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華札のクニ  作者: 藤波真夏
第三記:夏国編
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一章 突然の災難

更新しました。今回より「夏国編」が開始です。最後まで読んでいただければ幸いです。藤波真夏

一章 突然の災難

 春国を出て道を歩くと、気候の変化が見られる。暑さが先ほどよりも増していることを蓮たちは身をもって知り始める。

「あーつーいー」

「あーつーいーよー。ねえ、休憩しない?」

「さっき、休憩したと思うけど・・・」

 蓮と真聖は頻繁に休憩しながら夏国の中心部へ向かう。水はすでに飲み干してしまった。しかし体は水を欲してしまう。汗が大量に流れているため、常に水分欠乏状態が続く。気候の変化からすでに夏国に入ったと思われた。

 大きな岩に腰掛けて汗を拭う。蓮は銀髪を隠すために花街で女将さんに作ってもらったフード付きマントを付けている。そのため汗が真聖以上に出てくる。

 フードを取ると風が吹く。汗が乾いて冷たく感じる。

「ねえ、真聖。そろそろ水を飲まないと干からびる」

「そ、そうだね。僕も限界だよ・・・。本当にこのままじゃ、冬国産蓮と真聖の干物になりかねない・・・」

 蓮と真聖は暑さに耐えながら川を探す。

 久しぶりに見た森に二人の気持ちは高まった。森に生えた樹木の葉っぱたちが太陽の日差しを遮り、少し涼しく感じた。

 そこはあまり人通りが少ない。が、春国で味わった経験を踏まえればもしかしたら夏国にも歓迎されない可能性が高い。しかも春国を出る前に春国首領・史悠が言っていたことを思い出す。


『夏国は四季の中に一番の軍事力を持っている、武の国だ。夏国を怒らせれば攻められてあっという間に占領されてしまう。武器を持った男たちが街中を闊歩している、という噂もある。気をつけろ・・・』


 この森は兵士たちにとっては死角にあたる。見つかる可能性は限りなく低い。捕まるよりはマシだ、と二人は森の中を歩いた。そして水の流れる音を探しながら歩く。

「お? これは・・・」

「これ、果物?」

 水を探す間、気になっている果物をもぎ取り、水分補給をした。甘い果実が口の中に広がり、二人の顔に笑顔が戻る。新鮮で水々しい果物に満足げだ。

 果物でその場しのぎをして急いで川を探す。日陰が多い森の中は先ほどとは打って変わり天国に感じられた。

途中から二手に分かれ森の中を探索する。すると蓮の耳に水が流れる音が聞こえて来る。もしや、と思った蓮は音のする方向を辿っていくと念願の川を発見した。

「真聖! みつけたよー!」

 蓮の声は遠くまで響いた。真聖も運良く側にいたため、すぐに蓮のそばへ向かった。やったね! と二人で手を叩いた。待ちに待った念願の水だ。水は透き通り、太陽の光でより輝いて見えた。

 二人は水を手のひらですくうと口の中に注ぎ込んだ。

「つめたーい!」

「生き返るー!」

 蓮と真聖は勢いのままに水を体の中に入れていく。だいぶ歩いてきたから今日はここで野宿だね、と話した。

 夜になって二人は夕食を食べ始める。今日も二人で協力して作ったものばかり。さすがに冬国を出てすでに一ヶ月以上は経過している。この二人旅も慣れ始めていた。子供の足ではかなりの時間も有する。

 荷馬車などにも情けで途中まで乗せてもらいながら距離を稼いだ。

 二人の足はもうパンパンだ。筋肉痛に体が悲鳴を上げている。これ以上進んでも歩けないし、獣に襲われたら元も子もない。

 これ以上は進まないほうがいいね、とその場にとどまった。

 夜になれば涼しい風が体を包み込んだ。昼の暑さが嘘のようだった。二人は涼しげな風の元でそのまま眠った。



 朝になると気候はとんでもない変動を見せていた。

 昨日まであんなに晴れていた天気は一変、土砂降りに変化していた。穏やかな流れだったあの川も勢いが増して大きな龍のように濁流を作っていた。

 蓮と真聖もその勢いに驚いて荷物をたたんで川のそばから離れようとする。しかし雨と共に風も激しく吹き始めた。

「真聖、これマズイね」

「このままじゃ吹き飛ばされちゃうよ」

「急いでここから離れよう」

「うん!」

 その時、今日一番の風が吹いた。真聖と蓮の着物にあたり空気を含む。体が持っていかれそうになる。真聖は足を滑らせ川へ落ちそうになる。すると蓮が手を思いっきり差し出して真聖を助けようとする。真聖も急いで手を伸ばした。

 二人の手はつながった---、ところが蓮も雨水で湿った石に滑り、二人とも濁流に真っ逆さまに落ちた。

 バシャーン! と大きな水しぶきを上げて二人は濁った水の中に飲み込まれた。最初に顔を出したのは真聖だった。

「ゲホッ! ゲホッ!」

 息を整えて周囲を見渡す。一瞬の間にかなりの距離を流されたようだ。しかし蓮の姿が見当たらない。真聖は動きにくい水の中で名前を呼んだ。

「れーん! れーん!」

 すると真聖の中にある潜在意識が働いた。蓮が気を失っている様子が見えた。まさか、と思いながら水の中に潜った。荒々しい濁流の中で目を凝らして見ると、動く気配のない白いものがこちらへ流れてきている。

 真聖が急いで顔を上げてもう一度見ていると、蓮が気を失って流れてきている様子が見えた。蓮は目をつむりぐったりしている。

「蓮!」

 真聖は蓮の体を掴んで離さないようにする。何度真聖が呼びかけても蓮の意識は回復しない。しかも濁流の中で成す術は何もない。このまま行けば夏国の外まで流れてしまう可能性が高い。

 なんとかしないと、と焦っていると明らかに水の音が違う。


 何? この音・・・。ま、まさか?!


 蓮の不安は的中してしまった。この先には川がなく、滝が勢い良く流れていたのだ。真聖は覚悟を決めて蓮から離れないようにがっちりと体を掴んだ。そして流れに乗り滝壺に真っ逆さまに落ちていった。真聖も落ちた際に大量の水を飲み、意識を手放した。

 二人の体は川の流れに沿ってずっと流れていった。



 一方、夏国首領の入る城には多くの兵士たちが出入りしていた。未曾有の台風に対策に追われていたのだ。彼は中年の男性で日焼けをしている。腕に着いた傷が歴戦の印だ。雨に濡れるのなどお構いなしに指示出しを続ける。

「急ぐのだ! このままでは領民たちが危険だ! 全力で守るのじゃ!」

 そして首領が空を見上げる。空は暗く、雷が轟く。まるで大きな龍がそこにいるかのようだった。


 この嵐、まさかな・・・。何かが起こる前触れなのだろうか・・・?


 首領は空を見上げて思った。

最後まで読んでいただきありがとうございました。感想&評価等よろしくお願いします。藤波真夏

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