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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
八章 再会と……
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八十五話 試合

どんどん更新スピードが落ちていますね……。申し訳ございません。


それでも、完結まで頑張っていきます!

 ―――何故?


 自身の予想に反し、刃を向けられたミカはそれしか考えられなかった。


 何故弟はこちらに刃を向ける?合流したいと思っていたのは自分だけだったのか?


 ―――お前も……僕を……裏切るの?


「ベルン流師範代理、三神(みかみ) 大蛇(おろち)。汝に試合を申し込む」


 涙まで流しそうになったミカだが弟の言葉を聞いて、彼が何を考えているのかを理解した。


 確かにこれは敵対している現状が最も適した状況だ。


 試合。


 どちらが強いのか、どれだけ差があるのかそれを()()う。それがこの試合の目的だ。


「ご主人様!加勢を―――」


「いらん!手を出すな!」


 タマモの声を遮ってミカは彼女を制止させる。


「リリィ達も手を出さないで」


「だが―――」


「いいから」


 ミカは魔法の準備をしていた三人にも同じように止める。


 彼女達が完全に構えを解いたのを確認したミカは弟の前へと歩み出る。


 この世界に来る前、実家にいた時に試合は良くやっていた。


 けれどミカはこの可能性を考えていなかった。理由は簡単。既に勝敗は決していたからだ。


 既にミカは弟に二連敗をしている。どちらが強いのかの決着は付いているのだ。


 練習だって共に行ってきていたからこそ勝てないことは分かりきっていた。だから、無いと決めつけていた。


 だが、この世界に来てミカは弟を見てきたか?いいや弟と離れて行動していた。だから今、互いの実力は分からない。


 弟は、兄の現状を知りたいらしい。そして、それを理解した兄もまた同じように思った。


 弟の手前五メートルほどの距離で止まったミカは一度深呼吸をして呼吸を整え、右足を前に出し、右手の平を相手の胸辺りに向ける。左手は自身の脇に軽く拳を握った状態で構えて、弟の申し込みに応える。


 何時ものように。子供の頃のように。殆ど何も変わっていない。


「神月流・裏中段、三神 (りゅう)。その試合承る」


「敗北条件は―――」


「ーーーどちらかが敗北を認めるか、」


「急所に武器を添えられたとき」


 このやり取りもまた、中学の頃から変わらない。唯一変わったことと言えば、ミカの段が中段になった事くらいだ。


「フフっ」


「ハハッ」


 懐かしいやり取りに自然と笑みが零れる。最後に負けたのはまだ妹がいた頃。


「――いざ!」


 素の実力、それに才能も弟の方が圧倒的に上だった。それでも五分に持ち込めていたのは常に手を隠し、不意を突くような形で戦っていたからだ。


「――いざ!」


 が、それまで行ってきた試合で手の内の殆どを見せてしまい、それが原因で敗北した。


「「尋常に!」」


 さて?今は、どうだろうか?


「「勝負!」」


 互いが合図を叫んだ次の瞬間には既に互いの距離が刀の射程に入るほどまでに肉薄していた。


 いや、接近しているだけではない。既に刃が上から下、垂直にミカへと降り下ろされている。


 弟は峰打ち等していない。当たれば確実に死んでしまうだろう。


 だが、弟に躊躇(ためら)いは無い。当然、殺すつもりもない。


 兄にこの程度の攻撃など当たるわけが無いと思っているから。


 現にミカは落ち着いて、刃を避けるためにその場にしゃがんだ(・・・・・・・・・)


