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罪、償いし刻

 今から思えば、この時から既に異変の兆候はあった。


「……ふぁっ――……ん?」


 眠りから覚めた俺は、いつもとは違う体の軽さに気付く。

 目の前の視界に、ラピスの尻がない――と言うとどうも怪しげな感じというか、それがそもそもおかしなことなのだが。

 なにしろ毎日のことなのだ。

 どういう寝相なのかラピスは俺が目を覚ます時、毎回どっかりと俺の上に乗った姿勢で寝ている。

 その度目の前に鎮座する尻を(はた)いて無理矢理起こす、というのが毎朝の恒例行事と化していたのだが、今日はそれがない。


「起きたようじゃの」


 と、横から声がする。

 頭を声のする方向へと回してみれば、俺の腕を枕にした姿勢で横になっている彼女の姿があった。


「ん、おお。おはよう。どうしたんだ今日は」


 同じ布団に入ったまま、俺は尋ねる。

 殆ど密着状態にあっては、お互いの顔は触れそうなほどに近い。


「どうしたとは何じゃ」

「いや、今日はいやに寝相がいいじゃないか。いつもそうだと助かるんだがな」

「……ふん」


 布団の中から、ラピスから発される甘い匂いが漏れだし、俺の鼻をくすぐる。

 いつもの騒動もあれだが、これはこれで妙な感じだ。

 どうも気もそぞろになりつつあった俺は体を起こし、もう一度大きな欠伸をする。


「ふわぁ……ん、そうだ。今日は一緒にどっか行くって約束だったな」


 昨日俺はあの後結局、怒り心頭な妹への対処に疲れ切ってしまい、直ぐに寝てしまった。

 よって今日の予定も立てられずじまいに終わってしまっていたため、その話題のとっかかりとばかり俺はラピスに話を振る。

 ラピスは布団に横になった姿勢のまま、視線だけを俺に向けた。


「それなのじゃがの。その前にそなたに一つ頼みたいことがある」

「なんだ?」

「実は昨日、聖のところにうっかり忘れものをしての。まずそれを取りに行ってはくれぬか?」

「ん? 別に構わないけどよ、それなら一緒に行けばいいじゃないか」

「……ちと、体調が優れぬでな」


 予想だにしない台詞である。

 神様でも体調を崩すなどということがあるのか。

 それとも、これも力を失った影響の一つということだろうか。


「おいおい大丈夫なのか? まさかお前、力が尽きかけてるとか――」

「なに、単なる疲労によるものじゃろう。何だかんだでわしもこの一週間は慣れぬ経験続きであったでな、そのせいじゃろうよ」

「それならいいんだが……」

「なに、汝が帰ってくるまでには快復しておるよ。共に出かけるのはその後でよかろう」

「そうか。それじゃ大人しく待ってろよ」


 そう言って俺は、横たわるラピスの前髪をくしゃりと撫でた。



 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



 どうも妙な塩梅だ。

 家から出て、こうして例の山道を歩んでいる今まで、俺はずっと思案を続けていた。

 あいつが体調を崩すなど、これまでなかったことだ。

 それほど心身ともに疲弊していた、ということだろうか。

 そう思うと、昨日も感じた胃の痛みが再度襲ってくる。


 結局、ミナのことはまだあいつに話していない。

 俺は話を切り出すタイミングを計りかねていた。

 恐らくは相当な怒りを買うことだろうし、それはもう俺も覚悟の上である。

 問題は俺自身のことではなく、彼女――ミナのことだ。

 ラピスの怒りが俺一人に向かうのならばいい。

 心配なのは、あいつはミナにもその矛先を向かわせやしないか、ということだ。

 ……ありえない話ではない。


「今日一緒に出掛けて、機嫌が良くなった時を狙うか……」


 ここに至ってもまだ打算的な計算をする自分が嫌になるが、彼女の身にまで危険が及ばぬようにだ。

 罰を受けるのは俺一人でいい。


「……命だけは助けてほしいもんだ。……ん、あれ?」


 ルナへと向かう俺の視界の先に、思いがけぬ人物の姿が映る。

 今日は来ない、と言っておいたはずだが。

 彼女は俺が発見するより先に俺の姿を視認していたようで、遠くからぶんぶんと手を振っているのが見える。

 俺は小走りで近付くと、やや面食らった声で彼女に話しかけた。


「おい、どうしたんだ? 今日は来ないって言っただろ?」

「おはようおにいさんっ! うん、聞いたよ。でもミナはここでいつも遊んでるから」

「今日も一人でか?」

