表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

第5話・いよいよ始まった金貸くんと借主くんの少額訴訟(法廷対決)の行方はいかに・・・

「そうか!じゃあだ。早ややい話しがだ、その印紙と切手やらを持って来れば良いんだな」

女が相手なら、横柄な態度が当たり前になっている金貸くんなのであった。

「そうですね。良く分かりましたね。持参するお時間がなければ郵送でも受け付けてますからね」

本当に駄々っ子をあやす様に、サービス精神旺盛な笑みを浮かべながらも、腹の底には何か嫌な物が詰まっている感じがする、女性事務官である。

「ゆ・う・そう・・・?郵送ってあれか!バイクで郵便配達の奴らが配っている、あのやつらに持って来させるって、あの手か・・・」

当たり前の事を、いやに堂々と屁理屈を並べ立てて女性事務官を困らせる、金貸くんなのであった。

「そうですよ。ですから訴状用紙に記入漏れがないか最後まで、きちんとチェックしてから送ってくださいね。印紙と切手はそのままでも結構ですからね」

呆れ果てて、どうしたもんかと心を病んでしまいそうな女性事務官なのだった。

「郵送は嫌だ!オイラはお前に合いたいから自分で持って来る。だからお前の電話番号を教えてくれないか」

正気の沙汰とは思えない金貸くんの横柄さに、苛立って来た女性事務官の表情は、苦笑に痙攣を起している状態だった。

「はい。はい。電話番号ですね。こちらの番号までどうぞ」と言って、金貸くんに手渡したのは、書類入れのA四サイズの封筒だった。

そこには、Y簡易裁判所の住所と電話番号が印刷されてあった。


「その封筒に、書類を入れて大切に持って帰ってくださいね。困った事があれば、お気軽にお電話でお問い合わせくださいね」

愛らしい笑みを持つ女性事務官だったが、何時の間にか、その笑みの表情は怒気の含む笑みへと変貌して行った。

「困ったことか?じゃあ、お前が困った事があったらオレに電話をくれるのか?」

ついに、応答義務が火花を散らして爆発してしまい、空に舞っている状態の女性事務官なのである。

このまま、金貸くんを相手にさせるには女性事務官に害悪症を与えてしまうし、作者こと、著者の私も解説を加えるのも大変な作業になるので、紆余曲折を経て、どうにかこうにか金貸くんが原告になる少額訴訟の口頭弁論期日が決定したものとして、次からはストーリーを展開して行きます。


金貸くんは、特別送達で送られて来ている口頭弁論期日を指定した『呼出状』に記載された事件番号(事件記録符号)平成〇年少 (コ)第1234号と審理が行われる、202号法廷の確認のために裁判所入口に掲示されていた開廷表とを睨めっこしなかがら、目を閉じて黙想に耽るが如く呟いているのだった。

「ついに、オイラの名前が裁判所まで轟くようになったか・・・」

と、何だか訳の分からない優越感に浸っていた。そんなバカげた思いを胸にワクワクドキドキしながら『開廷中』の蛍光ランプの点灯を確認して、そ~っと『関係者入口』と印されているドアをゆっくりと開く。

すると、またしても、そこには何だか知らないがチャコールグレイ系の七分袖に大きめのフリル使いをし、ストラップをあしらったトップスを着こなしている謎の美女が真っ先に金貸くんの眼の中に飛び込んで、唐突にその謎の美女が会釈する。


金貸くんは思考が破壊されたような衝撃を受けて「オレは裁判所じゃなく、間違ってキャバクラに来たのかなあ・・・?」などと考える、本当に脳天気な奴だった。

「原告の金貸『さん』ですね・・・?」と謎の美女は問いかける。

「は~ぁ、いやいや違います。私は金貸『くん』ですが・・・?」

女を見ると直ぐに我を見失う、金貸くんなのである。

「はいはい。あなたが原告の金貸『くん』ですね。事務官より良くお話は伺っております。私はこの事件を担当している書記官の竹内(結子)です」


本当は、こんな自己紹介はしないが、どうしても女優の竹内結子ファンの著書としては、本ストーリ上から登場させたくて、創作して書いているだけである。

しかし、主人公の金貸くんの脳裏にも(あの、竹内結子に似ているじゃないか。ぜひとも、この謎の美女とお友達になりたい・・・)何てことが、鮮烈に突っ走る。

よだれを垂らすような視線で、書記官女史に見惚れている金貸くんの右手から、呼出状がヒラリッとゆっくりと、舞い落ちた。

それを拾い上げた書記官女史はは、ソフトに金貸くんに手渡してから「こちらの出頭カードの名前に、チックをしてください」と、優しく教えてあげるのだった。

金貸くんの頭の中は春満開で、蝶々が無数に舞っている。

どうやら思いもよらない謎の美女の出現で、心臓が数秒間停止したような状態なのであった。

ふっと、我に返って出頭カードに「木村拓哉」と記入してしまう金貸くんのボケに「確か、あなたのお名前は金貸ペケ丸くんでしょう。偽名を名乗ると文章偽造罪になりますから」とニコリと笑って、突っ込みを入れる書記官女史の手捌きの良さは、相手がバカな奴だと見通してのギャグである。

