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Atonement for trip 〜償いの旅〜  作者: キラ星
2/3

旅立ち

この話からあとがきに、たまにキャラクター紹介を書いていきます。


読みづらい文ですが、ご了承ください。


また、一話一話の更新はゆっくりペースで進んでいきます。

ーレイルー


「!?…夢、か?」




俺は最近、不思議な夢を見るようになった。

天使と悪魔が赤子の双子を取り返して、消えていく。

そんな夢を。




レイルにフローラ…レイルは俺の名だった。

フローラは俺の双子の妹だ。




目覚めると、日の光が眩しいくらい輝いている。

植物も木々も、風になびいて、気持ち良さそうだ。




そんな風景をぼーっと眺めていると、この安らかな雰囲気に合わないドンッ!!という、おもいっきりドアの開く音が響き渡った。




「レイにぃ!いい加減、起きてよ!」




…もう起きている。

と、言ってしまうと、フローラがうるさい!と言って泣き顔になるので、言わない。




「悪い…すぐ起きる」




俺はすぐにベッドから降りると、服に着替えて、長い銀髪をクシで整える。




銀髪、か。

俺をレイルと名付けた夢に出てきた悪魔の男も、銀髪だったな。




「ほーら!朝ごはん食べたらすぐに仕事だよ?早く!」




「ああ、すぐ行く。先に行ってろ」




「うん、分かった!」




俺の妹…フローラが笑顔で部屋から出ていった。

妹と言っても双子だから、変わらないのだか、あまり気にしてない。




…俺も部屋を出るか。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ーフローラー



レイにぃ、相変わらず起きるの遅いなぁ。

けど、優しいんだ。




私があれだけ言っても怒らないし。

そんなレイにぃも好きなんだ、私。




「けど、双子とは思えないくらい、性格は似てない…」




いや、私が性格変わったのかな。

レイにぃを笑顔にさせたいっていう思いで、小さい頃から少しずつ性格が変化して…




今思えば、この性格が本当の自分なぬかもと感じている。




「フローラ。行こう」




「うん!あ、朝ごはんのスープ美味しかった?」




「…ああ。おかげで目が覚めた」




こういう会話をしていると、本当に平和なんだなぁって、感じる。

この時が、ずっと永遠に続けばいいのにな。




ふと、レイにぃを見る。

…また、今日見た夢の事を思い出した。




金色の髪をした綺麗な天使の女性と、銀髪の悪魔の男性が、何かと戦って、そして、消えていくの。

私達の名前を呼んで。




「…フローラ?」




「ん?あ、ごめん!ぼーっとしてたよ」




「大丈夫か?最近、仕事ばかりだしな…」




「大丈夫だよ!仕事楽しいし。レイにぃとも一緒だしね!」




レイにぃに心配かけちゃ、いけないよね。

よし、がんばろう!




私達は家を出て、私達の住むユーク村近くの森の奥をどんどん進んでいった。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



ーレイルー



俺達双子の仕事は、村人の食料調達。

仕事というよりも、役割だな。

他にも人はいるが、主に俺達が行っている。



肉はイノシシ、草は毒のない雑草やキノコ。

これだけの食材でも、様々な料理を作ってやりくりをしている。




「レイにぃ、見て!キノコ生えてる。あ!あそこにも」




うれしそうにキノコを採るフローラを見て、また俺にも笑顔がこぼれる。




俺も食材を探そうと、辺りを見渡してみる。

森にいる動物達の数が少なくなっていることに驚いた。

食用として食べない鹿やウサギ、リスや猫などの姿が見えない。

いつもだったら、動物達がフローラの元へ寄って、遊んでいたりする。




…それに、のびやかに鳴く小鳥達も、ここから逃げるようにユーク村周辺から遠ざかっている。




何かがおかしい。




「フローラ、帰るぞ」




「え?どうしたの?」




「いいから。…いやな予感がする」




自然と足が速く動く。

フローラも不安そうに、後ろから付いてくる。




何かが起こるのかもしれない。

決定的な判断は出来ないが。




「…レイにぃ。なんだか…気持ち、悪い」




「体調、悪いのか?」




「さっきまで、大丈夫だった…のに。急に気持ち悪くなって…」




滅多に体調を崩さないフローラが…。

俺の不安は更に増していった。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「ゆっくり休め、フローラ」



「うっうん…ありがと、レイにぃ…」




家に着き、俺はフローラを自室へと寝かせた。

フローラ、すごく苦しそうだった。

熱も高く、息苦しそうに、ハアハア息を吐いていた。




「……」




一体、何が起きている?