「そうだよ。でも嬉しいなっ! 今日もおにいさんと遊べるの!」


 嬉しそうに興奮した様子を見せるミナだが、生憎今日は彼女に構っている暇はない。


「あーいや……すまんが今日は他に用事があるんだ」

「えっ……そ、そうなの? 一緒にあそべない?」


 見る間に意気消沈しだした彼女を見ていると、実に心が痛む。

 こんなことなら遠回りになっても下道を行くべきだった。


「……悪いな」

「ん……う、うんっ! 大丈夫だよ! ミナは一人でもへーきだから!」

「……」


 気丈な態度を取ってはいるが、明らかに気落ちしているのがありありと分かる。

 俺にそれを悟られまいと殊更に元気なフリをしているのだろう。

 それが分かるだけに、余計にいたたまれない。

 俺はつい「少しだけなら」と喉まで出かかったが、すんでのところでそれは思い止まった。


「また今度な、また今度」


 その代わりとばかり、俺はミナの頭をポンポンと軽く叩くようにして撫でた。

 たったそれだけのことで、彼女の表情が晴れやかなものへと変わる。


「……うん! また今度、いつもの(・・・・)時間にね!」

「あいや、それも――……ん?」

「どうしたのおにいさん」

「いや、なんか急に後ろから温かい風が吹いてきてな。ちょっとびっくりしただけだ」


 この季節にしては珍しい、温かな――というより熱い、と形容した方が適切なほどの風が背より当たり、俺は少々驚いてしまった。

 しかし本当に珍しい。

 特にこの山の中ではひっきりなしに乾いた冷たい風が吹き付けており、事実昨日ミナと遊んでいた最中も、俺は何度か寒さに身を震わせていたものだが。


「ていうかミナは平気なのか? いつもそんな短いスカート履いてるけど、寒くないか? 特にここらはやけに冷えるしな」

「ううん、ミナは平気だよっ!」

「そうか……」


 脂肪の殆どついていないように見える足はいかにも寒そうだが、そこは子供の無尽蔵のパワーとでも言おうか、考えてみりゃ小学生男子なんかだって真冬でも半ズボンだしな。

 それから、手を振りながら俺を見送るミナの姿に後ろ髪を引かれる思いをしつつも俺は再度歩みを再開し、ほどなくして俺はルナへ到着した。


「おはようございます」

「おお? どうしたんだい。今日はラピスちゃんは来ていないよ?」


 店に入って早速、聖さんからの声がかかる。

 そろそろ俺も、この彼女のメイド服姿にも慣れ始めていた。


「あーいや、なんか昨日あいつ、ここに忘れ物したらしくて。それを取りに来たんですよ」

「はて、掃除の際にそんなものは見なかったが……何なんだい、その忘れものというのは」

「えっと――……あっ!?」


 ……アホか俺は。

 何を取りに行けばいいのか、その具体的な内容を聞きそびれていた。

 というかあいつも言っとけよ、それくらい!


「……すんません。聞いてからもう一回来ます」

「はっはは、随分そそっかしいな。しかし折角来てもらったんだ、どうだね、一杯飲んでいっては」

「んー……じゃ、そうさせてもらいます」


 乾いた空気の中を歩き続けていたせいで、言われてみれば喉がカラカラだ。

 聖さんは俺の返答を受け、キッチンへコーヒーを淹れに向かった。

 そうして次に俺は、横目でとある人物を視野に入れる。


「――しかし……」

「おお、どうしたい小僧」


 その人物とは、律儀に今日も働いているこの男、ナラクだ。

 もっとも、働いていると言ってもそれは服装の話だけで、実際はテーブル席を一人で占拠しつつコーヒーをのんびりと啜っている。

 奴も俺の視線に気付いたようで、わざわざ俺の隣のカウンター席まで移動してきた。


「どうしたじゃねーよ。お前ホント、どういうつもりなんだ。何かまた企んでんじゃないだろうな?」

「はっ、んなまだるっこしい真似なんざするかよ。それに言っただろ? とりあえずお前らに借りを返すまでは手を出さねェよ、安心しな」

「どうだか……言っとくが、俺はまだ全然お前のことを信用しちゃいないからな」

「当然だな。そういう危機感を常に持っとくってのは大事だぜ。特に小僧、お前さんはな」


 どうも含みのある言い方である。


「どういう意味だ?」

「どうもこうもねェよ、言葉通りの意味さ。聞いた話だとお前、あの死神と半分同化してんだってな? そうすっと色々と気を付けにゃならんぜ。お前みてェに半分化けモンになっちまった連中ってのはよ、普通の人間にゃ見えないモンが見えるようになったり、同じ化けモン連中と惹かれ合ったりするもんだからな」

