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一歩目。旅に出よう!!

そこは自分の知らない場所で。

幼い自分はそこで泣いていた。

どれくらいたっただろうか

ふと顔を上げると女の子がいた。

何を話したのかはわからないのだが、とても大切なことを話された気がする。

去り際に彼女は左耳につけていた桜貝のイヤリングをはずした。

「行かないで」

そう頼む自分の小さな右手にそっとそのイヤリングを握らせた。

「大切にして、きっとまた会えるから」

自分の意識はそこで暗転した。






遠くから聞きなれたダッシュ音が聞こえてくる。

バブルは机に開いていた本に一瞬名残惜しそうな目を向けてから、あきらめたようにため息をついて顔を上げた


「バブルっっ!!」

「何?」


若干あきれ気味の声にそいつがこぼした言葉はバブルの想像を簡単に超えるものだった


「旅に出よう!!」

「は?」


バブルは目の前に立つ赤い髪のアホを見た。

しかし自ら頭脳派を自認する彼はこれくらいでは動じない。

ファイアがアホなことを言い出したのはこれが初めてではない。

雨で水かさが増した川でメドレーリレーをしようと言っていた事もあるし、雷の下で野球をしようと言っていた事は記憶に新しい。

むしろファイアがまじめなことを言っていた事はほとんどない、バブルはやっと考えをまとめてファイアに質問した。


「どうしていきなり旅に出ようと?」

「俺たちもう15だろう?やっぱり旅でもして人生経験を養ったほうがいいと思うんだ。そも そも人生とは・・・」


人生について語り始めたファイアをバブルはじとっとした目で見つめた

(精神年齢が9歳から成長してないやつに言われたくない)

どうやらそんなことを思ったらしいバブルはファイアの声を手のしぐさだけで止めた


「人生経験を養うために旅をしたいという君の意見はわかった。でも、なんで僕が君の旅につ いて行かなくちゃいけないんだい?」

「だって、村出るには最低2人以上いなくちゃだめだろ?」


忘れてた。バブルは素直にそう思った。でもそれは僕がついて行かなくちゃならない理由にはならない!!

そう思ったバブルはその旨をファイアに伝えた。

すると彼はあっけからんと


「でも、みんなバブルとじゃなくちゃ行かせられないって言うから」


村民こん畜生!!

そんなことをバブルが思ったか定かではないが、彼の眉間にしわが寄ったのは気にせいではないだろう。

そんなバブルの様子に気づいたのかどうか、ファイアは本当の理由を口に出した。


「実はただの人生経験じゃなくて…。やっと、あの約束を叶えられる年になったからさ…」

「何だそんなことか、ならいいよ。僕にもそれ、関係あるからね」

「ありがとう!!じゃあ行こう!!一時間後に!」


無謀なことを言い出すファイアとせめて一日は待てと進言するバブルにはこれから旅に出るという緊張感は微塵も見られなかった。




それから二日後。

やっと出発の用意を終え、バブルは自分の屋敷を見上げた。

次はいつ帰ってこれるだろう。

そんなことを思いながら彼は門柱をくぐった。


ファイアは桜貝のイヤリングを机から引っ張りだした

いつも何がどこにあるか全く分からないほど散らかった部屋だが、この桜貝のイヤリングだけはなくしたことはない。腰に下げたポーチの中にそっと滑り込ませる。

「さて、行くか」

そうして彼は部屋を出て行った。



二人はRPGなら必ずいる『村長』宅に向かっていた

本当はすぐに出発しようとしていたファイアを


「せめて挨拶くらいはしていくべきだよ。大体僕たちの武器も返してもらってないし。」


とバブルが強引に連れてきたのである。この村では一定の量以上の武器は村長の家に預けておく決まりがあるからだ。


「でも、オレあの人苦手なんだよ、会話が成立しないしさ…。大体あの人言語能力あるのか  よ…。オレあの人が普通にしゃべってんの聞いたことねえよ」

「確かに自分のペースだけで会話しようとするしね、あの人とちゃんとしゃべれる人がいたら 尊敬するよ」


ファイアに人の言語能力心配してる余裕はないよね。というちょっとひどい台詞は心にしまっておいた。





「失礼します。西区画のバブル、ならびにファイア、出立前のご挨拶に参りました。」

村長宅の扉を開け、慣れた様子でバブルが名乗った。


「何?わしに贈り物?自分より下のものに物をもらうのは心苦しいが、そんなに受け取ってほ しいというのならば仕方ない、もらってやろう。」


早速会話が成立してないな…。予想はしていても疲れる…。


「いえ、村長に敬意を表し贈り物をしたいのは山々なのですが、あいにく持ち合わせが…。」


とてつもなくめんどくさそうに告げるバブルの横でファイアは大きなため息をついた。

その後も終わりが見えない押し問答の末、バブルが強引に本題に入った。


「僕たちはこれからしばらくこの地を離れます。町の外には危険も多く潜むので、僕たちに武器を返していただけないでしょうか?」


口調は丁寧だが、その裏に苛立ちが募っているのがわかる。一見したところではわからないが幼い頃から彼を知っているものにはわかる。そしてこれを超えると取り返しのつかない事態が起こることも。村長も例外ではなく、急にまじめな声で話し出した。


「おまえたちももう15だ。返すべきときが来ただろう」


村長からアイテムをもらうのは万国共通だ。

いすの下から袋を二つ出した村長はそれを二人に渡した。

(何でいすの下にあるのかと突っ込んではいけない)


「少し役に立ちそうなものも入れておいた。上手く使うがよい。」



いまいち意味のわからない村長宅を出て、ようやく彼らは出発した。

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