金貸くんは、木村拓哉と書いた上に直線を引いて「金貸ぺケ丸」と記載されている、横に新たに「金貸ペケ丸」とヘタッピな文字を書き殴る。本当は既に記載されている原告・被告の当事者氏名を〇で囲めば済むだけである。


そんな事をしていたら、関係者入口の扉が開いて被告の借主くんが、のっそりと現れる。金貸くんと借主くんは睨み合って、2人の間には線香花火がパチパチと音を立てている。

金貸くんの頭の中は舞っていた蝶々が消え去って(うぅ~うっっ、ワンワンワンワン、うぅ~っ・・・ワァ~ン!!)と、吠えまくっている。

対する借主くんは、金貸くんの形相におののいて(ニャ~ニャ~ン)と、恐怖心を覚えているのだった。

で、こんなことを何時までも執筆するのも著者も大変なので、ストーリーの進行を早めるために、次の場面へとワープして、話を展開して行きます。


少額訴訟は、ラウドテーブル(楕円形の会議様式机)で審理される。

各、簡易裁判所によって違いはあるが、概ねは大体が同じだろう。司法委員と呼ばれる人数名がいるが、これは後ほど「解説」を挟みます。そして上座に裁判官、その横で書記官が記録を綴る。

原告と被告は、中央ないし下座辺りに双方が対峙する感じで着席する。裁判官が入廷して着席すると、いよいよ、裁判の幕が上がる。

「原告の金貸さんは、訴状のとおりの陳述ですね」

裁判官は、まずは当事者の主張を確認する。金貸くんの頭の中は(この白いブラウスに身を包んだた女は何者だ?髪を後ろに結ってて、オレ好みの女子じゃないか・・・)と呟いていて、自分が置かれている状況さえも、理解できないのであった。

何より、またしてもオフホワイトのブラウスで登場した裁判官女史に、胸はドキドキワクワクして踊っているのだった。

女を見ると見境がなくなり自分の都合ばかりが先行して、脳が「女」で活性化されてしまう、金貸くんなのである。

それより何より、少額訴訟では裁判官と書記官は法服と言われる、この主人公の金貸くんの言うところの黒いマントは着用していない。裁判官によっては法服を着る裁判官もいるらしいが、最高裁判所規則では少額訴訟においては裁判官と書記官の法服の着用は義務付けていない(と著者は記憶しているが、文献を調べるのも面どいので、ここではそう思ってくださいね)。

「被告の借主さんは、答弁書の陳述ですね。お金は借りた記憶はあるが、何時ごろに、幾らの金額を借りたかは、ハッキリとは覚えていないと言うことですね」

ここで、原告と被告の主張(当事者の言い分)を整理して、事実関係を精査する作業を裁判官が行う。書記官がそれを訴訟記録にチックする。

「はい。僕は5万円くらいだった気がしますが・・・」

借主くんの曖昧な答えを聞いた金貸くんは、借主くんに襲い掛かりたい衝動を抑えて「うぅ~うっ、ワンワン~ウゥ~ゥ・・・ウゥ~ガォォ~ウゥ~オォ~ォ」と、腹の底では吠えまくっていて、借主くんを睨みつけながら、獣のような眼つきをしているのだった。


「金貸さんは、甲1号証の内容証明と同1号証の2の配達証明。それと甲2号証が預金通帳からお金を引き出して、借主さんに貸したとする証拠ですね。甲1と甲2号証と同2の原本は、ありますか」

金貸くんに釈明させる裁判官女史。これが訴え出た方が負う立証責任(挙証責任ともいう)である。つまり、あなたの主張する事実を、証拠で証明しなさいと言うことである。

「はあ~ぁ。えっ~とぉ~とっと、オイラは金貸くんで、高校は2年で中退して原付バイクを乗ってますが・・・はあ~」

金貸くんは、市役所の美人なお姉さん。色香漂うメガネの司法書士女史。美しい裁判所の女性事務官。謎の美女の書記官女史。そしてたった今、顔を合わせたばかりの髪を後ろで結って、とても華やかな中に知的センスが光る美貌の整った裁判官女史たちが、脳の中身では活性化されていて走馬灯のように数々の女が駆け巡っているが、腹の底は借主くんに吠えまくっているから、精神状態が分裂している状況なのだった。