「っ!」


 あれでは刃を避けられないと、観客の内ミカ側の者達が思ったときには既に声を出す間もなかった。


 降り下ろされた刃はしゃがむ前にミカの頭があった位置で急に軌道を変え、斜めに降り下ろされた。少なくとも、彼女達にはそう見えた。


 その場にしゃがんだミカは刃の軌跡を確認することなく低い姿勢のまま足払い、弟に背を見せた状態から踵落としならぬ踵蹴り上げの二連撃。


 弟はそれをバックステップで回避し、ミカも倒立の勢いを利用した前方宙返りで距離を開ける。その際に捻りを加えることで着地時は向き合う形になる。


「初撃我は瞳に捕われず(ファントム)単発。舐めてるのかな?」


「まさか。腕が落ちてねぇかの確認だ。それに、そっちこそお得意のカウンターが来なかったが舐めてんのか?」


「まさか。鈍ってないか確認するために振りきらせたんだよ」


「で?結果は?」


「剣術について細かく言えるような人じゃないんだけど。まぁ、昔より速くなってた。勢いもあっていいね」


「最近は囲まれることが多くてな、突破するのに殲滅速度が必要だった。竜(にぃ)はより慎重になったな。付け入りにきぃ」


「何せ最近の相手は一撃で地面にクレーターを造るようなのばっかりだったからね~。当たったらお仕舞いだもん。そりゃ慎重にもなる。加減もしてくれないし」


「……良く生きてたな」


 そう言いながら弟は再度ミカの前まで踏み込み、斬り下ろし・斬り上げ・横凪ぎの三連撃。


 それをミカは左右のステップ、スライディングで距離を詰めつつ回避し、立ち上がりと同時に顔面を狙った掌底を二発。続けて不意を突くようなローキック。


 弟は首を振るだけで掌底を回避し、ローキックは腰に下げたままの鞘をぶつける事で防ぐ。


「いや、ホントに。神月流学んでて良かったと常々思うね。あれ受け止めるとか無理だし」


「竜兄の力は笑えるくらい弱いもんな」


「うるさいやい」


 ミカは自身の全力を込めて回し蹴りを放つが、それは片手で軽く受け止められた。


「力は全く変わんねぇのな」


「泣くよ?リアルに」


 戦闘を行いながらも二人は楽しそうに、表情をコロコロ変えながら会話を行う。


 弟の刃が何度も閃き、その(ことごと)くをミカは避け続ける。


「相変わらずあったんねぇな!」


「いやいや~。当てる隙はあるはずだよ?」


「どれもあえて作ってる罠のくせに、良く言う」


「やっぱバレるか~。どうしよっかな?」


 これだから弟との戦闘は楽しい(やりずらい)。自分の行動に対して最適()な対応が帰ってくる。


 だが、それは弟も同じだろう。


 彼が刀をどう振るのが得意か、また、苦手な間合いはどの程度かミカには良く分かっている。


 が、その優位の位置を長く保つこともまたできない。何度もやり合い、互いに指摘しあったのだ。弟もその間合いを変える方法くらい心得ている。


 その度にミカへと刃が襲いかかるが、彼はひょい、と端から見ると余裕そうにその斬撃を回避している。が、見た目ほど余裕があるわけではない。


 むしろ逆だ。余裕を持つように避けなければならないのだ。


 ミカの攻撃は基本的にカウンターだ。だからこそ回避はスレスレ近くを狙わなければならないのだが、それが出来ない。


 自らの弱い力で蹴りや掌底等の攻撃を行うが当然のように通用しない。それによってできる隙を使って弟の攻撃を誘うが、その瞬間はあえて狙わず、カウンターから意識を切り替える狭間、本当の隙に的確な一撃が振るわれ、ミカはそれを回避するしかない。


 あぁ。本当にやりずらい(楽しい)なぁ。


「ベルン流・我が刃は三度閃く(トライスラスト)


 弟の得意技である三つの刃がミカに迫る。


「っと」


 ミカはそれらの刃を軽く伏せながら横にずれるだけで三つの斬撃の隙間に入り込む。


「弐の太刀」


 が、弟の攻撃は終わらない。ミカが正面を向いたときには既に構えていた。


 いや、この表現は正確ではない。


 振り切った姿勢が次の構えなのだ。


(相変わらず反則だよね。この速―――む?)


