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華札のクニ  作者: 藤波真夏
第三記:夏国編
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四章 夏国謁見の間

更新しました。最後まで読んでいただけたら幸いです。藤波真夏

四章 夏国謁見の間

 そして翌朝。

 城へ向かう準備をして七夕に連れられて城への道を歩いていた。夏国の活気は昨日と変わっていないが、蓮は銀髪を隠すように深くフードを被っている。なるべく目立たないように気を使って歩いた。

 そんな蓮に七夕が声をかけた。

「蓮。そんなに頭を隠す必要がどこにある。蒸し暑いんじゃないか?」

「いや、ちょっと・・・。それは・・・」

 蓮はフードをキュッと掴んだ。銀髪を見て恐怖に怯え、蔑まれてきた春国の出来事が脳裏に浮かんでしまう。七夕を信じていないわけではない。しかしまだ怖い。

「涼羽。久しぶりに城に行けて嬉しいだろ?」

「ま、まあね。四年ぶりぐらいかな・・・。懐かしいような・・・」

 涼羽はまだ眠たそうな織を抱いて苦笑いしている。真聖がそれを聞いて疑問を抱く。その疑問を涼羽にそのままぶつけてみた。

「涼羽さん。お城で働いていたんですか?」

「え・・・、まあね・・・」

 また言葉を濁す涼羽。何か隠しているのかもと真聖は感じる。すると七夕が真聖に一言。

「まあ城についたらいずれ分かることだよ。な、涼羽」

「余計なことを言うんじゃない」

 涼羽は反抗とばかりに七夕の頬をつねる。痛い痛い、と七夕が言う。しかしそんなことなどお構いなしに涼羽はつねる。それを見て真聖はごめんなさい、僕が悪かったです! と大慌て。

 それを聞いても蓮の心は晴れる気はしなかった。



 城の門をくぐると、多くの兵士が武芸の稽古に精を出している。あらゆるところで男たちの声が飛び交い、汗をかいている。それを見た真聖はさすが武の国だー、と見入っている。

「すごーい!」

 涼羽の腕が限界であったために交代で織を抱いていた七夕。織も七夕を見ながら稽古をしている若者たちに指をさして見てみて! と言わんばかりだ。

「・・・懐かしい」

 涼羽がつぶやいた。すると涼羽の着物の裾を握る感触が伝わった。涼羽が見るとそこには稽古している若者たちを怯えた目で見ている蓮があった。水色の瞳は暗闇に堕ちて暗くなっていた。

 涼羽が蓮の視線に合わせて蓮の顔を見る。

「蓮。どうしたの? 気分でも悪い?」

 蓮は何も言わずただ兵士たちを怖いものを見る目で見続けた。すると七夕と涼羽を見つけて若者たちが集まってくる。

「七夕さま! 涼羽さま!」

 男の汗臭い匂いが二人を包みこむ。若者たちが二人に見せるのは憧れの視線。その光景に蓮たちは驚いた。織と真聖は七夕に、蓮は涼羽にしがみついた。

「みんな、久しぶりだね。元気だった?」

「はい! 涼羽さま、七夕さまと結婚して少し丸くなりました?」

「これ以上言ったら、弓矢で射抜いてもいいんだぞ?」

 涼羽は笑顔のままで怒りの感情をあらわにすると、若者は冗談ですよ、と笑って誤魔化す。七夕はその光景を見てちょっと悔しげで切ない視線を向けた。あ、そういえば、と七夕は集まってきた若者たちに聞いた。

「今日は翠徳さまとお会いすることになっているんだ。コウ将軍はどこか知ってる?」

「将軍ならあちらに・・・」

 一人の若者が指をさす。そこには鎧を身にまとい、立派な装飾の剣を下げた男がいる。そこへ七夕と涼羽は向かう。蓮たちも二人と一緒についていく。

「江将軍!」

「おお! 涼羽じゃないか! 久しいな!」

 豪快な江将軍は涼羽の姿を見て、感嘆な声を上げた。そして二人は江将軍に対して忠誠を誓う体勢を取る。普通は兵士が行う体勢を涼羽が知っているのが、蓮と真聖には不思議な光景だった。

「長い間失礼いたしました。娘の織に一度お目通りを・・・」

「おお! この子が涼羽と七夕の娘か! 青い目のところは涼羽そっくりだな!」

 江将軍はガハハと笑うと織を抱こうとする。しかし織はその豪快さが怖かったのか、七夕から離れようとしない。顔も合わせてくれない。

「すいません、江将軍!」

「気にするな。いやー、怖がられてしまったかあー」

 江将軍に対して涼羽は謝るも、気にするな、と返された。江将軍は次に蓮と真聖に視線を移す。この少年たちは? と聞かれて七夕は説明する。

「この子たちは訳あって預かっている少年たちです。翠徳さまに謁見する子たちです」

「翠徳さまがこの少年たちに?」

 江将軍が怪しがっている。蓮が涼羽の着物をギュッと握る。怖いんだな、と涼羽も理解して言おうとした時、真聖が前へ出た。

「僕たち、冬国から来たんです」

「冬国から? これは遠くから来たんだな・・・」

 江将軍が涼羽に視線を移すと涼羽が自分の鎖骨にある蝶の痣を見せる。それを見て江将軍は全てを理解したように頷いた。そういえば足止めをして悪かったな、と江将軍は言った。

