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魔王女さまのレコンキスタ 〜勇者と魔王は並び立ち〜  作者: 空戸之間
第二話 魔王女さまと緋色戦姫
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S・O・S ~僻地からの救難信号~ Part.9


 戦況は苦しい。


 上空から見下ろしているからこそ、テューレにはそれがよく理解出来た。路地の隙間から這い出てくる自立兵器が、とめどなく城へと寄せてきている。高度な命令を受けて動いているようには見えないが、際限ない物量と疲れを知らない波状攻撃に、兵士達がいつまで耐えられるのだろうか……。


 下の戦況に顔をしかめながらも、彼女は空へと視線を上げる。すると丁度、城の上空に黒い焔の渦が拡がり始めていた。城下町全体を覆っていた時とは異なり、その存在感は禍々しいほどに圧倒的だ。

 メアが魔法を発動したのを確認すると、テューレは味方を巻き込まないように誘導するべく、城壁の外側に位置を取る。一人で誘導するにはあまりにも大きすぎるが、対応できるのは彼女のみだ。


《もう少し広げて、メアちゃん! このままだと城壁に掛かるわ!》


 飛び回るテューレの首は、降りてくる獄炎の幕と地面の距離を量るべく、忙しなく動き続けている。なにしろ感覚頼みの一発勝負、必死のアドリブで成功させるしかない。


 テューレの声に反応して、幕の範囲がぐぐっと広がった。このまま幕が下りれば城をすっぽり覆うことが出来そうだ。と判断するや、テューレは急いで城門前で戦闘中のフェリシアの元へと飛んでいった。


「副団長さん! メアちゃんの魔法が完成するわ、お城に戻る準備を!」

「なんとか間に合ったか!」


 鉄虫の殻を割ってやると、フェリシアが命令を下す。


「総員、撤退だ! 負傷者を城へ! 戦える者は時間を稼ぐぞ! ――ガロウ、貴様の部下も下がらせろ、体勢を立て直す!」

「馬鹿言いやがる、俺たち獣魔に逃げの二文字はねえよ!」

「勝てる戦の無駄死にが誉れか! 部下に間抜けな死に様を与える気か、貴様はッ!」

「なんだとォ⁈」

「貴様が真に戦士というなら戦い、死ぬことを目的とするな! 目的のために戦い、死ね! 次代に何かを残すこと、それこそが戦いだ! 我々の死に場所は、ここではない!」


 何かを求めて戦う、誰かのために戦う。


 ガロウにとって戦いとは、それ自体が目的であり欲する物であった。スカーレットに挑み、敗れ、そして彼女に同行するようになってからも、その考えは変わっていない。彼女たちが魔王軍から独立行動していてもお咎めなしだったのは、スカーレットの強さもさることながら、放っておいても強者との戦いを求めて転戦していたからに他ならない。


 戦いこそが目的。それは獣魔軍団に於いても同じ事だが、いまのガロウにはフェリシアの道理が僅かながらに理解できた。


 ……いや、理解出来てしまっていた。


 人間共と過ごすことになった僅かな日々。しかしその薄雪のような積み重ねは、だが確かにガロウの中に積まれていた。


「……チィ、仕方ねえ。ここはあんたに従ってやるよ。――聞こえてるか野郎共! 全員城に入れ、仕切り直しだ! グズグズするなッ!」


 他の獣魔が渋るのを見越してガロウは急かした。それでもやはり不満はでているが、命令は命令。指揮権の絶対さで言えば、騎士団も獣魔たちも似たようなものである。

 戦闘しながらも騎士たちがじわりじわりと跳ね橋を渡り、獣魔たちも各々城壁内へ。追いすがってくる鉄虫を蹄で蹴り飛ばしたペルシュが負傷した獣魔を抱えて、ガロウの脇を掛けていった。


「よし、いまので最後だ!」

「貴様から下がれ、狼!」

殿(しんがり)を人間に譲れるかい!」


 此所に来てまで揉めるガロウとフェリシアを、きっと身体が許すならテューレはひっぱたいていたことだろう。


「言い争ってないで早く下がりなさい! 幕が降りるわよッ!」

「「ええい、クソッ!」」


 両者ともギリギリまで粘っていたが、遂に時間いっぱいとみるや踵を返して猛ダッシュ。そのまま飛び込むようにして幕を潜り、城壁内へと帰還した。

 そんな彼らを追ってきた鉄虫が無防備に獄炎の幕に触れるやいなや、硬い外殻がドロリと溶けて潰れていく。その突撃は止まることなく続いていたが、突破されることはなさそうだった。



ここまで読んで戴きましてありがとうございます

『いいね』や気軽な一言感想などお待ちしてますので、どうぞよろしく!

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それでは続きをお楽しみに!!

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