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華札のクニ  作者: 藤波真夏
第四記:秋国編
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十二章 静かなる凱旋

続けざまにすいません。秋国編最終話を更新します。最後まで読んでいただけたら幸いです。藤波真夏

十二章 静かなる凱旋

 珠からの真実告知から夜が明けた。

 宮殿の謁見の間では理穏や重臣たち、九穏院立会いのもと真聖に対しての感謝の儀が執り行われていた。

「真聖。その身を呈しよく守ってくれた。感謝してもしたりぬ。命の危険にさらしてしまったことは謝罪しねばならぬ」

「いいえ。理穏陛下が守れて僕も光栄です」

 真聖は頭を下げた。理穏は真聖を秋国公認で理穏の命の恩人として歴史に刻まれた。理穏はその礼にと秋国の硝子細工でつくられた剣につける飾りを見せた。

 真聖は思わずすごい、と声を漏らす。

 金色の飾りには硝子で冬国に降り積もる雪と真聖が仕える蓮の瞳を表現して淡い水色で雪が表現されている。そして師走の華札に描かれる鳳凰が細かい細工で表現されていた。それは誰もが息をのむほどに精巧なものだった。

「さあ、短剣を」

 真聖は短剣を渡す。すると短剣を家来が理穏のもとへ持ってきた。理穏はそれを受け取るとその飾りを短剣の柄の部分にカチッと音を立ててはめた。

 そして今度は理穏自ら真聖に短剣を腰にさしてくれた。理穏は立派な面構えだ、と言った。その勇姿に九穏院も胸いっぱいだった。

「ありがとうございます」

「真聖。きっとお前の主人である蓮は今、光の見えないドン底に沈んでいる。それを少しでも上に救い出し、優しい光を照らしてあげるのだ。それがお前の役割だ」

「はい、理穏陛下」

 こうして儀式は滞りなく進み、終わった。

 一方の蓮はというと理穏の自室で生気を失っていた。昨日といえその時の衝撃は心に大きな傷を残していた。今までの中で苦しい目にも遭いながら傷を治してきた蓮であったが、今回は訳が違う。修復不可能の心の傷を負った。

 目には涙を浮かべ、大粒の涙を一つこぼした。腕に刻まれた龍の痣は最初こそかっこいいと嬉しかったは、もう今ではすべての元凶と思い込み見るのも嫌になっていた。龍の痣は自分が父である蓮紀と一切の血が繋がっていない証拠のように感じたからである。

「蓮さま」

 蓮が顔をあげるとそこには珠がいた。いつも奥の方に引きこもっている彼女が部屋を出ているのは異様すぎた。何ですか? と蓮が聞くと珠はこう言った。

「あなたには興味が尽きないのです。本当に不思議なものです」

「華札継承者でもないのに?」

「その逆。私の中にある霜月の華札は結構意地悪で、神ならば見せてくれるものを断片的にしか見せてくれない。蓮さま、あなたのことを見たとき華札はすべてを見せてくれた。十二枚の華札は決して白札、白き龍には逆らえないということ」

 珠はそう言って蓮の隣に座った。珠の着ている巫女装束が蓮にかぶさる。真っ白でその中に赤が入る神秘的なもの。蓮は珠の顔を見上げた。珠はその視線に気づいた。その見つめるわけを聞くと話すのは気が引けると話してくれなかった。

 しかし珠はこのことだけは話した。

「この世界は残酷なもので出来ているのです。不確定なものは排除し、人は過去ばかりにこだわる本当に馬鹿で愚かな生き物。でも、未来を見る希望は持っています。蓮さま、あなたはお父上にとってみれば希望です」

「希望?」

 蓮が聞くと珠は希望なんて私はそんなものあまり信じてはいませんが、と一言置いた後に蓮さまは確実に希望であると付け加えた。

 そして仕事がありますのでと立ち上がり理穏の部屋を出て行こうとした。それを珠さま! と蓮が引き止めた。そしてありがとうございました、と述べた。それに対し珠は一言も発さずそのまま部屋を出て行った。

 しかし珠は廊下を歩きながら静かに笑った。



「蓮。そろそろ行かないと・・・」

「うん・・・」

 真聖が儀式を終わらせて秋国を出発する時刻になった。準備を終わらせて挨拶に行こうというときではあるがやはり蓮は元気がない。蓮、行こう、と真聖が手を差し出す。蓮は少し躊躇した。

「蓮?」

 結局手は繋げず、真聖の袖をつかんで歩いた。

 宮殿の外へ出るとそこには理穏と九穏院、福寿院が立って待っていた。理穏は蓮と真聖と同じ背丈に目線を合わせて言った。

「早馬を用意した。この馬で秋国と冬国の国境まで連れて行こう」

 理穏からの厚意に感謝した。沈んでいる蓮に九穏院が言った。

「蓮殿。落ち込む気持ちはわかります。しかし、あなたは蓮紀さまにとってみれば希望そのものなのです。そのことをお忘れなきように」

「九穏院さま」

 九穏院は珠と同じことを蓮にかけた。蓮は返す言葉もなく黙っていたが、遠くから蓮を呼ぶ声が聞こえてきた。振り返ると遠くに手を振りながらこっちに向かってくる紅葉が見えた。

「紅葉さん?」

 紅葉は息を切らして間に合ったーっ! と言った。すると紅葉は持っていた風呂敷を差し出した。忘れ物だぞ、と受け取ったその風呂敷の中身は綺麗な硝子の杯であった。以前、蓮が岩鉄の工房で作ったものであった。淡い青に鶴が描かれたものだ。

「師匠から預かってきた。色々あったけど、俺はいつまでも蓮の味方だ。何かあったらいつでも来いよ。師匠も大歓迎だってさ」

 紅葉が彼なりに蓮を励まそうとしている。蓮はありがとうございます、と力なくお礼を言った。蓮はそれを持って真聖と共に馬に乗った。

「蓮。真聖。気をつけて」

「はい、ありがとうございました」

 蓮と真聖を乗せた馬は勢い良く走った。蓮は振り返る。すると理穏たちが手を振って見送っているのがわかる。蓮は寂しさと悲しみをしまいこんで前を向いた。最初のようにフードで髪の毛を隠したりはしなかった。

 蓮の涙がまた静かに伝った。



 馬は走り続け、秋国と冬国の国境に到着した。

 蓮と真聖は馬を降り、礼を述べた。

「では私はここで」

「ありがとうございました」

 二人は礼をすると馬が少し落ち着きなさそうにしている。家来も困った顔をしている。すると蓮が馬に近づいた。すると馬は静かに落ち着きを取り戻す。すると蓮は足の部分の怪我を発見する。

「怪我、してるのか? 可哀想に・・・」

 蓮はそのままごく自然に馬の足に手を当てる。すると目が光り、体から水色の波動が出る。手を離すと怪我は一切なくなっていた。真聖はこれが華札をも凌ぐ白札の力だと改めて感じた。馬は感謝をしているのか蓮の顔を舐めた。

「もう怪我するなよ」

 そして二人は冬国へ足を踏み入れた。悲しい真実を抱えた蓮にとっては静かな凱旋となった。


 蓮と真聖が次に向かう国・・・、それは---。

 自然が豊かで永久凍土が山にある自然の国。そして蓮と真聖の生まれ育った国。

 

 冬国だ・・・。


最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の更新で秋国編は終了です。次は冬国編となりますので気長に待っていただけたら嬉しいです。感想&評価等よろしくお願いします。藤波真夏

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