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ミリのシンデレラストーリー   作者: ゆいき
イザベラ姫の災難
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飛行船

私は湧き出るイメージにすっかり夢中でデザイン画を描きまくっていた。


「ほら、見てネイカ!!これなんてミントリオっぽくていいでしょ!?」


ずっと付き合わされていたネイカはうんざりしながらも目を通した。


「…なんで帽子から羽が生えてんのよ」

「それが空のイメージなんだってば!!」

「うーん…。っていうかミリ絵下手すぎ。いまいち良さが分かんないんだけど」

「えっ」


自分の絵を見ながらむむむと唸っているとコンコンと扉がノックされた。

私とネイカは顔を見合わせた。

ネイカは私が部屋の奥へ隠れるのを待ってから返事をした。


「はい。どちら様でしょうか」

「ここはイザベラ姫の部屋であっているかな?」


聞こえたのは豊かな低音が特徴的な聞き覚えのある声。

ネイカはまさかと思いながらそっと扉を開いた。

そこにはやはり今朝見たばかりのミントリオ王がいた。


「やぁ。こちらの姫だけ飛行船へ乗るのを断ったと聞いて直接誘いに来てしまったよ」

「あの…」

「失礼するよ」


これは流石に入れざるを得ない。

ネイカは部屋にずかずか入った王の後を慌てて追った。

ネイカ以上に驚いていたのは私だ。

だってまさか王様が直々に来るなんて思いもしないじゃないか。

カーテンに掴まったままぽかんとしていると目の前に立ったミントリオ王はまじまじと私を見下ろした。


…な、なに。

なんか目が怖いんだけど。


「あ、あの…」


ミントリオ王はすぐににこやかな笑みを浮かべた。


「いやこれは失礼。中々不思議な魅力の姫君だと思いましてね」

「は、はぁ…」

「何故そのような黒いドレスを?」

「え…。あの、…好きだからです」


間抜けのように返事を返すとミントリオ王はまた意外そうに私をまじまじと見た。

なんなんだよ一体。


「イザベラ姫は空がお嫌いですかな」

「え、あ、いえ…」

「それならばやはり一度おいで下さい。飛行船は我が国の誇り。安全で怖くなんてありませんしきっと素晴らしい体験ができますよ」

「いや、私は…」

「行きましょう」


王は私の手を掴み、腰に手を添えると半強制的に部屋を連れて出た。

私は歩きながらも引きつっていた。

なんて言うか、こういうエネルギッシュな人は苦手だ。

ミントリオ王は城に直接作られている発着場まで私を連れてくると、用意していた案内人に預けた。

そして良い旅をとにこやかに挨拶をして颯爽と離れて行った。

私は案内人に断りを入れようとしたが、後ろから来る人に流されて結局桟橋まで来てしまった。


「え、ど、どうしよう!?」


焦っているとネイカが私の背を押した。


「ここまで来たら行くしかないでしょう?ほら、早く行って。後ろがつっかえてる」

「うわわ…」


離れた場所から見ると大きな風船の下にちょこんとある乗り場だが、中に入るとかなり広い。

しかも王様御用達仕様のせいか豪華な造りだ。


「こ、これが飛ぶの?今から?」


私は席には座らずに壁際の手すりにつかまった。

ネイカはきょろきょろと辺りを見回した。


「フリンナ姫たちはいないわ。きっととっくに乗り終わったのね」


それは不幸中の幸い。

ほっとしているとじきに出発の合図が聞こえてきた。

ぎゅっと目を閉じ手すりを握りしめていると、程なくして船が動きだした。


「うわは!!う、動いた!!」

「うわぁ」

「や、やだやだ恐いぃ!!」


私は人の迷惑顧みずぎゃあぎゃあと叫びまくっていた。

体には感じたことのない負荷が軽くかかる。

やがて揺れがおさまってくると隣でネイカが声を上げた。


「す、ごい…!!ミリ!!見て!!凄いわよ!!」


私は恐る恐る顔を上げた。


「あ…」


眼前に広がっていたのは見たこともないほど雄大な景色だった。


「た、高い!!」

「うん!!空よ!!私たち今本当に空にいるのよ!!飛んでる!!」


ネイカはすっかり興奮して目をキラキラさせていた。

私はといえば腰が引けてどうしようもない。


「こ、これって落ちたらどうなるの!?」

「大丈夫だってば。ほら、あっち見てよ!私たちが通って来た道が見えてるわ」

「ひえぇ!!山が近いぃ!!これって当たったらどうなるの!?」


ネイカはうるさい私に顔をしかめた。


「もう、しっかりしなさいよ。私あっちの景色も見て来る」

「う、うん…。ここで待ってる」


私はその場にしゃがみこむとネイカに手を振った。


いやぁ、これはない。

ないわぁ。

早く地上に降ろして…。

景色もろくに見ずに小さくなっていると、ふと私を見ている人が何人もいることに気付いた。

城から出る船だけあって身なりの良さそうな人たちだが、その目線は何だか険のあるものだ。


「…さ、騒ぎすぎ?」


私は更に小さくなっていたが何か違和感がある。

だってあの扉近くの人なんか腰の剣に手を置いてるし、斜め前の男の目からは殺意すら感じる。


え?

え?

飛行船でうるさくすることって死ぬほどマナー違反だったとか??


「ミリ!ミリこっち!来て来て」


ネイカが明るい声で帰ってきた。

私は慌てて唇に指を当てた。


「ミリ、まだへっぴり腰なの?」

「しーっ!!ネイカ、しーっ!!」

「何よ?それよりこっち来て!遠くに海が見える。私海って初めて見た!」


ネイカは私の腕を引っ張ると無理やり立たせた。


「ほら、景色見ないと勿体ないでしょ?」

「だから、ネイカ!静かにしないと…」

「もう、怖がりなんだから!こっちよ」


ネイカは御構い無しで私をぐいぐい引っ張って行った。

私がいなくなると、睨んでいた男は困惑した顔で扉前の男に言った。


「…本当に今のがそうなのか?」

「あの顔をお前も見ただろう?間違いない」


他の者たちも低く唸った。


「だが随分イメージと違う」

「やはり一刻も早く身柄を拘束すべきでは?」

「うむ…」


男たちは声をひそめると何やら物騒なことをしばらく相談し合った。


飛行船が城に戻ると、私は覚束ない足取りで一番最後に降りた。

何だか地面を踏んでもまだふわついてるような気がする。

ネイカは私を支えながら歩いた。


「全く…。あれくらいで情けないなぁ」

「だ、だって…」

「少し休んでから部屋へ戻る?お水もらってこようか?」

「うん…。ありがと」


私は気持ちが落ち着くまでしばらくその場で休憩した。

小一時間ほどしてやっとちゃんと立ち上がれるようになってから、私たちは部屋にった。

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