#7 究極奥義『一つの拳』
ドッゴォォォォォォォーーーン!!!
凄まじい衝撃が仮面越しに伝わってきた。
脳が激しく揺さぶられる。
プラチナムイーグルこと白鳥敦也が打ち下ろしのストレートをオウルマンの仮面に叩きつけたのだ。
瞬間、木暮の意識が飛んだ。
天地が回転する。
視界が紫色に染まる。
そして――
木暮は幻覚をみた。
そこにいたのは洞窟のなかの千尋であった。
木暮と裸で抱き合っている。
……そうだ、おれと千尋はこうやって命をつなぎとめた。
あのときの感覚が甦る。
千尋の温もりが、血潮が肌越しに伝わってくる。
それだけではない。
強さも。
弱さも。
淋しさも。
悔しさも。
すべてだ、すべてが流れ込んできたのだ。
あのとき、おれは彼女の魂に確かに触れた。
だから、命を懸けて守ろうと決意したのだ。
まだだ。
おれは……まだ、死ぬわけにはいかない。
沖縄で千尋がおれの助けを待っている。
我止!!
オウルマンは次弾である敦也のストレートブローを左手で受け止めた。
「なにッ!」
敦也が驚愕に目を見開いている。
次の刹那、敦也の体が宙を待った。
オウルマンが巴投げを打ったのだ。
木暮は全身を駆け巡る激痛に耐えながらよろよろと起きあがった。
白鳥敦也も瞬時に跳ね起きて戦闘態勢をとる。
オウルマンの仮面にはヒビが入り、バイザー部分は割れて木暮の左目部分が露出している。
赤く充血した目で木暮は眼前の敵をにらんだ。
すると――
――衛、『一つの拳』を遣え。
脳裏にいまは亡き、一心流拳法の師匠・真行寺肇の声が響き渡った。
剣聖・塚原卜伝が編み出した剣の奥義「一つの太刀」。
『一つの拳』は「一つの太刀」と同じく、受けもかわしもできぬ一撃必殺の究極の業。
それはある境地にいたって初めて発動する。
繰り出す剣(拳)先の軌道に光がみえる瞬間がある。
その光に向かって剣(拳)を走らせる。
チカラは必要ない。
ただ、まっすぐ光の先の一点に向かって撃ち込めばいい。
オウルマンは、いや木暮はみた。
光のレールが走っている。
その到達点は白鳥敦也の左胸――心臓の辺りだ。
木暮はおのが拳を光の軌道に乗せた。
なんの変哲もない正拳突きを。
ただ一点に向かって――
次回へつづく
朝日新聞が証拠をだせばいいじゃないか( `ー´)ノ