#4 驚異のパワーアップ!
「ボクの嫌いな、戦隊ヒーローみたいじゃないか!」
鋭い爪を振り立て、いきなり襲いかかってきたギルタイガーであったが、その動きは緩慢そのものにみえた。
オウルマンはバックステップすると、第二撃を放とうとするギルタイガーに向かってカウンターを入れた。
刃擬!
ギルタイガーの仮面が割れた。かつての闘いでみたあどけない少年の顔が露わになる。
「バ…バカな、このボクが……」
信じられないといった顔つきで少年――太賀条太郎はあっけなく昏倒した。
(ギルタイガーを一撃で倒したか……)
鷹の仮面のなかで鷹匠陣は顔をしかめた。オウルマンは以前よりも確実にパワーアップしている。
「隊長、ここはわたしが!」
鮫島凜花――ベムシャークが雪中に潜った。
鋭い背びれを突き出し、雪煙を蹴立ててオウルマンの足もとを狙う!
オウルマンが宙高くジャンプした。
(いまだッ!)
デッドホークはバックパックの翼を開くと宙を飛んだ。
オウルマンよりさらに高く舞いあがり、打ち下ろしのチョッピングライトを仮面に見舞う。
(なにっ!?)
だが、そのパンチは虚しく空をきった。
みると、オウルマンも翼を開いて軌道を変えている。
どうやら飛行能力も大幅に改善されたようだ。急角度で旋回して、いつの間にかデッドホークの真横に位置どられている。
(ま、まずい!!)
弩号!!
凄まじい衝撃が顔面にきた。脳が揺さぶられた。
デッドホークは撃墜され、雪床に墜落した。
「お、おのれッ!」
ベムシャークはさらに深く雪中に潜ると、赤外線レーダーをフルに働かせてオウルマンが舞い降りるのを待った。着地とともにその足を切断してやる。
だが――
いつまでたってもオウルマンは降りてこない。
そのうち周囲で妙な圧迫感を感じるようになってきた。
なにかに押し流されてゆくような感覚……。
「ああッ!!」
凜花は仮面の内部で叫び声をあげた。
自分の体が回転する。
奔流に呑み込まれた。
凜花は悟った。自分が潜り込んだ先は巨大な雪庇のなかであった。
オウルマンはそれを軽く突き崩しただけだろう。
ただそれだけで地上のサメは雪だるまのように転がっていった。
深く暗い谷底へと、真っ逆さまに……。
「ふう……」
仮面のなかで木暮はため息をついた。リメイションスーツは確実にパワーアップされ、木暮の戦闘力を十二分に引き出している。
戦闘が開始されてまだ5分とたっていない。
活動限界が訪れるまもなく相手を片付けてしまった。
木暮はいま、不思議な高揚感につつまれていた。
それとともに脳裏に浮かびあがる顔があった。
――白鳥千尋。
忘れ去ろうとしたはずなのに、なぜか彼女の顔が、姿が、声がフラッシュバックした。
いま千尋は沖縄でなにをしているのだろう。仲間を傷つけられ、怒りと不安に苛まれているに違いない。
この改良されたスーツがあれば千尋をまた守れる。守り抜くことができる……。
一瞬、そんな想いに駆られた、そのとき――
「見事だ……」
銀世界に溶け込むかのように純白のスーツを着た男が立っていた。
登山用の服装ではない。白いエナメルの靴を履き、雪原にぽつんと立っている。まさに場違い極まりない佇まいだ。
「おまえは……?」
「わたしの名は……石動稜」
「ッ!!」
石動稜――それはリメイションスーツの開発者であり、白鳥泰蔵の義理の息子の名だ。
「またの名を白鳥敦也。ワジャフ日本支部のグランドコマンダーだ」
石動稜こと白鳥敦也はそう名乗ると唇の端をつりあげた。
それはまさしく悪魔の微笑であった。
次回へつづく
意地だけで書いている(-_-;)