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第7話・シドロモドロの借主くんの証言に吠える金貸くんなのだった。

借主くんの証言に吠えまくりたい気持ちを、ぐっとこらえる金貸くんなのだが・・・

ついに金貸くんはキレてしまい・・・

「では、金貸くんからお金は受け取っていますが、幾ら受け取ったかはその時点では数えていないと言う事ですね」

裁判官女史の尋問が山場を迎えようとしている。しかし、裁判官女史は借主くんに対する心証形成判断から、借主くんの証言の矛盾を突く。

「お金を受け取ってから、お酒を飲みに行ったと言うことですが、その時の飲食代は当事者間で、どういう支払い方をしたのですか」

「よくは覚えていませんが・・・割り勘にしたのか、金貸くんかボクのどちらかが全て支払ったのか、今は思い出せません・・・」

これを聞いた金貸くんは、借主くんに突進したい勢いであったのを押えて、腹の底から(ガゥゥ~ゥゥ~ウゥゥ~ギャオォォ~ゥゥ(是を訳すると、何を言ってやがる!あの時はお前は1銭も出さなかったじゃないかぁ!1万3000円をオイラが全部支払ってやって、帰りには、屯珍感のラーメンも奢って遣ってぞォォ・・・)と、込み上げて来る遠吠えを、ぐっと堪えていたのだった。

「それからの、あなた生活費なり友好費なりは、どの様に捻出して生活していたのですか」

「はい。給料が手取りで17万円位ですから、家賃と光熱費が約7万円位かかてしまい、その他のスマホの料金の支払やクレジットカードで買い物した支払いなどを差っ引いて残りの約7万円位ですから食費や友達との友好費でほとんど使い果たしてしまって、金貸くんに返済する余裕がありませんでした・・・」

「では、ボーナスなどの使い道はどうしてましたか」

この尋問に少し戸惑いを見せる借主くんなのだが、しぶしぶと重い口を開く。


「はぁ~。それはボーナスといっても、元々が給料が安いもので・・・例えばクレジットで欲しかったデジカメやパソコンなんかを買ったりした支払いに満たしたり、それから・・・家賃を滞納したりする月もあったりして、3ヵ月分位をまとめて支払ったりするなどで、ほとんど手元には残りません・・・いやっていうか、そのぉ~っ・・・」

シドロモドロしながら、裁判官女史の尋問に言葉を濁す借主くんなのだった。

「その欲しかったパソコンなどは、金貸くんに返済するお金よりか欲しくって買ったものですか」

裁判官女史の尋問は借主くんが、パソコンを買おうとする前に金貸くんに借りたお金を返す意図はなかったのかを、探ろうとする趣旨の尋問である。

「はぁ~。どうしてもネットショッピングなどを見ていると、つい衝動的に買ってしまって・・・そのぉ~・・・」

借主くんの証言を、眼光を思いっ切り開いて睨みつけている金貸くんを一瞥して、少し俯く借主くんなのである。


「では、金貸くんからあなたが借りたと覚えてる5万円は、後で金貸くんに返せば良いと思っていたのですか」

「いえ。何時もお金が入ると金貸くんに返さなきゃ、と思うのですがそのぉ~幾ら返せば良いのか分からなかったものですから・・・」

「幾ら返せば分からなかったというのは、先ほど5万円位だったと思っていたからですか」

「はい。確か5万円位だったと・・・・」

「では、5万円は借りたけど、金貸くんが10万円を貸したというのは、金貸くんの思い違いということなのですか」

「いえ。それはボクには分かりませんがな借用書も金貸くんからは書くようにはいわれませんでしたので、正確なこをお互いが何かの思い違いをしているのかも知れないと・・・」

「お互いが思い違いをしているから、5万円は借りたけど残りの5万円は知らないということですか」

「はぁ~。どう説明していいのか良く分からないのですが、金貸くんがボクに10万円を貸したと思い込んでいるような気がするので・・・」

濁す言葉が判然としない借主くんの証言に、裁判官女史の心証の中に借主くんの証言の中に矛盾点を、さらに突きつけるのだった。


「では、5万円は返すつもりだったけど、返さなかったのは借主さんの金銭管理のルーズさがあったのではないですか」

「いえ。それは先ほども言ったように、いろいろな事情があってそのぉ~」

「でも、返そうと思っていたら返せたわけですよね」

裁判官女史の尋問を何とか交わそうとする借主くんだった。

その借主くんに対して発っしたい金切り声を飲み込みながら、口をもぐもぐと動かしている金貸くんである。

金貸くんは、嘘だ!嘘だ!お前は何をいってやがる。オイラはお前を友達と信じて10万円を貸してやったんだぉ!そのオイラの優しい気持ちを揺さぶることばかりいいやがって!お前なんか人間じゃねえ!最高裁の裁判官にいいつけてやる!お前なんか死刑にしてもらうぞぉ!と借主くんに怒りが心頭していて、錯乱状態なのだった。


