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業火の剣士と忘却の魔導師  作者: BLACK BOX
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5話 二人で

凱帝かいてい学園の医務室。そこに、ベッドで眠る玲愛れいなと、それを見つめる勇輝ゆうきの姿があった。

「………………………………………………」

(…………寝顔も可愛いな)

そんな変態の様なことを考えていると、開け放たれた窓から桜の花弁が一枚入り込んで来た。

花弁は宙を舞い、やがて玲愛の髪の上に落ちた。

「――――――ん?」

花弁を拾い上げようと顔を近づけた。

――――――その時、

「………………………………」

「――――――――ッ!」

目を覚ました彼女と、見つめ合う。

「――――――きゃあああ!」

彼女の絶叫に、ガタッと音を立てて椅子から落ちる。

「痛ってぇ…………いきなり叫ぶなよ!」

起き上がって文句を言う。

「だって…………あなたが…………変なことしようとしたからっ!」

彼女は顔をゆでダコのように真っ赤にして怒っている。

「してねぇよ、てか変なことってなんだよ!」

彼女が怒っている理由がわからず聞き返す。

すると玲愛は更に顔を赤らめ――――

「それは…………その…………もう! 変態!」

強烈な右ストレートを放つ。

「何でだよ!」

この後、約十分もの間彼女は怒り続けた。



――――――ようやく玲愛の怒りが収まった頃、

「なぁ……」

勇輝は試合中から確かめたかったことを切り出した。

「お前が記憶を無くしたのって、五年前の今日なんだろ?」

「…………それより前の記憶が無いから…………そうだと思う」

「それって、“十字侵攻じゅうじしんこう”の日だろ?」

“十字侵攻”。五年前の四月八日、約三十ヶ国もの国を襲った同時多発テロ。“十字軍レギオン”と呼ばれる魔導犯罪者集団が、非魔導師ひまどうし達を雇い各国の主要都市を襲わせたのだ。

しかし、捕まえたテロリストを尋問しても、組織のことは何も知らないと言うのであった。

「記憶を探る魔法を使って見たら、空白・・の部分があったらしい」

「空白?」

「ああ、組織に関する記憶が消されていたんだ。とてつもなく強力な魔法で」

「――――――ッ!」

属性魔法にそんな魔法はない。つまり、固有魔法ということになる。

「固有魔法は唯一無二、一つとして同じものはないらしい」

「…………つまり…………わたしの記憶が無いのは……消されたから?」

「ああ、その可能性が高い」

問題は何故消されたのかだが、考えたところで解るはずがない。



――――――しばしの沈黙の後、勇輝が再び話始める。


それは玲愛の意識が戻るのを待っていた理由。

彼が今一番伝えたかったことである。

「…………お前が最強を目指す理由ってさぁ、過去を見ないようにするためだって言ってたよな」

「…………うん」

「それってさぁ、未来じゃなきゃダメなの?」

「――――えっ?」

「見えない過去から逃げるのも、まだ先の未来を見続けるのも、どっちもを見てないじゃん」

少し間を置いて、窓の外を眺めながら続ける。


「それってさぁ、すっげぇ勿体無ぇよ!

だって、今見えてる景色はこんなにも…………輝いてんだからさぁ」


――――その時、風に煽られた桜の花弁が、一斉に宙を舞った。

風に吹かれるまま、踊るように舞う花弁。


「…………ホントだ…………綺麗」

その時初めて、玲愛は周りの景色を見た気がした。

「未来に向かって突っ走るのも良いけどさぁ、たまにはゆっくり歩いてみんのも……良いんじゃねぇの?」

周りの景色を見ないから、道に迷う。

目の前の道の更に先を見るから、つまずいてしまう。

走っているから、一人になる。

それは正しく、玲愛の生き方だった。

「記憶が無いならさぁ、今から思い出たくさん作ればいいじゃん、凱帝ここで!」

「…………うんっ! そうする!」

その時の顔は、今まで見たどんな顔よりも彼女らしい…………

目に涙を浮かべながら笑う玲愛を見て、勇輝はそう思った。


「ねぇ、勇輝は…………最強になりたいの?」

涙を拭いながら尋ねる。

「あの人最強らしいし…………そうなるなぁ」

「…………だったら…………その道、一緒に歩いても良い?」

「…………それって?」

鈍いなぁと、ため息をついて――――

「わたしの…………パートナーになってくれる?」

「――――――えっ!」


嬉しかった。憧れに追い付くという我がままな夢、その道を共に歩いてくれるというのだ。断るはずがない。


勇輝は拳を突き出し――――

「ああ、二人でなろうぜ、最強の魔導師に!」

これに玲愛も自らの拳をぶつけ、

「よろしくね、勇輝!」


――――――その時、一枚の花弁が部屋へと入り込む。

それはベッドの上の花弁と重なり、再び風に乗り、

――――――空へと舞い上がった。






なんか最終回みたいな雰囲気だけどまだまだ終わりません。

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