俺には、ここまでの出来事が偶然とは思えない。




偶然は必然なのか…?




"気を付けろ"




「!?」




今、どこからか声が聞こえてきた…のか?

辺りを見渡しても、このリビングに人のいる気配はない。

フローラは自室で寝ているしな。




"ここだ、ここ"




「だから何処に―――!?」




かっ身体から黒い光が…

なんだ、この感じは。




怖いけど、怖くない。

それに




「力が、湧いてくる」




"俺はここにいる、レイルよ"




身体の中に潜んでいるということか。

俺はその事を、信じられないくらい冷静に受け止めることが出来た。




感じる…こいつは悪いやつではない。




「何者なんだ?」




"俺は…カオス。お前の中の思念"




「カオス?思念、だと?」




"そうだ。いつでもお前の中に……くっ!"




ぷつっ、と何かが途切れた音がした。




「カオス、カオス!…」




聞こえなくなったな…

最後、苦しそうだったような。




急に出てきて、消えるとは…




まて、カオスは"気を付けろ"と忠告してきたな。

何に対してだろうか?

何度もカオスに話しかけるが、返事はない。




行き詰まった俺は、近くにあったソファーに腰を下ろし、一つため息をついた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


ーフローラー



なんで…こんなにも苦しいの?

さっきまで、平気だったのに。




私は今、自室のベッドで寝ている。

熱も高温で、話す気力もない。




「レイ…にぃ…。苦し、い…」




"苦しめて、すみません"




え…?

今、誰か私に謝った?




"私の力を、静かに受け入れて"




私に、話しかけているの?

あなたは一体誰なの?




"(わたくし)は、コスモス。あなたの中の思念"




コスモス?

なぜ、コスモスさんが、私の中に?




"それは…今は言えません"



なにか、事情があるんだよね?

じゃあ…1つ教えてくれませんか?




レイにぃが言っている嫌な予感と、私の体調不良は、関係ありますか?




"…あなたが体調を崩したのは、私の力を正常に受け止めていないからです。今は、私の力を静かに受け入れて下さい"




分かるよ、コスモスさん。

たとえ声だけでも、あなたが真剣で、深刻なんだということが。

私は息切れしながらも、深呼吸を始めた。




…分かりました。

コスモスさん、力を下さい。




"ありがとう、フローラ"




その瞬間、私の身体は白く綺麗な光に包まれて、自然と力が湧いてきたような気がした。




あんなに苦しかった息切れも、今ではなくなっていた。




ああ、なんて暖かな光。




"フローラ、気を付けて下さい。今、あなたたちに災厄が訪れようと……ああっ!!"




ぷつっ!!

急に何かが途切れた音が響いてきた。




「コスモスさん、どうしたの、コスモスさん!」




声が聞こえてこない。

最後、苦しそうだった…。



そういえば、コスモスさんがさっき"あなたたちに災厄が…"って言ってた。




あなたたちって、私と…レイにぃ?




――――レイにぃに早く伝えないと!




