に微笑ましそうに言うのであった。


「でも僕としては、二人の仲が良くなったようで嬉しいよ。それだけでも充分な収穫かな」

「仲良くって? 誰と誰がっスか?」

「もちろん、キミと副長がさ」

「嫌いッスよ、普通に」

「えっ?」

「えっ? なんで驚くんスか」


 照れ隠しとかではなく、グリムはマジで不思議そうに聞き返している。

 グッドサンが知る限りでも、あれからほぼ毎夜のように二人は夜間稽古をしているのだ。時間としては短いだろうが、二人きりで切磋琢磨していれば、いくらいがみ合っていたとしても多少その仲が改善すると思うのが普通だろうから、グッドサンの戸惑いも当然だ。

 しかしグリムは、やはりしれっと続けるのだった。


「実際に戦ってるとこ見たら、そんな言葉出てこねえって。お互いに嫌いだから、心置きなくぶん殴れるんスよ」

「えぇ~…………。じゃあ、警邏任務も不満だったりしない? あてがったの副長だったから」

「いや? そこに不満はないッスよ? 此所に来たばかりの俺に、城下の地形を覚えさせるのが目的でしょ? 理由があるなら、別に理不尽とは思わないっス。なんだかんだで公平ッスからね、そこは一応尊敬してます」

「そ、そうなんだ……」


 聞き分けがいいのか悪いのか。

 グッドサンは評価に困り、渋面となった彼が話を進めようとした、その時である……


 カンッ! カンッ! カンッ!――


 と、どこからともなく、唐突に鳴りだした鐘の音が空気を一変させた。緩んでいた雰囲気が引き締まり、自然と顔つきも険しくなる。


「……大変だ!」

「警鐘……? グッさん、これってなんの合図なんすか」

「敵襲だよ! 敵襲ッ!」


 見える範囲の市民に対応しながらグッドサンは答え、次いで彼は指示を出した。

 迅速かつ的確で、迷いがない。


「グリムくん。僕は市民の誘導にあたるから、キミは団長達の所へ! 南側城壁へ行くんだ!

いまキミの力が必要だとすれば、そこだ!」

「了解ッ! 班長も気をつけて!」

「ああ! キミもなッ!」


 そうして二人は、適材適所にて成すべきを成すべく別れた。

 警鐘が城下に響いてから、ほんの数秒の出来事である。



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