公然賄賂制度
公共事業費が膨らんで、その公共事業費の行き先がシグマ財閥であることに腹を立てたある国の首相はユニークな入札制度を導入することにした。
それは公然賄賂制度と称された。
どういう内容かというと、
特殊でもない工事の発注は、自由競争入札的随意契約とした。
そして応札企業は、通常の入札価格競争ではなしに、あらかじめ国に事業協力金を納めることを要求された。
この事業協力金の額に応じて落札企業が決められることとなった。
そしてこの事業協力金は、落札しようが外れようが返還されない制度とした。
しかしながら、事業協力金の納付実績は、別の機会にある指名競争入札の指名業者を選定する際の優遇材料とされた。
公共事業受注を狙う企業は、国会議員や役人に賄賂を贈るより、国庫に直接事業協力金という賄賂を贈らないと工事を受注できないことになった。
ある公共工事ではこんなことが起きた。
当該入札に係る工事予定費は10億円と思われたので、その金額で公告した。
そして自由競争入札的随意契約に付したところ、参加企業は100社を越え、事業協力金を多い企業で3000万円納め、各社平均1000万円、合計10億円を越えてしまった。
かくして国庫負担ゼロでこの工事は行われた。
各社が1000万円程度事業協力金を納めたのには訳があった。
この事業全体では、他に指名競争入札予定の工事が結構予定されていたのと、この自由競争入札的随意契約は下請け制約条項があり、この自由競争入札に参加していない企業への下請けを禁止していたからである。
かくして公共事業費は、タコ足配当的になり、建設業界自体には全体としてはメリットをもたらさないことになったが、起死回生を狙う企業にとっては、公然賄賂制度はなくてはならないものであったので、個々の公共事業がストップすることはなかった。
落札者のなかった自由競争入札的随意契約の工事予定金額は、次の公告の際は吊り上げられたからである。
予定額がつり上がると、僅かな賄賂を贈ることで沢山の受注金額を手にすることができるので、自由競争入札にしておけば誰かが落札した。
さあ、現実はこううまくいくと思われますか?
つづき