「さあ、翠徳さまが待っているぞ」

「失礼いたします」

 礼をしてその場から去ろうとした時、涼羽を呼び止める。

「涼羽。いつでも戻ってこい。わしはお前が戻って来ることを歓迎するぞ」

「・・・考えておきます」

 涼羽はまた軽く会釈をしてその場を後にした。


 謁見の部屋に入った五人は翠徳が来るのを今か今かと待っていた。待っている間にも緊張が走る。蓮は謁見の部屋に入ってから喋らない。涼羽は心配で見つめる。織も蓮のことを呼んで構って欲しいという気持ちを出す。

 真聖も蓮を心配しているが、なんとなく理由はわかる。しかし話しかけづらい。蓮が自分の口から話すことに希望を託した。

 すると家来に連れられ翠徳がやってきて玉座に座る。そして七夕と涼羽も先ほどと同じ体勢を取る。蓮と真聖は座って待ち構える。

「久しいな。涼羽。息災であったか?」

「はい、翠徳さま。大事はございません。お心遣い感謝いたします」

 うむ、とうなずく翠徳。玉座を離れて七夕と涼羽の元へと近づいていく。それと同時に蓮の心臓はものすごい早さで鼓動を打ち鳴らす。

「君達が冬国からの客人か。事の詳細は七夕から聞いた。冬国首領・睦月蓮紀の息子である蓮。その側仕えで師走の華札継承者・師走真聖。歓迎しよう」

 蓮と真聖はありがとうございます、と頭を下げた。早速ですが、と蓮と真聖は華札継承者を探しているということ、黒龍の封印を目指していること、そして蓮紀が意識不明であることなどの詳細を話した。

「なんと・・・、蓮紀殿が・・・。これは大事じゃ」

「どうか、翠徳さまのお力をいただきたいと・・・」

 翠徳はすでに答えは決まっておる、と言い切った。真聖と蓮と同じ視線にして言った。

「我が夏国も君たちに協力しよう。黒龍によって国民たちが苦しむことがあってはならないからな。水無月涼羽、文月七夕! 良いか、この少年たちを守り、残りの葉月を身に宿す華札継承者を見つけ出し、封印を完遂するのだ」

「はっ!」

 涼羽と七夕は頭を下げて忠誠を誓う。真聖と蓮は顔を見合わせている。どうやら同じことを考えているらしい。


 涼羽さんって一体・・・。


 その光景を見た翠徳は二人の気持ちを汲み取って説明をしてあげる。

「涼羽はこう見えて、俺の部下だ。彼女の弓はこの国一で彼女にかかれば百発百中だ。江将軍の元で鍛えられた、夏国の女武将だ」

「うそ?!」

 涼羽は笑った。蓮と真聖は脱力してへたり込む。内緒にしてたみたいだな、と翠徳も笑った。

 謁見が終わり、帰ろうとすると今日は城に泊まっていけ、と言われ、お言葉に甘えて今日は城に泊まることになった。

「すごーい! ひろーい!」

「すごいね!」

 織が真聖の手を引いて連れる。織! と涼羽が声をかけるも好奇心を抑えることができないようだった。蓮は先ほどの翠徳のことを思い出していた。どうやら七夕の言うことは正しいようだが、まだ信用できない。

 ため息をついて部屋の前までやってきたが、事件は起こった。

 廊下に突如として風が吹き、蓮が隠していたフードが脱げる。その瞬間、兵士がそこを通りかかった。蓮が見上げると兵士たちが驚いた表情を向けている。

「銀色とは綺麗な髪だ」

 兵士が話しかけようとした時、それを勢い良く振り払って逃げ出した。蓮の中で拒絶反応が起こりその場から離れるように逃げ出す。

 真聖が止めようとするもそれすらも振り払った。織の声も聞こえない。七夕も呼ぶが聞こえない。涼羽は兵士の胸ぐらをつかんだ。

「おい。あの子に何をした?」

「す、涼羽さま?! 申し訳ありません。ただ、変わった髪色だったもので・・・」

 兵士は涼羽の怒りの形相に驚いている。涼羽が武将だった時の表情が垣間見える。涼羽は蓮の逃げた方向を見つめながら兵士に言った。

「触れたくないこともあるんだ。それをわきまえるようにしないとな」

「涼羽さま・・・」

 蓮を追おうとした真聖を涼羽が止める。涼羽は真聖の耳元で小さな声で囁いた。それを聞いた真聖は頷いた。

「七夕。あとは頼んだ」

「わかったよ」

 そう言い残し、涼羽は蓮の逃げた方向へ走りだす。七夕は真聖に涼羽に何を言われたのか聞いた。すると真聖はこのように言った。


 蓮のことは私に任せて、織と七夕をお願い。


 とりあえずは部屋の中へ入ろう、と七夕は真聖たちを促した。


最後まで読んでいただきありがとうございました。感想&評価等よろしくお願いします。藤波真夏

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