「あぁ。そうでしたね。はいはい分かりました。金貸くんでしたね。証拠の原本はお持ちになってますか」

意味不明の発言をする金貸くんを軽くあしらって、証拠の取調べを続ける裁判官女史。金貸くんは、そぉ~と、証拠書類を裁判官女史に差し出す(注・解説参照)

すると、裁判官女史の左の薬指に結婚指輪が、キラリッと光る。

金貸くんは、またまた胸の中に激烈な痛みが走って(オレとキミの出会いがもう少し早ければ、キミはオレのものだったのに・・・)などと、本当に女性の気持ちを顧みずに、一方的な思考ばかりを思い描く本当にどうにもならない、バカな男である。


裁判官女史は、金貸くんの差し出した内容証明と配達証明のハガキを確認した後、金貸くん名義の預金通帳から平成〇年□月△日に、確かに10万円が引き出されている事実を確認する。

「書記官、証拠を取り調べましたので、記録してください」

裁判官女史が書記官に告げる。

「はい。確かに記録しました裁判官」と竹内結子似の書記官が応えると、そしたら再び金貸くんは、激烈な痛みが胸の中に突き刺さる。

(裁判官?この女は裁判官だったのか?こんな美貌を持った裁判官が裁判所にはいるのか?裁判官に入社するにはどうするんだ・・・)激烈な胸の痛みを抑えながら、社会のシステムを理解できていないバカな思いばかりが、金貸くんの脳天を分裂させる。


「借主さんの方は、原告の主張を反証するものなどの証書は、お持ちではないですね」

反証とは相手の主張する事実を否定する証拠である。借主くんは、金貸くんの主張事実について「僕は5万くらいだった気がします・・・」と、その一部を否認しているから、裁判官女史は釈明を求めたのだった。

「では、職権で当事者尋問を採用致します」

裁判官女史が述べると、金貸くんは何故か慌てふためく。

「と・う・じ・しゃ・・・尋問?何だそれは?ひょっとして警察官が職務質問する時みたいに、色々と住所やら変てこな質問をしてくる、あのやつか・・・?」

またしても、金貸くんは変な屁理屈を付けて、美貌の裁判官女史を困らせて奈落の底へと、突き落とそうとするのであった。

このままではストーリー上から(らち)が明かないので、またまた解説を挟むことにする。


  著者・sorano.isの解説‐その④

まずはじめに「司法委員」だが、この司法委員とは毎年あらかじめ地方裁判所から選任された民間の有識者(意味が分からない方は、国語辞典で調べよう)で、裁判に同席して審理を円滑に進めるために意見を述べたり、和解を提案したり取り持ったりの補助的役割をします。

民事訴訟法279条③項で規定され、元裁判官や元検察官・元書記官などの法律職にあった人や、元会社役員や元銀行員等の幅広い分野で活躍した教養豊かな人材から選ばれます。この司法委員は少額訴訟のみで、通常訴訟では司法委員はいない場合も多い。

(注・なお、本篇には著者のストーリの創作上の都合により、司法委員は登場しません)


そして「当事者尋問」だが、元々が民事訴訟は裁判所の職権では証拠調べはできない決まりがあり、証拠は訴訟当事者に自由に提出させて、主張と立証を尽くさせる「弁論主義」を採用している。

例外で、当事者尋問等の幾つかの証拠調べは、裁判官の職権で取調べができる。

当事者尋問(本人尋問ともいう)は、民事訴訟の当事者を「証拠方法」として、その経験した事実について口頭で尋問して、証言させる証拠調べである。

弁護士が訴訟代理人の場合は弁護士が尋問するが、弁護士のいない本人訴訟の人には、裁判官が当事者に尋問することになる。

しかし、どの証言を証拠とするかは裁判官の「自由心証主義」に委ねられる。

証書類の証拠がなくとも「唯一の証拠方法」として、当事者尋問だけで民事訴訟を提起することも、できなくもないが、相手が自白している事件ならともかく、否認している事件だと本人尋問だけでは、勝訴するのは難しいのが現実だろう。

では、金貸くんが当事者尋問(本人尋問)中として、本編に戻ってみましょうね。


 つづく。

 第6話予告

いよいよ始まった、金貸くんと借主くんの当事者尋問(本人尋問)。はたして、金貸くんはこの難関を突破して、借主くんに10万円の返済をさせることができるのだろうか・・・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