~7~夏の日1(命の重さを感じる)
暑いよねぇ
草木が生え命が芽生える季節。
新緑が辺りを包み込み辺りを照らす太陽が肌をつきさす。
草を草食の動物が食べ、それを肉食の獣や人間が食べ新たな命を育んでいく。
それは僕の住んでいた前の世界の出来事。
人命は重く、それ以外は少なくならない限り尊重されない世界。
それでも人間に近いものの死の重さはあるが。
そんな世界とはかけ離れた異世界に飛ばされた僕は、あまりにも違う生活に戸惑うばかりだった。
誰もが命を簡単に落とす世界に生きて魔物が人が人の命さえも簡単に奪ってしまう。
(なんど吐いたことか)
狩猟で獲た獲物をさばいたことなんてない。
僕の前に並ぶ肉はスーパーマーケットで母親が買ってきてくれた肉であり加工済みの食材で周りにはジャンクフードなどになった食べ物が溢れ罪悪感や嫌悪感などとは、ほとんど無縁だった。
(しばらく肉とか食べれなかったなぁ)
思い出すのはフィーネが嬉しそうに獲物を手際よく処理して『今日はご馳走だよ』と笑っている姿だった。
(ご馳走って言われてもさ食べらんなかったけど)
それでも1年、2年と経つうちに慣れるもので、その頃には僕も嫌々ながら狩猟や獲物を処理するのにも慣れていたんだよな。
自分が得た食材を料理して食べる食罪。
そんな当たり前のことを理解したのも、その頃だった。
命を奪い、命を食らい、命を作る。
それは気付かなかっただけで何処の世界も同じなんだなって農業技術も発達してなくて豊作、不作と食べることにすら不自由なこともあった世界では有難く感じたものだ。
その頃には気付いていたのかもしれないな僕のやるべき道、この世界に召喚された理由を。
運命だったのは魔王を倒すのも含んでいたのかもしれないけど。
2つの太陽が昇る暑い日差しを感じると思い出す。
(でも強くなっても暑いもんは暑いんだよぉぉぉぉおおおお)
クーラーも扇風機すらない世界のアルメド領の執務室で僕は叫んでいた。
ここまで読んでくださりありがとうございます