「金貸くんから借りたお金を返す気持ちはあるのですね」

「はい。もちろん返します。でも金貸くんが返済を求めてる10万円となるとちょっと、その返済義務があるのかはボクとしては釈然としない思いがありまして・・・」

「では、あくまも金貸くんに借りたのは5万円くらいで10万円ではないということでしょうか」

「はぁ~。はっきりとは覚えていませんが。金貸くんから飲みに行こうって誘われて・・・それで・・・」

「そんな曖昧な記憶では、金貸くんから5万円を借りたのはあなたの勘違いで、実際は10万円借りていてもおかしくないんではないですか」

「はぁ~。でも、それはそのぉ~金貸くんの方の勘違いではないのかと・・・」

「では、あなたの言い分としては、5万円位は借りたけど、10万円を貸したというのは、原告である金貸くんの思い違いということなのでしょうか」


借主くんの曖昧な証言の態度に、裁判官女史は心証の形成過程で借主くんの証言の信用性を疑い始めているのだった。

また、ここでの裁判官女史の尋問は借主くんが借りたのは5万円くらいだけど、10万円貸したいう金貸くんの主張事実は、当事者の法律行為(金銭貸借契約)の「錯誤無効」に該当するのかの理由に当てはめて、裁判官女史は検討の余地を考えているのだった。

「もし、10万円借りているとしたら、一括払いで金貸くんに返済することは可能ですか」

「いえ。それはちょっと無理です。ボクも生活がかかっているので、そのぉ~」

金貸くんは、借主くんの煮え切らない証言に完全にキレている状態なのだった。

「おっ・・お・・・おま・・・えは、先っきから「そのぉ~」ばっかじねえか!オイラはお前に10万円かした―ぁぁぁ・・・」

ついにキレた金貸くんの金切り声が法廷内に木霊する。

その金切り声を飲み込む金貸くんに対して、裁判官女史は「黙りなさい。聞きたいことは反対尋問で聞きなさい」と金貸くんが全身から醸し出す怒りのオーラを、静めるのだった。

「では、分割で支払うことは大丈夫ですか」

「えっ~と。はい・・・でも幾ら支払えばいいのでしょうか」

「それは判決で決めるか、これから裁判所と原告の金貸くんとあなたとで話合いで決めることになります」

「では、金貸くんは反対尋問はありますか」


ではここで、金貸くんの反対尋問の前に「錯誤」についての解説を挟むことにします。

 著者・Sorano.isによる解説ーその➄

意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は自らその無効を主張することはできない。

このれは、民法第95条に規定されています。

一般的な錯誤とは、例えば領収書などに金1000円と書くところを、誤って金10000円と、「0」を1つ多く誤記を記してしまった時のように表示上の錯誤がある場合などが、例に上げられます。

このような場合は、「0」を1つ誤って書いてしまったのですから、その領収書は、表示行為に錯誤があるためその領収書は効力を有せずに、無効ということになります。


意思表示というのは、例えばこの商品を「売ります」という法律効果の発生をさせる側と、その商品を「買います」という法律効果を発生させる側との、双方の法律効果が成立した場合に、その商品の売買契約が成立します。

これが、民法第555条に規定された売買契約に基づく法律行為です。

もっと簡単に言えば、コンビニに商品を並べてその商品の金額を表示する行為は、商品を「売ります」との意思表示です。

そして、コンビニに買い物にきた客がその商品を「買います」という意思表示をして、商品代金を支払いコンビニ側がお金を領収して、客に商品を提供すれば、コンビニと客の意思表示が合致して、商品売買契約の法律効果により「売ります買います」の契約は終了します。


そこで、金貸くんと借主くんのような金銭貸借契約として、証拠に残るように普通の場合は「金銭借用書」と題する書面を、金銭の貸主に交付するのが一般的です。

でも、友達などに頼まれて数万円貸すなどの場合は、借用書などは書いてもらうことなく、貸すってことはこの読者諸氏はありませんか?

友達ゆえに、その相手を信用して借用書を書いてもらわないままお金を貸してしまったってことはありませんか?

友達同士の金銭貸し借りだから、友達を信用し借用書を書かないってことは実はもっとも多いことなのではないだろうか。

それが積もり積もって、合計したら数十万円になっていたりすることも、なきにしもあらずです。

ですが、銀行なり消費者金融なりでお金を借りる場合は、先ずは契約内容を当事者双方で確認してから、お金を借りる段階になってから借用書を書いて、お金を受取るのと同時に借用書をお金の貸主に渡すのが商行為の金銭貸借契約では、慣例的ですよね。ちょっと解説の趣旨とはズレてしまいましたが。


ここで、問題なのは借主くんが主張している「確か5万円くらいだった」というのと、金貸くんが主張する「10万円を貸した」とする事実が問題になります。

では、金貸くんは10万円を貸したと主張しているけれど、借主くんは金貸くんが10万円貸したものと、勘違いしている。

つまり、10万円貸したというのは金貸くんの思い違いで、本当は借主くんは5万円しか借りていないから、その金銭貸借契約行為に、金貸くんと借主くんの間で争いになっている5万円の差額は金貸くんの錯誤に基づくものなので、借主くんはその差額の5万円は借りた覚えがないから支払い義務がないと、ここでは主張しているわけです。

そのため、お金を貸した金貸くんとお金を借りた借主くんの金銭貸借契約の成立過程において「錯誤」が生じているのかを、裁判官女史は借主くんの尋問の中で、その借主くんの証言の信用性をどの程度証拠として採用するかのを検討することになるのです。


では、「錯誤」につての解説はここまでとして、金貸くんの反対尋問のシーンへと、戻ることにしましょう。


つづく。

第8話予告

金貸くんの目茶目茶な反対尋問に苦悩する裁判官女史。果たして判決はどうなるのだろうか・・・


何かと著者も忙しくて、第7話のアップが遅くなりました。

法律についての説明に誤謬がありましても、後々と加筆・訂正していく所存です。読者諸氏で、誤りを見つけた場合はご指摘いただければ幸いです。

本篇に戻ると、この後に金貸くんと借主くんの友情は決裂してしまうのだろうか?

友達同士で金銭の貸し借りで友情にヒビが入るってこともありますから。

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