私はすぐにベッドから降りて、自室を出て、急いで階段をかけ下りた。




その先には、ソファーに座ってため息をついているレイにぃがいた。




「レイにぃ!!大変だよ!」




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


ーレイルー



「レイにぃ!!大変だよ!」




先程まで体調を崩していたフローラが、嘘のように大きな声で、俺に近づいてそう言ったのだった。




「フローラ、体調大丈夫か?」




「私は大丈夫。それより、大変なのよ!」




「落ち着け。俺もお前に話がある」




フローラは、俺に言われて深呼吸し、隣のソファーに座った。




やっと落ち着いたみたいだな。

俺はフローラに身体を向けた。




「フローラ、まずはお前から話してみろ」




「うっうん。実はね…その、私の中にいるコスモスさんっていう思念が、私達に災厄が訪れると忠告したの。だから、レイにぃに早く言わないとって思って…」



「なに…?」




思念…

それはまるで俺の中にいるカオスと同じ。

フローラにも同じような事が起きたらしいな。




「…俺もカオスという思念に、気を付けろと忠告された」




「え?レイにぃも!?」




一体、俺達の身に何が起きているんだ?

俺達双子に…




「レイにぃ。私が具合悪くなったのは、コスモスさんの力を受け入れなかったからなんだって。レイにぃは、カオスさんからもらったの?」




俺は…ああ、あの黒く光った時だろう。

あれからどんどん力がみなぎる感じはするが。




フローラの具合が良くなったのも、コスモスの力を受け入れたからだな。




俺が頷くと、フローラは自分の右手をふと見た。




「これ…コスモスさんの光」



フローラの右手から、白くまばゆい光が輝いていた。

とてつもない力なのは、俺から見てもすぐに分かる。



―――っ、手が熱い!?




「黒い光…俺にも」




俺の左手にも、黒い光が強く照らされていた。

すぐに分かる、あのカオスの力だと。




少しでも気を抜いたら全てのみ込まれそうだな。




…ん?

何か、臭いが…




まるで鼻につくような臭いが…「レイにぃ!見て」




急にフローラが立ち上がり、窓の外を指す。

その先には…




―――――血のような空、次々と倒れる村人の光景がハッキリと写った。




「あれは、なんだ…」




「レイにぃ!レイにぃ!早く助けに行こうよ!!」




フローラがレイにぃと、俺の名前を呼んでいるが、俺には聞こえていなかった。

一歩も動けない。




人が死んでいる。

人が、人が…血を流して…



「レイにぃが行かないなら、私だけでも行くから!」



フローラはそう言葉を残して、家を出ていった。




立ち尽くす俺を置いて。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


ーフローラー



レイにぃ…

ショック過ぎて、連れていける状態じゃなかった。




私だって、なんで村がこんなことになっているか、混乱してる。

それでも、何かはしないと。

生き残っている人を探して助けないと!




私は村中を走り回って、とにかく人を探す。




誰か、誰か…




「誰か、いませんか!!誰か!」




雑貨屋さんのクレアさん、パン屋のバーンさん、宿屋のロナおばさん…

皆、血を流して倒れていた。




もう、息がない。




「何で…何でこんなことに」



私は村人全員死んでいる事を知り、身体の力が抜けて、座り込んでしまった。




…誰、こんなことをした人は。

私は自然と怒りが溢れてきた。




「誰よ!こんなことをした奴は!!出てきなさい!」




私が倒してやるわ、皆の仇を。




愛用のダガーを両手に構えると…




"この災厄は、お前らが起こした罪"




え…?

私の中から声が?




「コスモス?」




"あのような輩ではない。我は無き存在"




なんか、怖い…

この人、コスモスと違って、怖い!!




"恐れるか、我を。それもよし。いずれお前らを滅す"




じわじわと、足から赤い何かが上がってくる。

伝わってきた、この村人の悲痛な叫びが。




助けて、痛い、死にたくない、苦しい…




なに、これ…

もう聞きたくない…

いや、いや…




「いやぁぁぁぁっ!!」




助け…て、レイにぃ…。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


ーレイルー



今、誰かの叫び声が…

まだ誰か生き残っていたのか?




早く助けに行かないと。

そんな意志とは裏腹に、身体は動かない。

怖いんだ、きっと。

俺は、怖いんだを




…自分達がどれだけ平和に生きていたか、思い知らされた。

フローラ、俺は弱いんだ。

だから動けない。




"そうだ、お前は弱い。妹よりな"




…誰だ、俺に話しかける奴は。




"我は無き存在。そのお前の弱さもまた、罪"




うるさい。

黙れ、消えろよ。




"人が死ぬことに恐れ、動けずにいる。弱い兄だ"




お前に何が分かる




"分かりたくもない。罪深き化物の気持ちを"




化物…俺が?




