『妖精たちのいるところ』
「この自動販売機には、ラベンダーの妖精が宿っている」
私は父と一緒に、兵庫県多可町に来ていました。
そこにはボタンを押すとラベンダーの香りがする自動販売機が置いてあって、近くの町に住む父が、どうしても見に行きたいと言ったからです。
そしてボタンを押して……父が言った一言。
それが、「この自動販売機には、ラベンダーの妖精が宿っている」でした。
「住んでないよ。っていうか、人前でそういうこと言うのやめてよね。恥ずかしい」
そう文句をつけると、「妖精はいるのだよ。私を呼んでいる。こっちの世界へおいでと」と目を閉じてつぶやく父。
ああ、誰か父をまっとうな社会人にしてはくれないでしょうか。
どこへ行ってもこの調子。
妖精、魔法、エルフにウィザード。
頭の中はファンタジー世界のそれで埋まっている父からしてみれば、この世界は退屈なのでしょう。
だから、つい。
「妖精の世界に行きたい」
なんて、電車の中でつぶやいたりするんです。
はぁ……付き合う身にもなってほしい。
こんなことじゃ、彼氏もできやしない。
早く娘離れしてくれないかな。
――思春期に悩む少女 ユキ(14才)
ニュース by ねとらぼ『「ラベンダーの香りが出る自販機」が兵庫県に登場 ボタンを押すと香りが広がる謎の機能の理由とは?』