「化物はお前の方だろ? そういえばずっと聞こうと思ってたんだが、お前は何を取り込んでんだ? 無理矢理そうしてるってんなら――」

「ああん? おいおい、俺をあのクソガキどもと一緒にすんじゃねェよ。俺は正真正銘、ただの人間さ」

「お前な、そんなわけ……」

「どうした二人とも、何の話だい?」


 俺たち二人が話し込んでいるそこに、注文のコーヒーを手に持った聖さんが現れる。

 彼女の耳に入るところではこの話を続けるわけにもいかない。

 とここで俺は、彼女にも聞いておきたいことがあったのを思い出す。


「あー……えっと。ああ、そうだ聖さん。ちょっと聞いてもいいですか?」

「なにかな?」

「俺の家方向からこっちに来る途中、山がありますよね」

「うん、あるね」

「あの山の中にボロボロの神社があること、聖さん知ってます?」


 俺の言葉を受け、聖さんは首を捻る。


「神社……? いや、そんなものがあったようには記憶していないが……」

「やっぱりそうですか……」

「というよりキミ、あの山を通ってここに来ているのかい? まさか彼女も?」

「ええ、そうですけど」

「う~ん……あまり感心しないな。あの道は街頭も無いし、それにあまりいい噂も聞かないしね」

「なんです、噂って」

「私も詳しいことは知らないがね。あの通りは私が子供の頃は『首狩り峠』といって、随分親に脅かされたものだよ。なんでもずっと昔、あそこは処刑場として使われていたのだとか……」


 おいおい……物騒な名前だな。

 ていうかそんな曰くつきの場所だったのかよ。


「聖ちゃん、そりゃ違うぜ」


 と、俺たちの話に割り込んできたものがある。

 前々から何度か目にしていた、ここの常連客の一人だ。


「おいらがガキの時分に爺さんに聞いた話じゃ、あっこは江戸時代にタチの悪い山賊が根城にしてたとこで、そっから名前が付いたって話だったけどな」

「おい待てよ。俺ぁあそこはなんかデカい合戦があったとこだって聞いたぞ?」

「いや待て俺は――」


 そうこうするうちに話に参加する連中が次々と増えてしまい、収集がつかない事態になってきた。

 いずれにせよ、あそこはあまり良い言い伝えが残る場所ではなさそうである。

 そしてやはり彼らの中にも、あの神社について知っている者はいなかった。


 果たしてそんなことがあり得るのだろうか?

 ごく最近あの横道、そして神社が作られたというセンは無いだろう。

 だとすればあの朽ち果て様の説明がつかない。明らかに何十年――いや、ことによると何百年も経っているような風貌だった。

 先ほどナラクが言っていたことが思い出される。

 人でなくなってしまったものは、普通の人間では見えないものが見えるようになるのだと――。

 ……しかし、仮にそうであるならばひとつ道理に合わぬことがある。


『彼女』は普段からあの山、そして例の神社で遊んでいると言っていた。

 その言葉通りに信じるなら、やはり昔から存在していたと考えるほかない。

 しかし。

 もしそうでないなら、あの少女は――……


「竜司君?」

「――はっ。あ、ああ、なんですか?」

「いや、なにやら物思いに耽っていたようだったからね。どうしたのかな」

「いや、なんでもないんです。えっとそれじゃ、一回帰ってからまた来ます。――これ、お代です」

「なにを水臭いことを。キミが彼女を紹介してくれた恩はとてもこんなことで返せるようなものではない。つまらない気遣いは無用だよ」

「いえ、俺自身は何もしてないです。全部あいつが頑張ったからですから……ここはきっちり払わせてください」

「ん……そうかい」


 コーヒー代を支払い、俺は元の道をもう一度辿る。

 本当は下道を通ろうかとも思っていたが、一度気にしてしまってはどうも収まりが悪い。

 まあ、それもこれもまだ彼女があの場所に居れば――の話だが。

 今日は俺が付き合ってやれないと分かり、もう家に帰っているかもしれない。

 ……いやむしろそうであってほしい。

 そうであるなら今しがた胸に去来した予感も、ただの気の迷いで済ますことができる。


「おにーさんっ!」

「……ミナ。まだいたんだな」


 がしかし、そうした僅かな期待は見事空振りに終わる。

 やはり例の場所で一人、彼女は立っていた。


「ごようじは終わったの?」

「いや、ポカやらかしちまってな。出戻りだ。それよりミナ。ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ、いいか?」