"そうだ。その弱さでひとつの命をも守れない。今、苦しんでいる妹もな"




!?

フローラに何をした!!




"人々の痛み、苦しみを感じさせたまで。お前の妹は、精神を滅ぼし、全て無くなるだろう"




…ふざけるな




"弱き者の言葉など、聞こえ――――"




「ふざけるなーっ!!」




俺の周りから出される、見えない力。

一体、俺の身に何が起きているのか、分からない。

急に力がみなぎって…




この力は、カオスのものではない…

はたまた、フローラの思念、コスモスの光でもない。

恐ろしくて、なにも読めない。




"ほう。少しは見込みあるか。――生かしておこう"



ぷつっ!

無き存在がその言葉を残し、俺の中から消えていった。

それと同時に、俺の身体からでていた力が無くなり、元通りの俺に戻った。




さっきは一体…

いや、今はそんなことを考えている暇はない。

フローラを助けないといけない!




俺はすぐに家を出て、ひたすら走り出した。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「……フローラ……?」




俺がフローラを見つけた場所は、森の入り口だった。

頭を抱えて、ずっとやめて、やめてと叫んでいた。




全身、赤い姿となって。




「フローラ!俺だ、フローラ!!」




俺はそう声をかけて、フローラの肩を掴む。

すると、




「いやぁぁぁ!!」




物凄い力で突き飛ばされてしまった。

まるで俺の事を化物を見るような、怯えた目つきで。



俺は…なんということをしてしまった。

あの時、聞こえてきた叫び声は、フローラのものだったんだ。




気付いていれば、こうなる前に助けられたのかもしれない。

なのに俺は…




人の死を恐れ、怯えていた。




「フローラ…すまない、すまない」




涙が、止まらなかった。




俺のせいで、大切なたった1人の妹を、こんなひどい目に合わせてしまったから。




"レイル、聞こえるか?レイル"




「お前は…カオスか?」




"ああ。あいつに支配され、出ることが出来なかった"




あいつ…無き存在のことか?




"レイル、妹を救え"




「カオス…俺にフローラを救う権利があるのか?ここまで苦しませた妹を」




そうだ…俺には救う権利など、ない。




"救うことに、権利など必要ない!!あるとするならば、大切な妹を守ることだ!!"




…大切な妹を、守る?




―――そうだ、俺はフローラを、ずっとずっと、この命に代えても守ると決めたんだ。




『レイにぃ、ヘビさん怖いよぉ〜!』

『大丈夫だ。俺がお前を守るから』

『レイにぃ…!』




ふっ、少し昔の記憶を思い出してしまったな。

―――目が覚めたぞ、カオス。




"目覚めし、闇の騎士よ。俺の力を授けよう"




「フォームチェンジ・カオス」




俺の周りを包み込む闇の力が、全身に流れ込む。

姿は騎士へと変え、両手には愛用の双剣を持ち、背中には、今まで生えていなかった悪魔の羽が片方にひとつのみ、生えていた。




"この姿は、お前の魔力を高めた姿。魔物が造り出した幻にも打ち勝てるだろう。さあ、フローラに潜む魔物を祓え"




「ああ、まかせろ」




俺はフローラに近づき、抱き締めた。

フローラはまた突き飛ばそうとするが、今度は離さない。




絶対に、お前を救ってみせる。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


ーフローラー



ここは、どこ?

何もないただの空間?

いや、違う。

ここは、ユーク村?




パァッと景色が変わり、目の前にはユーク村が広がっていた。




「夢、だったのかな?」




平和な風景、人々が笑い合いながら過ごし、楽しそうに仕事をしている。




ああ、きっと夢だったんだね!

あんな血を流して倒れてなんかいなかったんだよ!




そうだ、レイにぃにも言わないと。

大丈夫だよって。

安心させてあげたいし!