 先ほどと同じように隙間に入り込もうと半身を引いたミカは、弟が刃を振るう直前、少し驚いた表情を浮かべて背後へと飛び、刀の間合いそのものから逃れる。


「終の太刀」


 が、バックステップでの回避は不味かった。


 ミカが着地した頃には既に弟は三撃目に入っている。その事にミカは本気で驚く。


 バックステップでの回避は大きな隙にはなり得ない。人がバックステップで滞空する時間など多く見積もったとしても一秒に満たないだろう。


 だが、弟はその一秒未満の僅かな時間で三つの刃を振り切り、次の斬撃まで放ってきている。昔とは比較できない程に次の太刀への間隔が短くなっている。


「―――っ!」


 距離を開けるような回避ではもう間に合わない。その上、体勢も悪い。できる事と言えばバックステップの勢いを止めずに背後に倒れる位だ。


 問題はどうやって背後に倒れるか、だ。そのまま倒れては腕と足に一撃ずつ貰ってしまうだろう。


 なのでミカは弟の初動を視界に納めた直後に体を捻り、片足を振り回すようにしながら倒れた。


 三撃の内の一つはミカが倒れたことによって空振りに終わる。


 三撃の内の一つはミカの目の前を通過する。


 三撃の内の一つはミカの振り回すようにした足へと振るわれ、ミカの足を透過(・・)し、少し遅れてギャリ!と鉄と鉄が擦れる音が響く。


 そして、音と共に少しぶれたミカの足はギリギリ弟の顎をかする。


「あたっ」


「っ!」


 ミカはそのまま肩から地面に倒れ、弟は顎に手を持っていきながら数歩後退る。


「ミカ!」


「アキラ!」


 互いの後方からそれぞれを心配する声が響く。


「チッ!これ邪魔!」


 ミカは普段は使わない乱暴な言葉を使いながら素早く立ち上がり、腰に下げた剣を乱暴に外して雑に投げ捨てる。


 背後からククルの批難が聞こえるが無視して弟に向き直る。


「もう切り札を切ってくるとは思わなかった。いつもは札を切れば確実に勝てると踏んだ時にようやく使ってたのに」


 ミカの言葉を聞いて、弟を知らない者は我が刃は三度閃く(トライスラスト)を切り札だと判断したようだが、実際の切り札はそれを隠れ蓑に扱った剣術だ。


 我は瞳に捕われず(ファントム)。初撃に放ったこの技の方がミカの知っている弟の切り札だ。


 この技は簡単に言えば錯覚を利用した騙し討ちの刃。実際の刃と視界が、いや、脳が(・・)判断する刃が違う動きをするのだ。


 この剣技の最大の利点は決まった型がなく、あらゆる剣術と併用して扱う事ができる事だ。連撃に数撃混ぜるだけでその連撃を魔剣に変える。


 先程は終の太刀だけでなく弐の太刀にも一撃混ぜられていた為に回避が少々難しいと判断したミカは咄嗟に下がったのだ。


 この魔剣の連撃が弟の真の切り札だ。勿論、扱うのは我が刃は三度閃く(トライスラスト)だけでなく、他のあらゆる剣技とも併用する。


 単発ではただ騙し討ちをするだけの剣技であり、二度も通じるような物ではない。


 故に初撃時、その技を何度も見てきたミカからしたら、単発でそれを放った弟が自分の事を舐めているのでは?と思ってしまってもしょうがない事だろう。


「狙うなら来ないと油断している早期だと思ってたんでね。まぁ、不意を突けたようなのにカウンター合わせてくるのは流石だな。その剣を吊ってなきゃ今ので終わってたな」


 そして、その感想はそのまま弟にも言える事である。


 切り札として、得意の剣術と共に放った技にカウンターを合わせられるような者が、我は瞳に捕われず(ファントム)単発にカウンターもせずただ避けたのだ。


 舐められていると思ってもしょうがないだろう。


「攻撃に意識を割いたときに防御が薄くなるっていうのは良く言って聞かせたでしょ?あと、今ので終わんなかったんだからその考察は意味ないよ」


「事実だろうが。その腰の剣に当たったから狙いが逸れたんだろう?」


「そうだね。それは事実だよ。でも、咄嗟に放った一撃でヘビが倒れる訳がない。多少ふらついただろうけど、僕が立ち上がるときには持ち直したはず。結局、現状の形になるよ」


「成る程。たらればに意味はないか」


「そゆこと」


 二人は互いに向き合い初めと同じように構えを取る。


「では仕切り直して―――」


「―――第二ラウンドと洒落込もうか!」



一話で終わりませんでした。


……こうやって話数が増えていくのですよね。

小説、難しい。

楽しいですけどね。自分では場面が想像できてますから。


それをきちんと文字にできていないのですよね。申し訳ないです。技量上がってるのでしょうか?

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