「なぁに、おにいさん?」

「その……」


 俺は一瞬迷った後、多少回り道で切り出すことにした。


「……あの俺たちが一緒に遊んだ神社のことなんだけどな」

「うん」

「お前、あそこを遊び場にしてるっつってたけど、それはいつからだ?」

「うーん……いつだろ。いっぱい前からだよ」


 可愛らしく首をかしげてみせるが、これは俺があらぬ疑いを彼女に抱いているせいだろうか。

 その所作が今、やけに白々しく思えるのは。

 具体的な数字として表さないのも、今この場にあっては殊更に怪しく思える。

 俺は話を続けた。


「実はな。あの場所、俺たち以外に誰も今まで見たことが無かったらしい。実際俺だって数日前に初めて気が付いたんだ。子供の頃から何度も通ってるってのに」

「……」

「それにな。ここいらはどうも悪い噂がけっこうあるみたいでな……んなとこをお前、いつも一人でってのは……」

「……」


 ミナからの返答が途絶える。

 彼女の顔からは笑顔が消え、何の感情も浮かべてはいない。

 ややあって、彼女はゆっくりと口を開いた。


「……それで、おにいさんはなにがいいたいの?」

「いや~……ええと……そのな……」


 何と切り出したものか。

 いざとなるとこの場に相応しい言葉に迷ってしまう。

 もし仮にミナがそう(・・)だとして、ここで下手なことを言うと取り返しのつかない事態に発展する可能性は大いにある。

 やはりラピスに相談してからにすべきだったか……?


「おにいさん。ミナのこと、おばけさんだと思ってるの?」

「う……」


 当たらずとも遠からずといったところだ。

 俺が返答に迷っている中、彼女は若干の笑顔をその顔に浮かべ、言った。


「ふぅん……おにいさん。ちょっとそこにしゃがんでくれる?」

「え?」

「はやく――ね?」


 有無を言わさぬ迫力を感じさせる。

 促され、俺は一応は彼女の指示に従う。

 しかしいつでも逃げ出せるよう、足は残してだ。


「……これでいいのか?」

「うん。それでいいよ。それじゃ……あれ? おにいさん、あそこ……」


 なぜかミナは言いながら明後日の方向に視線を向かわせる。

 そんな彼女の様子に釣られ、俺もその視線の先を追う。


「あそこってどこに――あいたっ!?」


 彼女から視線を外したその刹那、首筋にちくりとした軽い痛みが襲う。

 痛みだけではなく、生暖かい柔らかな感触も共にくっ付いてきた。

 急いで視線を戻すと、いつの間にか彼女の頭部が俺の肩付近に密着している。

 ――いや、密着しているというより、これは。


 ここでようやく俺は事態を飲み込む。

 俺は今、彼女に噛みつかれているのだ。


「お前、何やって……」

「――ぷはっ! んっふふふふ~……」


 顔を俺から離したミナは、さも愉快そうに笑い声を上げる。

 そして次に腕を組み、偉そうにふんぞり返ると。


「そうだよおにいさん! ミナはこうしておにいさんを食べちゃう悪いおばけさんだったのだ~!」


 仁王立ちの姿勢で、ミナは笑顔のまま言い放つ。

 そんな彼女を見て、俺は。


「……ふっ。くっくく……」


 つい自然に笑いが漏れ出た。

 やはり考えすぎだったようだ。

 仮に彼女が俺に害なす存在であったなら、先ほど喉元を食い破っていたはず。

 俺も大概どうかしていた。こんな人懐っこい少女を一瞬とはいえ疑うなど。


 彼女に甘噛みされた後を指でなぞると、軽く噛み跡がついているようで若干の違和感がある。

 とはいえ痛みなどは一切ありはしなかった。

 それも当然のこと。彼女はただ、俺にじゃれついてきただけなのだから。


「どうおにいさん、こわかった?」

「ああ怖いな。食われちまうかと思ったよ」

「んふふふ~!」


 イタズラが成功に終わり、してやったりという表情である。

 俺はこんな無垢な少女を疑ってしまいかけた後ろめたさを払拭する意味も兼ね、過剰なオーバーアクションでもってそれに応える。


「そんな悪いヤツは退治してやらねーとな。――ほれっ!」


 俺は彼女を両の腕で抱きかかえると、彼女の腋の下のあたりをくすぐる。


「えっ、あっ!? ――きゃはははっ! おにいさっ、くすぐったいよ!」

「ほれほれどうだ、参ったか」

「あはははっ! こ、降参! 降参っ!」


 足をバタつかせ観念するミナを地に下ろし、次いで俺も腰を落とす。


「ふぅー……よいしょと」


 ……なんとかの考え休むに似たりってやつだな。

 ま、悪い予感は外れるに越したことはない。


「いや、変なこと言い出して悪かったな。それで話は変わるけど、実は明日からは俺――……ミナ?」


 ふたたび話しかけようとミナに視線を向けるも、なにやら彼女の様子がおかしい。

 顔はやや青ざめ、それこそ化け物でも見るかのような目つきをしている。


 いや、妙なのは彼女の様子だけではない。

 いつの間にやら俺の背後からは、またも感じた熱を帯びた風が吹いてきていた。


「お、おにいさん……う、後ろ……」


 ミナは震える手で、俺の背後を指差す。


「へ?」

「そ、そのひとって……」

「後ろ? 後ろがどうかし――」


 振り向こうと首を動かしたその瞬間、鋭い痛み、そして衝撃が俺の頭部を襲う。

 すぐさま俺の意識は絶たれ、深い闇へと埋没していった……

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