「レイにぃ、レイにぃ!大丈夫だったんだよ!!」




目の前に現れたレイにぃに抱きつこうとした時、レイにぃはスッと消えてしまった。




え?どうして?




「俺はここだ、フローラ」




後ろから声がして振り返ってみると、そこには微笑んでいるレイにぃが両手を広げて、私を待っていた。




なんだ、そこにいたんだね!

私は走ってレイにぃに駆け寄った。




けれど、目の前まで来たのに、今度はレイにぃをすり抜けてしまった。

また振り返ると、もうそこにはレイにぃの姿はなかった。




「なんで…?どうして、レイにぃ?」




"それは、我が造り出した幻。これから味わう苦しみの前に与える一時の安らぎだ"




「その声は、無き存在!何故あなたが!それに、一時の安らぎって…」




"さあ、安らぎはここまでだ。お前には村人の苦しみを味わうがよい"




ザッ!!




無き存在が私の中から消えて、景色は一変。

村全体が血だらけの景色へと変わった。




私の周りには、バタバタと次々倒れてゆく村人の姿。

残っているのは私だけ…




「そんな…みんな、みんな!!」




呼んでも、誰も来ない。

みんな死んでいる。




「いや…―――!?え?」




『いや、いやぁ!!』

『助けて、、ぐはっ!!』

『痛いよぉ…お母さん』

『苦しい、苦しい…』




なに、この悲痛な声は…

私の中に流れ込んでくる、痛みと苦しみ。




苦しい、いや、助けて




「グガガガ…」




あれはなに?

人じゃない…まるで、化物。




こっちに近づいてくる…

怖い、いやだよ、来ないでよ…

やだ、やだ、




「いやぁぁぁ!!」




私は、勢いよく化物を突き飛ばした。

化物は遠くに飛ばされたが、また、立ち上がって私に向かってくる。




―――来ないで、お願いだから




「来ないで!!「フローラ」




…え?

今の優しい声は?




「!?レイ、にぃ?」




見上げると、そこには変わった姿をした、カッコいいレイにぃが、強く抱き締めてくれていた。




化物はいなくて、それで…

ああ、大好きなレイにぃが、目の前にいる。




今度は本物の。




「フローラ、すまない。早く助けに行けなくて」




「ううん。ありがと、レイにぃ。…来てくれてありがとう」




涙を拭き取り、私はレイにぃと共に立ち上がる。




レイにぃはそのあと、双剣を出して、おもいっきり走り出した。

その先には、プカプカ浮かぶ羽の生えた小さな生き物がいた。




「フローラを苦しめる奴は許さない!―――月夜月華!!」




まるで三日月のようなキレイに輝く刃が、クロスしてその生き物に向かって放たれた。




「ギシャァァァ!!」




生き物は苦しそうな鳴き声を発し、塵となり消えていった。




すごい…

レイにぃ、いつの間にこんな力を…




私は直ぐ様レイにぃに近付いてく。




「レイにぃ、すごい!強いね!」




「…いや、俺は弱い。―――人の死を目の当たりにして、怖じけずいてしまったから」




「レイにぃ…」




そんなことないよ。

レイにぃは、私をちゃんと助けに来てくれたよ?




「…この空間を出たら、皆をきちんと埋めて、墓を作るぞ。俺は二度と、こんな出来事を起こさないよう、強くなる」




レイにぃの瞳が真っ直ぐで、強かった。

私も…見習わないと。




「うん!私も、レイにぃと一緒に強くなって守れる力を手に入れる」




私の言葉に、レイにぃは微笑みながら頷き、そして私の手を握った。




「ここから出よう、フローラ。もうじきこの空間は崩れ去る」




「うん。レイにぃ!」




私達の身体がスッと消えて、空間は跡形もなく崩れ去った。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


ーレイルー



俺達は空間から脱出し、元のユーク村へと戻ってきた。

変わることのない光景に、悲しみを抱くが、落ち込んでいる暇はない。




フローラと一緒に村人全員の墓を作るからな。




「フローラ、皆を村の噴水前に運んでこれるか?俺は全員分の穴を掘る」




「うん、分かった」




フローラはそう言って、村の中へと入っていった。

皆を埋めるときは、ちゃんと2人でな…




"レイル。作業しながらでいい。聞いてくれ"




急にカオスが出てきて少し驚いたが、すぐにスコップを持って穴を掘り始める。



「なんだ、カオス」




"この村に災厄が降り注いだきっかけは…お前達双子だ"




!?

