S・O・S ~僻地からの救難信号~ Part.11
城へと迫る脅威をいち早く察知したのは城下町上空を旋回しているハーピィ達だったが、彼女たちが得た情報はその飛び方で伝達されるため、どうしても伝わるまでに遅れが出る。時間にして一分もなかったろうが、優位に傾きかけた戦況からの緩みによって生じたこの遅れが、致命的な隙を生んでしまった。
いや、仮にラグなく伝わったとて、果たして対抗できたかどうか……。
城の周りを飛んでいたテューレが警告を発した時には、すでに出遅れていた。
アヴァロン城北側、城壁に接している巨大な山脈。
テューレが見たのは、天然の防壁とも呼べるその険しい斜面を激烈な勢いで下ってくる巨大な金属の塊。八本の触手で山を掴み、木々を蹴散らしているのはまごうことなき『星渡りの蝗』の陸戦兵器で、彼女は慌てて《伝心》で繋がったままのメアに危機を知らせた。
『メアちゃん気をつけて! 大きいのがもう一体、山の方から迫ってきてる!』
玉座の間にて報せを受け取ったメアに緊張が走る。対処したいのは山々だが今動けば獄炎の防御幕が解けてしまうため動くことが出来なかったし、獄炎で迎撃しようにも八つ脚の機械相手に生半可な魔法は通じない。強力な獄炎魔法であれば通じる可能性はあるが、未熟な魔力制御で魔王の血筋に伝わる魔法を扱うとどうなるかは、彼女が一番よく知っている。
前回うまくいったのは、魔力制御が得意なグリムの支援があってこそ。下手をすれば城下町まるごと暴発で消し飛びかねない危険性を考えると、メアの独力では八方塞がりであった。
――くっ、どうすればよいのじゃ!
メアは静かに歯がみする。
なんとも情けないことながら、現状を維持することがメアに出来る唯一のことであり、同時に最善の一手であった。動けぬままに解決することを願う彼女の姿は、跪き防御幕を張り続ける様子と相まって、ただ祈りを捧げているように見える。
しかし、ただ祈るばかりでよくなる事など、何一つとしてあり得ないのだ。いくらメアが魔力操作を苦手としても、八つ脚ほどの巨体が触れれば魔力越しでも判断が付く。
突破されたとメアが確信した直度、テューレの悲痛な声が彼女の頭に響き渡った。
『メアちゃん、逃げてッ!』
同時に玉座の間が大きく揺れ、壁が崩れた。
崩壊した壁の隙間を覆っているのは『星渡りの蝗』陸戦兵器の頭部。ギラギラと赤く発光する複眼がメアを無機質に見つめている。
「クソ! タコ野郎め、城に取り付きやがった!」
異変を感知してすぐにグリムたちは走り出していたが、致命的に出遅れていた。
獄炎の幕によって籠城し、鉄虫の進攻を凌いだことで安心していたが、獄炎の幕はなにも無敵の防御魔法という訳ではないのだ。確かに、触れれば体内の魔力を燃料として燃えるため生物が触れれば致命的だし、大抵の魔法や魔力を込めた攻撃も防げる。ゴーレムや鉄虫のような無機物であっても、獄炎の高温に触れればたちまちの内に溶けてしまう。
ここまで聞くと、やはり無敵の防御魔法と思えるだろうが、獄炎の幕でも止められない物が存在する。それは溶かせない物体だ。
実に単純な話であるが、そもそもとして獄炎には物体を弾く力はない。であれば獄炎を耐えうる物質で作られた物体は、その防御を抜けることが可能なのである。丁度、『星渡りの蝗』の兵器がそうしたように――
「ヤバいぜ、スカーレット! メア一人じゃあ、あれの相手は無理だ!」
鉄虫を蹴散らしながらグリムが吼える。
獄炎の幕はすでに消えてしまっているので助けに向かうことは可能だが、城までがあまりにも遠い。全力で駆けたとしても、間に合う距離では――
「坊や!」
奥歯を噛んでいたグリムだったが、スカーレットに檄を飛ばされ振り返る。諦めるなと、そう込めて怒鳴った彼女は、戦斧の刃を寝かせて低く低く構えていた。
その構えは斬るための構えではなく、戦場で用いる構えとしては異質に過ぎた。
しかしグリムは彼女の意図を察するや、即座に駆けだし跳躍。合わせてスカーレットが振り始めた戦斧の腹を足場として、城目掛けて発射されていく。
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