11話 【刻みし軌跡】
「雪乃、お前は次の狙撃地点へ移動しろ」
黒木が指示を出す。
「兄さんは?」
「さっきので狙撃警戒されたろうから、俺が誘き出す」
狙撃により位置がバレた雪乃は移動、黒木は下に降りて敵を誘き出す作戦だ。
「援護、頼んだぞ……」
「りょ~かい♪」
そして二人は移動を開始する。雪乃は隣のビルへ跳び移り、黒木は地上へと向かう。
――――一方、勇輝たちは……
「…………流石にキツいな……」
そんな言葉がこぼれる。彼は今、二人の敵を同時に相手していた。
「――――ッ!」
二人の攻撃をギリギリで捌く。その時、相手の一人が斧を振りかぶった。
(今だっ!)
その隙を見逃さず、敵の懐へ入り込もうとする。しかし――――
「――――――くっ!」
もう一人が透かさず刺突を繰り出す。
(この短期間でこの連携、すげぇな)
二人の連携を前に苦戦を強いられる。
(コンビネーションなら負けてねぇけどな!)
「玲愛!」
離れた場所で別の敵を相手していた玲愛を呼ぶ。
「そろそろ固有魔法の使い時じゃないか?」
「わかった! こっち!」
勇輝はすぐさま彼女の隣に滑り込む。
「作戦通りに…………」
「ああ」
二人は背中合わせにして立ち、剣を構える。そこに、三人の敵が同時に斬りかかる。
「――――ッ」
勇輝が二人の攻撃を同時に受け止め、押し返した。
「勇輝! 伏せて!」
玲愛も相手の攻撃を弾きつつ指示を出す。
そして――――
「【刻みし軌跡】!」
幾十もの剣閃が迸り、周囲の敵を斬り刻んだ。
それは敵の背後や、彼女の死角など、絶対に刃の届かない場所にまで及んだ。
「流石だな、玲愛」
「…………皮肉だよね。記憶を無くしたわたしが、空間の記憶を呼び起こすなんて……」
彼女の固有魔法。それは、彼女の剣が走った軌跡を再現するというものだ。
先ほどの攻撃のように、複数の軌跡を同時に再現することもできる。
「違うだろ。お前が刻んだ軌跡は、お前が今ここに居る証なんだ」
「…………そうだね。これはわたしが刻んだ記憶……ここに居る証……」
勇輝の言葉を繰り返す玲愛。
と、その時――――
「ようやく片付いたみたいね。次はあたしと遊んで貰えるかしら?」
声の方へと目をやると、槍を担いだ女子生徒が悠然と立っていた。
「あれって……確か、警戒対象の……」
「ああ、四組の世川さんだ」
「あら? あたしのこと知ってるみたいね。手間が省けて助かるわ」
そう言うと彼女は槍を構え――――
「さぁ、始めましょ」
己の固有魔法を、発動した。
Aチーム 残り四名
Bチーム 残り一名
Cチーム 残り三名
アイデア出ないときはホント出ないね。