プロローグ
シグマ帝国に支配されてきた国々は次々と政治的には独立していったが、実質の支配は、シグマ帝国皇帝を総帥とするシグマ財閥(シグマ連合)によって牛耳られることになっていった。
それは、総合編にもあるように次の如くである・・・
シグマ帝国本星は銀河系の中心部にあった。
そこから銀河系全域に武力で支配を広げていった。
宇宙戦艦ヤマト3のガルマンガミラスとボラー連邦のような闘いを繰り返しながら、
ついには銀河系全ての覇権を握った。
そこに、隣の星団アンドロメダ大星雲を統一したガトランティス帝国との闘いに勝利し、銀河系以外の星団にも徐々に支配を広げていった。
全宇宙にはクリプトン帝国とカルロス連邦がそれぞれの勢力を保っていた。
クリプトン帝国の隣に位置するシグマ帝国はクリプトン帝国の領域を害しない形でカルロス連邦方向に領域を広げていった。
シグマ帝国はクリプトン帝国より科学技術が劣っていたのでその方向へ武力で侵攻することは不可能であった。反対側へ武力で侵攻しつつ、クリプトン帝国をはじめ全宇宙への支配の拡大を狙っていた。シグマ帝国皇帝はシグマ帝国内有力企業を中心にシグマ経済連合を立ち上げ、その総帥に就任した。同時にシグマ銀行総裁にも就任した。
そしてシグマ銀行総裁就任と同時にシグマ帝国の直轄地域を大幅に縮小し、クローム連邦として各地の自治を認めることにした。
これは、シグマ帝国内でシグマ皇帝の支配に反対する勢力が強まり、帝政を否定する方向への流れができつつあったことへの対抗策である。
シグマ帝国皇帝に親しみを持つ星団、星系、星、あるいは星の中の一部のみシグマ帝国直轄領とし、それ以外は他の王家や共和国、軍団領とし、その総合体としてクローム連邦を組織した。
そして、シグマ帝国はシグマ経済連合を政治化して封建制を取り始めた。シグマ経済連合の名称もシグマ連合に変えた。
シグマ連合はいわば幕府、そしてその加盟企業は各藩になっていった。
星団、星系、星、あるいは星の一部は、シグマ銀行領、シグマ商事領、シグマ兵器製造社領、シグマ電機領、シグマ鉄鋼領、シグマ連合軍領、などとなっていった。シグマ皇帝一族のシグマ家分家領も各地に散在し、シグマ本家領の中に、シグマ電機の子会社領があったり、シグマ銀行領の中にシグマ鉄鋼領があったりした。
これができたのは、シグマ帝国皇帝の発案である。それは、シグマ帝国の支配を離れたクローム連邦内の各王国、共和国に対して、高福祉低負担を主張する運動、そして無駄な公共事業を推進する活動を展開し、福祉、医療、教育、公共事業に多額の支出をさせ、足りなくなったらシグマ銀行が簡単に融資した。
シグマ銀行は無担保で融資に応じるが、シグマ連合の加盟企業の保証があることを条件に融資した。加盟企業は融資を受けるクローム連邦内の王国や共和国にその企業の希望するような政策をとることを条件とする保証契約を求めた。
加盟企業は、その意に反する政策をとれば保証契約は破棄するものとし、シグマ銀行は保証の切れた融資は即刻返済を求めるものとした。
しかし、シグマ連合としては、加盟企業がその企業にあまりにも偏った政策をクローム連邦内国家に求めることを戒めた。シグマ鉄鋼やシグマ電機は労働者の労働条件や労働運動に厳しい政策を求める傾向にあったが、シグマ連合はそれを戒めた。
その結果、クローム連邦内の多くの国家は、いくら借金をしても、悲惨な状態にならない状態が続き、どんどん借金漬けになっていった。
お金の流れとしては、シグマ銀行からクローム連邦内国家に融資され、公共事業に使われるにしても医療に使われるにしても、シグマ連合加盟企業にそのお金が還流し、そのお金や従業員に支払われたお金がシグマ銀行に貯蓄され、そのお金がまたクローム連邦内国家に融資される。
その新たな融資の際の条件が微妙にシグマ連合加盟企業に有利な政策なので、シグマ連合加盟企業は安泰であった。
ほとんどのクローム連邦内国家は、それに甘んじていた。
ところが、ある王国の王が、これではシグマ帝国に支配されているのと同じではないかと、怒り出し、新たな融資を断り独自の政策をとると言い出した。その王国はたちまち崩壊した。新たな融資が途絶えたので、国債を発行するしかない。国債を買えるのはその国深くにまで浸透したシグマ連合加盟企業の資本だけしか残されていなかった。新たな歳出からの収益の得られない従前まで融資の保証をしていたシグマ連合加盟企業の現地企業は破綻し、従業員は路頭に迷った。破綻した企業は、シグマ連合以外のハゲタカファンドに買収された。
シグマ連合は加盟企業がその企業にあまりにも偏った政策をクローム連邦内国家に求めることを戒めていたがハゲタカファンドは自分の利益だけを追求しはじめた。
シグマ連合はシグマ帝国支配の延長として国家の代わりを果たす自負があり、全体を考えていたが新たなハゲタカファンドは、その王国がどうなろうとお構いなし。ありったけの天然資源を自分のグループために掘り尽していった。失業した労働者は他の星へ連れて行った。
かくしてその王の決断により、誰も幸せになることなく大混乱に陥った。
この惨劇を見た他のクローム連邦内各国家はシグマ連合の支配を受け続けることを認容していった。
このような中、色々なアイディアで財政再建に取り組む国々があった
つづく