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業火の剣士と忘却の魔導師  作者: BLACK BOX
2/26

プロローグ 始まりの日

――痛い

擦りむいた膝が痛む。

――怖い

いつまた爆発が起こるかわからない。

「この子だけでも……守らないと」

そう言って抱きしめるのは、名前も知らない少女だった。

その時――

『何処に隠れやがったッ!』

『まだガキなんだ、遠くには行けねぇだろ』

『黙って探せよ』

数人の男の声が響いた。

(あいつらが来た……)

足音がこちらへと近づいてくる。

(守れないのか……俺は)

そして――

「見~つけた」

場違いな程に明るい男の声が聞こえ、おそるおそる顔をあげてみると。

「あいつら……じゃない?」

そこに居たのは、短い金髪を後ろで結った二十代の男だった。

「あいつらってのは、あのテロリストのコトか?」

男の問いに俺は頷いて肯定する。

「あいつらなら問題ない。オレにかかれば一撃だ」

男が自信満々に言い放った次の瞬間――

『居たぞッ!』

『変な男も一緒だッ!』

テロリストが部屋へとなだれ込んでくる。しかし、男は何も聞こえていないかのように俺の前にしゃがみこみ――

「その子……妹か?」

男は俺が抱き抱える少女を指差しながら問いかけた。

「違う」

「じゃあ、友達か?」

「違う」

「じゃあ誰だよ」

男は半ば呆れながら聞いた。

「知らない」

「お前……まさか名前も知らないような奴を助けたってのか!?」

俺は頷いて肯定する。

「ふっ、お前、気に入ったぜ」

『オイッ! 俺達を無視るとはいい度胸じゃねえか』

突然叫び、銃を向けるテロリスト逹。依然、男は彼らに背を向けたままだ。

「だがお前にそいつは守れねぇ。何でかわかるか?」

俺は無言で続きを促す。

「お前が弱いからだ」

「――ッ」

「オレなら守れる、強いからな」

――瞬間、幾十もの銃声が轟いた。

しかし、放たれた銃弾が男に当たることはなかった。彼に近づいた弾丸は全て火花を散らして消えてしまう。

男がゆっくりと立ち上がり、俺に背を向ける。そして――

「悔しかったら此所まで来い」

そう言いながら男は地面を指差す。それはなんの変哲もない床だった。しかし、そんなことを言っているのではないと直ぐに理解できた。

“銃弾すら効かないオレと同じくらい強くなれば、お前に守れないものはない”

確かにそう言っているように聞こえた。だから――

「行ってやる……いつか必ず」

“必ず追い付く”と、その背中に宣言する。

「待ってるぜ」

その宣言をしっかりと受け止め、男は腰に差した鞘から剣を抜く。すると、眩い光が世界を覆い尽くし――

火野勇輝ひの ゆうきの意識は、ゆっくりと覚醒へと向かっていった。



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