プロローグ 終わりの始まり
「この世界の為なら私は死を受け入れます」
果てしない空を駆ける飛行艇のデッキに立つ少女は、振り向かずにそう言った
その声色は力強く、大きな決意が込められている
だが俺は、少女の決断に納得が出来ずかぶりを振った
「本当に良いのか?お前がやらなくても他に方法があるかもしれないし、たとえこの世界が救われてもお前はもう居ないんだぞ?」
夕の日が、少女の背中を照らす
その背中はとても小さく見えた
「・・・構いません、もう誰かが泣くのは嫌なんです。私1人の命で皆が救われるなら私は喜んでこの命を差し出します」
我慢できずに俺は駆け寄り、肩を持って顔を振り向かせる
こちらを向いた少女の顔には大粒の涙が流れていた
「誰かが泣かなくても、お前が泣いてるじゃないかっ!!俺はこんな結末、絶対に納得出来ない!!世界の為だからといって、お前が死ななきゃならないのはおかしいだろう!?」
少女は泣きながら優しく微笑んだ
「ありがとうございます…でもそれが、私の使命、生きる意味であり、死ぬ意味なんです。私がこの世界の悪夢の螺旋を断ち切ります」
少女の決意は俺の心を深く穿った
そして決めた
必ずこの少女、ティア・ガーネットを最果ての地へ送り届けると
それが、俺、アベル・クライスの使命だ