なにを言うかと思えば




「どういうことだ」




"お前達が生まれた事で、天界と魔界の保っていたエネルギー…境界線が崩れ、その余波で世界中で不可解な事ばかり起こっている"



俺達が生まれたから、世界が壊れ始めている。

…まるで、俺達が生まれてきていけないような言い草だな。




自然と、穴を掘るスピードが増していく。




"お前達は少し特殊でな。天使の母と悪魔の父から生まれたハーフだ。その両親が世界を操れるだけの力を持っていた。そこから生まれたお前達は世界から見れば、いわば異端児。だから2つの世界は境界線を無くし、混乱を起こしている"



「………」




世界から見れば異端児、か。

そうだろうな。




昔から天使と悪魔は仲が悪いと言われてきた。

そのハーフなんて、聞いたこともなかったしな。

そもそも、ここは天界。

悪魔なんか見当たらないのが当然だ。




…フォームチェンジした姿に悪魔の羽が生えていたのは、俺に悪魔の血も入っているからか。




"……この災厄のきっかけはお前達だが、起こした犯人は無き存在、だろう"




「そうだ、あいつは何者なんだ…?」




"あいつは…簡潔に言うと、世界の破壊を望む者だな。お前達に突っかかってきたのはよく分からないが"



…色々ありすぎて、さすがに混乱してきたな。




"――レイル、フローラ。2人に頼みたいことがある"




カオスの口調が一気に重みのあるものに変わった。




俺は人数分の穴を掘り、スコップを置いて、村の中にいるフローラの元へ歩いていく。




"世界を救ってくれ"




カオスが言い終わると、目の前には、今にも泣きそうなフローラが、俺の事をじっと見つめていた。




―――フローラ、俺は…



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


日も暮れて、キレイな夕焼けが俺達を優しく見守っているように感じる。




あの後、俺とフローラは、一人一人土に埋葬し、お祈りをした。




この頃になってから、遠くに逃げていた動物達が、墓の前に集まり、一斉に鳴き出した。

…こいつらも、村人の事を大切に思っていたんだな。



「レイにぃ」




突然、フローラが墓から俺に視線を変えた。




「私達のせいで、こうなったんだよね?世界だって今、大変なんだよね?」




…コスモスから聞いたみたいだな。

フローラの性格上、気にすると思い、秘密にしておこうとしていたが。




「ああ。俺もそう聞いた」




天界と魔界を救ってくれ…

その切なるカオスの言葉を聞いて、これから俺はどうしたいのか、どうするべきか、決めていた。




「俺はこの後、村を出て旅に出る」




フローラは驚いていたが、すぐに真剣な表情に戻り、少しだけ出ていた涙を拭っていた。




「私も行くよ。…行かないといけないって思ってた。私達の事だもん、私達で何とかしないといけない」




フローラはそう言って、墓に眠っている村の皆に別れの挨拶をしている。

俺も共に挨拶をし、村人の墓に背を向けた。




「行こう、フローラ。俺達の償いの旅へ」





キャラクター紹介

※①性別、②年、③身長体重、④髪、⑤顔、⑥性格、


1.レイル

①男

②16

③178㎝、69㎏

④銀色の長髪

⑤切れ長の二重

⑥フローラ以外、基本クールで無口



2.フローラ

①女

②16

③155㎝、42㎏

④金色のロング

⑤大きな二重、キレイ系

⑥前向き、明るい



3.コスモス

フローラの思念ということ以外、はっきりとわかっていない。



4.カオス

レイルの思念ということ以外、はっきりとわかっていない。



こんな調子でやっていきます。

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